猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。reverseから派生する続きのひとつ失くした君。の続きとなっております。
な、なんか……長くなってしまいましたのですよ。
_(:3」z)_


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それは、まるで真っ白なノートのページにぽたりと落ちた一滴のインクがじわじわと広がるみたいに浮かび上がる、自らの……言動。
そして、目の前に突き付けられた確実なる物証。
取り戻した…………取り戻してしまった





ゴチンッっておデコに走る鈍い痛み。
目を開けると目の前にあったのは美しいよく磨き込まれた木目のフローリングで……
どう考えても転んでおデコを打ったというマヌケなシチュエーションに、痛たっ!と痛むおデコをさすりさすり足ともを振り向くと、これに躓いたのが原因かって床に落ちていたのは……幸せの重みなんていわれている分厚い結婚情報誌だった。
なんでこんなものが???なんて考えてると
「キョーコちゃん、大丈夫?」
と、私をしゃがみこんで心配そうに覗き込む敦賀さん。
「私、石頭ですから大丈夫です、敦賀さん。」
なんか今敦賀さんが私をキョーコちゃんって呼んだような気がするけど……気のせいよね?
よくよく見てみるとここは何度かお邪魔した敦賀さんのお家で。
「もしかして…………思い出した?」
へ?なんですか敦賀さん、そんな私がまるで何かを忘れてたみたいに???
私の顔をまじまじと見て、こくりと息を飲む敦賀さん。
彼は言うのだ。私が……記憶喪失だったのだと。
「記憶がない間の事は、覚えてない?」
そう聞かれて、頷こうとしたの。だって、なんにもそんな記憶喪失だっただなんて心当たりなんてなかったんだから……
だけど、おデコを摩る私の手の上からふわりと髪をなでなでと撫でる大きな敦賀さんの手のひら。
ぽたんと……一滴の水が落ちるかのような感覚。
脳裏に浮かび上がるかのような。
じわり、じわりと……





「見て見て!コーン、でっかい黒いコーン!!」
ぺたりと、助手席の窓に張り付いて私はビルをラッピングするみたいな大きな壁面広告を指差していた。
運転席にいる、その専属ブランドの衣装を着こなし蠱惑的に微笑むその広告と同じ顔をした人をコーンと呼んで。
だって、綺麗だから妖精さんだって思ったんだもん。私をキョーコちゃんと呼んでくれるから優しい妖精だって。
「コーン、かっこいい。王子様みたい……」
ぽぅっとアルンディの広告を見上げてつぶやくと、敦賀さんが言ったの。
「俺が、王子様…………ショーちゃんじゃなくて?」
小さな声がして運転席へと振り向くと、縋るみたいな不安げな真っ黒の瞳。わんこみたいにかわいくってのにかっこいい大好きなコーン。
「うん!コーンはキョーコの王子様だよ!!」
こくんって力いっぱいに頷いて宣言すると……後ろの車から信号が青に変わったぞってクラクションが鳴らされるまで無表情で固まっていた敦賀さん。
…………
もぞりもぞりと、何度も何度も。枕を抱えて柔らかなシーツの上ふかふかのお布団に包まりながら寝返りをうつ。真っ暗で、ひとりっきりで……不安でじわじわと怖くなってしまって、ベッドを降りる。
フットライトの灯る廊下をぺたぺたと歩るいて辿り着いたドア。そぉっと開けるとそんな私に気付いて、私の名前を呼んでくれる優しい声。
「コーン……お願い、一緒に寝て。」
大きなベッドに潜り込んでいく私。……私?
…………
あったかくていい匂い。すりすりと擦り寄ってると、ぎゅうってだっこしてくれる。
レースのカーテンから射し込む明るい光に、朝なんだってわかる。
ちょっとだけ顔を上げると綺麗な寝顔。
「コーン、朝だよ?朝ごはん食べないと。」
囁くようにそう言うと、朝ごはんって言葉に反応するみたいにむにゃむにゃと動く唇がかわいくって胸がきゅうってなる。
キョロキョロと本当に寝てるんだよね?って確かめてから、伸び上がってコーンのほっぺたにチュッてキスしつみた。そしたら……コーンが呼んだの
「最上さん……」
って。切なくなるような低い声。私じゃない……って、そう思った。
コーンが一緒に居てくれるなら記憶なんて戻らなくてもいいって思ってたんだけど……
コーンは…………記憶がある最上さんな私の方が……いいのかな?そうなのかな?
…………
だから、今日はキョーコちゃんとずっと一緒にいるって言ってくれたコーンに頼んだの。
思い出したいって。絵本に出てくる王様みたいな派手なかっこのお髭のおじさんが言ってた、催眠療法?とか……何でも試してみたいって。
だけど……黒いコーン、辛そうな顔になっちゃって。そんな顔して欲しくなくて。
慌ててどうして?って聞くと、コーンは言ったの。
「キョーコちゃんは思い出したら………………俺のこと、嫌いになるかも……しれない。もう俺の顔なんて二度と見たくなくなるんじゃないかって…」
ならない!絶対にならない!!っていくら言っても、コーンは寂しそうに笑うだけで……。
どうしてもどうしても、それが嫌で。解ってくれないコーンに、だんだん腹が立って来て……
言った。
「コーン、結婚しちゃおう!そしたら、健やかなる時も病める時もずっとずーっと一緒!!」
くっきりはっきりと突きつけるようにそう宣言してみせていた。
………………
なんで?キョーコのこと、嫌い?結婚するの嫌?って、うにゅっと困ったように眉を落としてペンを握ったまま動いてくれないコーンに聞いた。
「そんなことない!キョーコちゃんのこと愛してるよ…………けど」
困った事があったら電話しなさいって言ってくれてたお髭の王様に、コーンと結婚するにはどうしたらいいって電話で聞くと、直ぐにセバスチャンって感じの男の人がお家にいろいろと持って来てくれた。この紙に必要事項を書けばコーンと結婚出来るって、そう教えてくれたからちゃんと書いたのにっ!!
絶対にコーンのこと嫌いにならないって、永遠の愛を誓うって結婚するって、そう言っても……コーンは名前を書いてくれなくて、だから
「コーンはキョーコの裸見たよね?だから、キョーコはもうコーンのとこにしかお嫁さんに行けないのに……ひどいっ!」
って、駄々をこねて泣き真似までして書いてもらったサイン。
これで大丈夫!コーンを安心させてあげられる!きっと笑ってくれる!記憶が戻ってもずっとコーンと一緒!!って、わーいわーいって踊るみたいにはしゃいでると
「……キョーコちゃん」
って、そう呼ばれる声に気を取られて振り返ろうとした時に、何かに躓いてしまって…………




