チェ・イェヨン、ありがとう(최예영、감사합니다) その5 ガルプラからの飛翔

オーディション番組「Girls Planet 999(ガールズ・プラネット999)」(通称ガルプラ)で、POP/STARS、FIESTA、All About Youと、3度のパフォーマンスをすべて成功させ、歌もダンスもハイレベルで、ヴィジュアルもきれいで、仲間思いで人柄もいいイェヨンが第二次生存者発表式で脱落したのはなぜだったのか。過ぎたことにこだわってもしかたがないのですが、一度ガルプラを冷静に分析して、そしてイェヨンの未来に希望が持てたらいいなあと思い、ガルプラでのイェヨンを一から振り返ってみることにしたいと思います。

1 POP/STARSでマスターに評価されなかった ⇒イェヨンはそれを成長の糧にした

(その2)で書きましたが、POP/STARSでのイェヨンは歌もダンスもハイレベルでした。でもキムダヨンと共にマスターのソンミから「オーラがなかった」と言われてしまい、TOP9候補の評価は得られませんでした。

 

POP/STARSでのキム・ダヨン、チェ・イェヨン、キム・スヨン

⇒指摘されたことは決して致命的な欠陥ではありません。ソンミはこの二人のレベルの高さを理解していたからこそ、アーティストとしてより高い表現力を身につけてほしいとの期待を込めて敢えて辛い評価をしたのだと思います。FIESTAのイェヨンはそれに応えて十分にオーラを発散していたのだから、イェヨンはガルプラに来て成長できたのです。

2 キム・ダヨンのストーリーの陰に隠れて分量がなかった ⇒必ず幸運がめぐってくるときがある

事前のシグナルソング評価でK1位だったキム・ダヨンとK2位だったイェヨンが探索戦でともに厳しい評価を受けました。当初ダヨンはJ1位のヒカルとC1位のシャオティンと、各国1位どうしのセルを組んでいましたが、探索戦の評価でもTOP9の1位となったヒカルからセル替えをされてしまうという悲哀を味わいます。放送ではK1位が直面した試練としてフォーカスされ、良くも悪くもダヨンに光が当たります。

コネクトミッションの"How You Like That"2班でのトレーナーによる中間評価の際、ヴォーカルマスターのイム・ハンビョルはキムダヨンにこう言います。「あなたをわざとTOP9に入れなかった」「最後は必ずTOP9になる人だと思っていたから」と。

その後、ダヨンはコンビネーションミッション第6話の"ICE CREAM"チームでリーダーとして高い評価を得て、人気も高まり、再びTOP9に返り咲いていきます。実力のあった子が試練を乗り越えるというドラマの主人公として放送の「分量」が与えられ続けます。

その一方でK2位のイェヨンには全くフォーカスが当たらず、「分量」が与えられませんでした。同じストーリーを二つ作る必要はなかったからです。イム・ハンビョルがイェヨンにも同じように「わざと入れなかった」「最後は必ずTOP9」と思っていたのかどうかもわからずじまいでした。もしソンミがFIESTAでのイェヨンに「オーラ」があったと認めて回収していたとしたら、そしてそのストーリーに放送の分量が与えられていたら、イェヨンの人気はその時点でぐんと上がっていたのかもしれません。

 

⇒せっかくマスターの評価を糧にして成長したのにそのことを認めてもらえなかったイェヨンは不運でしたが、厳しい評価も謙虚に受け止めて成長していけるイェヨンには必ず幸運がめぐってくるときがあると信じます。

3 イェソとシンチャオのエピソードの陰に隠れて分量がなかった  ⇒必ず幸運がめぐってくるときがある

 

コネクトミッションFIESTA1班の放送では、イェソ・マシロ・シンチャオのセルにフォーカスが当たりました。その内容はこちらです。

 

Girls Planet 999 Ep.4 FIESTA1班イェソのセルのエピソード

 

カン・イェソは探索戦のマスター評価でTOP9の2位に選ばれ、キュートなヴィジュアルと魅力的なパフォーマンスで人気が急上昇しているメンバーです。そのイェソがTOP2の権限で新しいセルにマシロ(J)とシンチャオ(C)を指名します。ファン・シンチャオは中国で歌手デビューしているもののダンスが未経験でした。イェソはシンチャオのヴォーカル力と成長可能性を信じて指名したのです。

 

しかし、FIESTAのダンスは難易度が高くフォーメーションチェンジも激しいため、他のメンバーがダンスを覚える速度についていけず、マスターによる中間評価の際も失敗してしまいます。中間評価のあと、FIESTA1班と2班の6つのセルから最上位セルと最下位セルが発表されます。そのときイェソたちのセルが最下位だったことでイェソは涙を見せ、その涙を見たシンチャオが奮起して猛練習。イェソとマシロも一生懸命にシンチャオに教えます。そして本番ではパフォーマンスを見事に成功させるという感動のエピソードとなりました。
 

