蓮誕とバレンタインな話……の、つもりだったのがどうしてこうなった???
_:(´ཀ`」 ∠):


去年のキョコ誕の偏執粘着質ラバー。の続きな
変な詐欺わんこ話。
押し掛け強制的ペット。前編中編の次なものだったりします。



バレンタインデーなのに、ラブいちゃ甘さどころかチョコレートもナッシングな勢いのみでの変てこなものと成り果てておりますが……
よろしくて?
_(:3」z)_




*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*





これでも、随分と妥協した結果だよ?
従順なまでの思慕を捧げ体現するようにこれでもかとキョーコへと懐いてみせている、彼女のペットは腹の底でそう笑う。
甘ったるくも香ばしい匂いが漂う蓮のマンションのシステムキッチン。
普段ならば珈琲を淹れるか、冷えたアルコールかサプリメントかなんちゃらチャージなお手軽栄養補給食品を取りにくるかしかで立ち入らぬ主人である筈が……
蓮の隣にちょこんと並び立ってあれこれと教唆してくれているのは、彼の想い人にして飼い主となった最上キョーコである。
蓮の目の前には見事なココア色に焼き上げられた大量のクッキー。
そう。2月14日のイベントから微妙に逸れたかのように、チョコレートではなく、だ。



「ごめんね?俺、嫉妬深い犬だから。」
可愛らしくもこてんと首を傾げ、だけど、決して有無を言わせずに蓮は禁止したのだった。
キョーコが例年通りにお世話になった方々へと配ろうと考えていた、VDのいつもありがとうチョコレートトリュフ作りを。



***   押し掛け強制的ペット。後編  ***




きゅきゅきゅーっと、最初こそ覚束ぬ手付きだった筈が……ほんの片手ほどの数をこなす内にコツを掴んだか、お手本たるキョーコの手付きを完璧にコピーしたか、綺麗にアイシングで花や蝶や星をクッキー生地の上にアイシングで描き上げる蓮は最早熟練のパティシエじみた風格さえ漂わせていた。
「うん、綺麗に描けた。」
仕上がりに満足そうに、キョーコを密かにかわいいなちくしょー!とキュンとさせるようなはにかんだ笑顔など見せているこの男。
実に……わがままな犬であったのだ。
キョーコのペット、その座を強引に絡め取った後の蓮の言動はキョーコの予想の範囲などかるーく超越した理解の及ばぬようなものだった。
まず、所属する事務所の社長へと報告。しかも、妙に嬉しげにウキウキと。
それに、飼い主たるキョーコと離れたくないと、熱心な京子ファンがやって来るなどの迷惑が掛かるようになったからと最近になってついに下宿先を出て一人暮らしを始めたキョーコの家に上がり込もうとする。または、キョーコを自宅から帰そうとしない。なんなら同じベッドへと引きずり込んでキョーコを抱き枕にして寝ようとまでしやがる。これを、あの捨て犬カイン丸を5匹も6匹も増員して強請るのだ。
ご主人様の足元でじゃれつく元気印なわんこの如く、すきあらばキョーコのもとへとやって来るようになってしまった蓮。
そして、振り回されてふらっふらのまま訳がわからないといった表情でぐでっとしたキョーコをぎゅうぎゅうに抱きしめている自称彼女のペット。
はぁ?と心配そうに顎を落としたふたりのマネージャーや、このまま流されてると完璧に逃げ道塞がれるわよ?と呆れをふんだんに含んだ様子を見せた親友たちへと語ってみせたのだ。
「大丈夫ですよ?キョーコも俺を飼ってくれるくらいには俺を想ってくれてますし…………彼女の傷が癒えて俺を選んでくれるまで、いい子でSTAYしてますよ。」
と、そう妙に誇らしげに。