頭の中にじわりじわりと浮かび上がる……これは、何なの?もし……もしもよ?これが私の記憶喪失の間のことなのだとしたら…………
ぴきりと肝が凍り付いたみいで、だらだらと嫌な汗を感じる。
私……私……何をしてしまった?
記憶喪失なんかになって敦賀さんにご迷惑をかけた挙げ句……夜這いに頬ちゅーに、プロポーズ!?泣き脅して婚姻届にサインなんて、まるで悪どい結婚詐欺みたいな事を!?!?
いくら一方的に地獄行きなくらい執念深く敦賀さんが好きだからってなんて事を……
「最上さんが俺を好きって……本当に?」
……へ?もんどりうちたくなるような脳内の記憶と感情の渦から低い声で現実に引き戻された。
いつの間にやら私の鼻先5センチなんて至近距離に、神の寵児か妖精かと見まごううかのような敦賀様の整ったご尊顔が……
「ねぇ、答えて。最上さんが俺を好きって本当?」
まっすぐに私を見る逃げる事を許さぬような、必死な迄に真剣な色をした黒の瞳。









私、もしかして…………今の全部全部
声に出してたの?





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恋愛拒絶回路の搭載前のキョコちゃんと王子様なコーン……なら、結構上手く転がるんじゃないかな?と。
んで、なーんの記憶もないまま、心配するローリィやヤッシーに頭打った他は大丈夫?とか聞かれて、身体中、特にお腹のら辺が重だるいし、ひょこひょこしちゃって上手く歩けない……とかわかんないまんまで素直に答えちゃって蓮くんの犯行がバレバレに……なーんてね。
(*ΦωΦ)



そんなこちら。拍手コメントにてkomugiさまからいただきさたネタ↓

「このシリーズ、はっきりと記憶喪失ものってないので、キョーコさんがベッドから落ちて頭を打って記憶喪失とかはいかがでしょう?」

なものをねりねりとしてみたつもりだったりでございます。
このシリーズな敦賀さんなら記憶操作とか普通にやらかしそう、との事でしたので……
捻くれ者な猫木、裏切ってみせましょう!っと、記憶なしキョコちゃんにグイグイ押されてちゃって振り回される蓮くんにしてみやした。←せっかくいただいたネタなんだから素直に期待に添えば良いのに。
_(:3」z)_
komugiさま、素敵なネタをありがとうございましたー!!



きっと、この後キョコちゃんを追い詰め脅して吐かせた蓮さんは転がり込んで来た切り札の使用を戸惑ってたのが嘘のように嬉々として厳重に確保保存するかと思われます。
( ´艸`)



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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