猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつ呪いをかけた私。の続きとなっております。
呪い→まじないではなく、のろいとお読みくださいませ。



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「……だからっ!さっきから言ってるだろ!間違いじゃないって!!」
何度、何度だって君に否定されようとも違えようもない揺るがぬ想いを込めて君へと手を伸ばす。
涙に潤んだ紅茶色の瞳。毛並みを逆立てて爪を立て威嚇するように俺の腕から身をよじる君。
それでも、愛しい君へを捕らえる為に腕を伸ばす。





人間、窮地に追い込まれた時にこそ……その本心が覗くってものだろう?
いくら誤魔化そうとしてもだ。
目覚めた瞬間に目に映ったのは、愛しいひとの何処か思い詰めた硬い表情で。
テンパった俺の頭に浮かんだのは…………どうやったら最上さんを逃さずに済むか、ただそれだけだったんだ。
想いも告げないままに、甘い肌に狂わされたみたいにひたすらに夢中で貪った夜。俺という存在を最上さんの中から抹消されない為に……そして、如何にこの既成事実を利用してやれば彼女を俺のそばに絡め取れるか。
覚悟を決めた俺が言葉を声にするその前に、素早い動きで俺の目の前に突き付けられたものがあった。
俺が最上さんの誕生日に贈ったクィーンローザ、そのネックレスだった。
「コレをよく見てくださいっ!貴方はだんだん……」
彼女の言葉とゆらゆらと揺らされるネックレス。
しめたものだ。
だって、彼女の心からの望みが知れるのだから。
最上さんとの共演だったドラマ。彼女の役どころは、事件の鍵を握る幻妖な雰囲気を纏う催眠術師。
演るからには徹底的に!そう意気込んだ彼女は、本職の催眠術師のもとへ詰まった仕事の合間を縫うように通い詰めていた。
催眠術、その話題性から現場の休憩時間なんかにちょくちょくと実演を求められていた最上さん。
俺は彼女の催眠術。それに……100%でかかった演技をするって決めたんだ。
好都合だったから。
だってだよ?催眠にかかったフリをしてる間は最上さんを独占していられる。
敦賀さんの指は私の手を握ったまま開けなくてなります!なんてかわいい事言われたらね?それに、催眠術が成功したって嬉しそうな笑顔までオマケに付いてくるんだから、で全力でかかったフリをしてあげるよ?
犬にだってなんだって喜んでなってみせようとも。現場でわいた馬の骨を威嚇するには丁度いいってもんだ。
だから、いつものようにゆらゆらと左右に揺らされるピンク色の石を目で追った。
最上さんの本心を知る為に。
予想外な思考回路を搭載する彼女のこと。昨日の記憶をなくしてください!なんて言い出されたら、どう説得して脅して言いくるめてやろうか……なんて考えてると、最上さんが言ったんだ。



「……えと……敦賀さんは……敦賀さんは、だんだん私が好きになりますっ!」



胸を貫く雷のような衝撃。
学習能力なんて脳内の名医もろとも遥か彼方まで吹っ飛ぶようなその凄まじいまでの威力。
一夜を共にした男に……それもずっと君を想い焦がれていた男に、だ。
そんな迂闊なことを言うだなんて。



「……愛してる、キョーコちゃん」



ゆるっゆるに緩んだ顔をしてる自覚があった。好きなんて言葉では足りないと、告げた俺の想い。
なのに……くしゃりと顔を歪めてずべしゃっ!とシーツの上に土下座するキョーコちゃん。
涙声で彼女は言うのだ。
俺の想いは、彼女の呪いの所為なのだと。
……酷く、頑なに。
そもそもの彼女の催眠術になんて一度たりともかかってないって俺の言葉なんて聞きもしないで
「そんな筈ありませんっ!敦賀さんはちゃんと催眠にかかってました!だって、そうじゃなかったら敦賀さんが!あの敦賀蓮がですよっ!?敦賀さんが、大型犬みたいに村雨さんを威嚇しながら追いかけ回したり、猫になってすりすりと纏わり付いたあげく私のお膝で寝ようとするなんておかしいんですもんっ!!」
だから、それもこれも全部!馬の骨を追い払いたいだとか、キョーコちゃんに触れたいって願望の為に利用しただけだって……そう懇々と言い聞かせるけど……キョーコちゃんは呪いだって譲ろうともしない。
だから……
「そこまで言うなら、催眠を解いてみればいい!」
そう提案してみせた。売り言葉に買い言葉な勢いで、呪いを解いてさしあげますっ!って真剣な顔で俺の前に手をかざしパチンッと指を鳴らすキョーコちゃん。
彼女のいつもの催眠解除の動作。
「キョーコちゃんを愛してる。俺と結婚を前提に付き合って欲しい。」
腕にそんなキョーコちゃんを抱き寄せて栗色の髪に顔を埋めて囁いてやった。
なのにっ!ピチピチと生きのいい魚みたいにもがいて腕から逃げ出そうとする彼女。
どうしてっ!?なんで?いつもならこれで解けるのに……って、まだ俺が呪われてるって俺の目の前で器用にもシーツにくるまったまま両手の指をパチンパチンパチンパチンと連続リズミカルに鳴らし続けていた。
だから、そんなキョーコちゃんの両手を捕まえてシーツに縫い付けてそのやわらかな甘い唇を塞いでやった。
だって、呪いを解くなら指を鳴らすなんかよりもお姫さまのくちづけだろう?
さぁ、どうやってこのかわいいキョーコちゃんに俺の胸に巣食った病の深さを思い知らせてやろうか?





君がかけたのは呪いなんかじゃなく、恋い焦がれる男に発破をかけてしまっただけなんだって解らせてやろうじゃないか!!






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そもそも蓮くんは催眠術にかかってなかったんじゃない?って疑われ率が高くて高くて……
(σ・∀・)σですよね〜


そんなこちら、拍手コメントにて、ここあさまよりいただきましたネタ↓

「キョコさんによる睡眠学習?催眠術!?あなたはどんどん私が好きになーる☆」

から、ねりねりぽちぽちと作ってみた成れの果てにてございまする。
ここあ様、楽しいネタありがとうございました!
_(:3 」∠)_





だんだん私が好きにな〜るなんてかわいいこと言われたら、そりゃまぁ、学習能力もどっかいって暴走しちゃうんだろうな……と。
この後、デロデロに甘く口説く蓮さんと絡み付かれながら指パッチンパッチンするキョコちゃんを眺めて首を傾げるヤッシーとかが目撃されるようになるとか考えるとちと楽しかったり。
(*ΦωΦ)



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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