そして、昨夜もそんな蓮にキョーコは捕まったのだ。
みっしりと埋まるようになっていたキョーコのスケジュール、その隙間を縫って材料の買い出しへ行こうとしていたキョーコ。
明日はVDだからと……そう言ってそそくさと蓮の視界から逃げようとするキョーコを捕まえて
「チョコ作るの?俺には?」
はぇ?と、久方ぶりの魔王様降臨一歩前のような蓮にキョーコはビクビクと怯えつつも……
「敦賀様には……チョコは……」
例年通りに蓮へだけはチョコ以外の品を用意するつもりだったキョーコ。その表情を読んだ俳優はグサグサキュラキュラと痛い笑顔を浮かべて宣告したのだ。
「うん。犬のはチョコレートは厳禁だもんね?だから……今年はチョコはなしね。」
バレンタインの感謝チョコ禁止を。
キョーコのペットの俺が貰えないのに他の男にチョコを配るだなんて許せないと、大人気なくも言い張った蓮。
けれども、右に習えとイベント大好きな国民性。人付き合いの円滑化にも役に立つのだと、理解はしているらしく折り合いを付けた結果が……




「その型使うの駄目。」「それ、全部に描くつもり……?」
チョコがダメならクッキーにしよう。簡単にたくさん作れるし、アイシングで模様を描けばそこそこ見目も良くなるし……なんていつもの如くに粘着質な俳優に絡みつかれたまま蓮の自宅のキッチンで作業していたキョーコ。
そこへ、蓮が不満気に零したのだ。
クッキー生地がハートの形に型抜かれたのが気に入らない。(モー子さんたちに贈るんですぅと上目遣いで訴えて、やっとラブミー部仲間への数個のみやっとお許しが出た。)
アイシングでキュッと綺麗に描き上げられた模様、そこに小さく描かれたハートも許せないらしく…………
「俺もやる。」
と、そう言い出したのだ。
過去のファンタジックな味のマウイオムライスクッキングが甦り止めようとしたキョーコと、アイシングだけだからと譲らない蓮。
まぁ、クッキーとアイシングクリームはもう用意したからこれからカオスな味付けにはされないだろうかと、キョーコが折れたらしく……
キョーコが男へ配る分は俺が仕上げるとそう言い張る男はその大きな背中をまるめるように妙に可愛らしくちまちまと作業を続けている。
そして、そんなどこかほんわかしたような空気の中、男はさらっと言い出したのだ。
「今度のオフに俺の首輪、買いに行こう?」
敦賀蓮の首に首輪……?あり得ないとかたまるキョーコを置き去りに、彼女の犬は続ける。
「あぁ、もちろん代金は俺が払うよ。首輪じゃなくてもいいけど、俺がキョーコのものって印になるやつ……キョーコとお揃いがとかもいいよね。」
怨キョたちが悲鳴をあげて逃げ惑う程の神々スマイルを浮かべ、うっとりと
何故かキョーコの左手を捕まえながら…………




キョーコの脳裏には
「最上くん、ペットを飼うという事はね?命を預かるということで、最期まで責任を持たないといけないんだ。それって、ある意味恋人関係よりずっと重いと……俺は思うぞ。」
と、ラブに関してはモンスターだとそう呼ばれる伝道師たる事務所の社長が、幼子に言い聞かせる父親のような顔で言った言葉がぐるぐると回る。
恋する乙女としてはキュン殺ものな、全力でキョーコが大好きだとじゃれついてくるキョーコの自称犬を名乗る男。
だが時折、それだけではないよくな……ふと絡む恐いような熱い視線やぞわぞわとするような感覚を伴ってキョーコへと触れる大きな手。
その意味を知ることを本能的に回避しようと眼を背けていたキョーコだけれど……
このままで……いいの?と、今更にやっとそんな疑問がよぎる。




そんなキョーコの頬にチュッと音だけはかわいらしくもくちづけなんぞしながら、彼女のペットになかば強制的になった男はご機嫌に歌うように告げるのだ。






「いつかキョーコからチョコレート貰えるようにがんばるから。それまでは……末永く俺のこと可愛がってね?ご主人様」





*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*



犬のつもりで可愛がってもらいながら虎視眈々と待つ狼……みたいな?



ほんと、なんだこれ。
。(´д`lll) 



やっしーとわんこ蓮くんの腹黒い会話とか入れたかったけど長くなり過ぎるから、オクラいりー!!



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


web拍手 by FC2