イェヨンはこのときレイナ(J)・シンウェイ(C)とセルを組んでいましたが、このエピソードの陰に隠れてしまいます。実はよく見るとマスターによる中間評価で最上位だったのはイェヨンのセルでした。練習でも本番でも常にベストパフォーマンスをするのがイェヨンです。レイナもパワフルなヴォーカルで頑張ったでしょう。でも普通にできてしまうのは放送としては面白みがなく分量が与えられないのです。そして、放送をよく見ると、イェヨンがシンチャオにダンスを教えている場面も映っていましたが、そこには全くフォーカスが当たりませんでした。同じセルのシンウェイもリズム感に課題を抱えていましたが、イェヨンが一生懸命教えたであろうことは容易に想像できます。

 

[ガルプラ] 韓国の反応 チェイェヨン編(0:32 でイェヨンのセルが中間評価最上位だったことを指摘しています)
 

⇒いつでも着実にいいパフォーマンスをすることが放送としては面白みに欠けて分量が与えられないのは不運ではあるけれども、僕らのイェヨンはそれでよいと思います。人が見ていても見ていなくても仲間のために貢献できるのは人として素晴らしいことです。そんなイェヨンには必ず幸運がめぐってくるときがあると信じます。

4 コンビネーションミッションの放送も後半組だった  ⇒必ず幸運がめぐってくるときがある

ダヨンがコンビネーションミッション"ICE CREAM"で評価と人気を取り戻したのと同じように、イェヨンもコンビネーションミッション"All About You"でヴォーカルの実力とグループリーダーとしての献身的な姿で、それまでイェヨンを見逃していた人たちに大きなインパクトを与えました。しかし、"ICE CREAM"は第6話の放送だったのに対し、"All About You"は第7話の放送でした。第6話の放送から第2次投票の締切まで1週間ありました。この間にダヨンの票数はどんどん上がっていきました。一方、第7話でイェヨンが強烈なインパクトを残してから第2次投票の締切まではわずか12時間しかありませんでした。

第7話の放送後、ガルプラの動画でもイェヨンに対するコメントが急に増えました。やっと今日「推し」を見つけた、今までイェヨンに投票してこなかったことを後悔している、どうにか生存して残ってほしい。そんな趣旨のコメントを、英語でも日本語でもたくさん見ました。この放送がもし第6話だったら果たしてどうなっていたか。もっと違った結果になっていたはずです。

第二次生存者発表式の際に発表された個人順位はイェヨンにふさわしくない極めて低いもの(K17位)でした。イェヨンが参加したグループはコネクトミッションのFIESTAもコンビネーションミッションのAll About Youも後半組でした。早い段階で分量が与えられて注目されているメンバーなら前半でも後半でもそう大きく変わらないのですが、分量がないためになかなか「見つけ」られていなかったイェヨンにとっては、2回続けて後半組だったこと、特に注目されたAll About Youが後半組だったことが不運でした。

⇒2回続けて放送が後半組だった不運なイェヨンですが、第二次生存者発表式のとき、自分が呼ばれないなか、TOP3が発表されるとき、「お願い、キムダヨン呼ばれて」とつぶやいていました。自分の不運を忘れてダヨンの幸運を祈る姿にイェヨンの優しさを感じました。こんな子に幸運がめぐってこないわけがないと信じたいです。

 

「お願い、キム・ダヨン呼ばれて」と祈るイェヨン

5 FIESTAでヴォーカルの高音パートを譲ってしまった ⇒イェヨンの思いやりやアーティストとしての誠実さを称えたい

イェヨンがコネクトミッションで組んだグループのなかにマシロがいました。マシロも探索戦で実力を発揮していい演技をしたのですが、イェヨン、ダヨンと同じくマスターからTOP9候補の評価を得られませんでした。全体的にKグループで実績のある人、前評判の高い人には、プラスアルファを求めて評価基準が高く設定されていたように思えます。マシロはKグループではなくJグループですが、JYPの練習生だったことでも知られており、Kグループ並のハードル設定がされていたように感じます。

 

FIESTAでのマシロのパフォーマンスは歌にもダンスにも力がみなぎっていて、ある種の迫力がありました。探索戦の評価を挽回しようとする気迫の演技だったと思います。ああ、マシロは本気なんだなと思いました。そんなマシロを勝たせてあげたいというファンも増えたのではないかと思います。

ではイェヨンはどうだったか。FIESTA1班のリーダー決めの際もイェヨンはマシロ、レイナと共にメンバーからリーダーに推薦されますが、自ら下りてしまいます。日韓両言語ができてやる気満々だったマシロに譲ったという面もあったのではないかと思います。

 

パート決めでは、メインボーカルはソヌとレイナが立候補してソヌに決定。イェヨンは敢えて立候補しませんでした。そのほかのメンバーもレイナ、マシロ、イェソ、ナゴミのパートには高音やテンションが上昇する部分がありました。イェヨンのパートには後サビを締めくくる"It's my FIESTA"のフレーズがあり、テンションを鎮めて曲をまとめていく大事な部分でしたが、音域は低音でした。次のコンビネーションミッションで"All About You"を選んだとき、イェヨンは「FIESTAではヴォーカルを譲ったから、今回はヴォーカルの曲をやりたかった」と発言しています。サバイバルオーディションなのに仲間と争うことを避けて譲ってしまってたんですね。

FIESTAでのイェヨンは歌もダンスも適度に力の抜けたしなやかさ、女性らしい柔らかさがあり、歌の世界観に身を任せて表現しているような印象がありました。イェヨンにとって大事だったのは歌の心をいかに表現するか、まさにPOP/STARSで直面した課題からの成長でした。イェヨンは仲間を尊重しながらグループ全体のパフォーマンスを一つのアートとして表現することに集中していたように思えます。投票制のオーディション番組では分量をもらえない限り、「見つけて」もらうのには時間がかかるタイプだったのかもしれません。


FIESTAのエンディング妖精のイェヨン(地はタレ目なのに目尻を上げるメイクと表情管理から美のオーラが出ています)

⇒自分のヴォーカルの見せ場を作ろうともしない、特別目立つようなことはしないイェヨンは、この種のサバイバルオーディションに向いていなかったのかもしれません。ステージに上がれば歌とダンスの理想のパフォーマーであろうとするアーティスト気質なのだと思います。でも、これをやり続けているうちに必ず多くの人に「見つけ」られ、一時的ではない根強いファンがだんだんとついていくに違いないと信じます。

 

6 All About You のアレンジをトレーナーに止められた ⇒アーティストとして、表現者として成長できた

 

コンビネーションミッションではヴォーカルの曲"All About You"を選んだイェヨン。もともと、ガルプラの司会を務めるイケメン俳優ヨ・ジングのファンなのだそうです。最初のウェン・ジャ(C)とミユ(J)と組んだセルはヨ・ジングペンの共通項で組まれたのです。そのヨ・ジングが主演した大ヒットドラマ「ホテルデルーナ」のOST(オリジナル・サウンドトラック)として歌われたのが、この歌"All About You"(그대라는시)でした。だからイェヨンはこの歌が大好きだったはずです。放送された練習風景でもイェヨンがシンチャオ(C)とミウ(J)に一生懸命歌を教える姿が印象的でした。

 

Girls Planet 999 Ep.6より "All About You"の準備風景

 

イェヨンは歌に変化をつけるため、2番をシャッフルビートで歌うことを二人に提案します。シャッフルビートとは、簡単に言えば本来の「ツタツタ・・・」というリズムを「ツッタツッタ」とはねるようなリズムにして歌うことです。
2:07 イェヨンはトレーナーの前でシャッフルビートで歌いたいと申し出ます。しかし、トレーナーは「そんな歌い方は合わない。歌詞の意味を考えて」と制止します。練習室に戻ったイェヨンは「自分の考えが浅はかだった」と認めて提案を取り消します。

 

良くも悪くもイェヨンは何でもできる「器用貧乏」(器用にいろいろの事がこなせるためにかえって大成しないこと)なところがありました。歌もダンスも何でもできるオールラウンダーです。そして、ヴォーカルはアップテンポの歌もスローバラードも歌える。張りのある声もささやき声も出せる。声域は低音から超高音までどの声域でも歌える。そして、いろんな技術の引き出しを持っている。POP/STARSでは超高音の技術を見せ、FIESTAでは低音域の魅力を見せました。そして、歌のリズムを変えて見せるぐらいの技術は持っているわけです。何でもできていろんなことをやってしまうことが却って彼女の本当の魅力を見えづらくしている面もあったのかもしれません。しかし、そうした技術に溺れるのではなく、歌の心を大事にして表現することをトレーナーは教えてくれたのです。そして、本番の"All About You"では一途に恋する乙女心を情感たっぷりに表現して聴く人を魅了します。

 

Girls Planet Ep.07 "All About You" 日本語歌詞つき
 

KオタさんというYouTuberの方が公開されている日本語歌詞つき動画です。これを見ながら聴くとこのイェヨンたちが歌の心をそのまま表現しようとしていることがよくわかります。イェヨンという一人の女性の心の美しさがあふれ出て聴く人の心を魅了したのです。
 

⇒イェヨンはガルプラの出演をきっかけに「器用貧乏」を卒業して、表現者として大きく成長できたのではないかと思います。イェヨンはガルプラ参加者のなかでは歌もダンスもトップクラスの実力があったけれども、最初のPOP/STARSで表現者として足りないものを見つけた。次のFIESTAではオーディションでの勝負としては物足りなかったけれども表現者としては満点だった。そして、3つ目のAll About Youではインパクトもあり表現者としても満点だった。ようやくこの域のイェヨンを多くの人が目にして「見つけた」ときには第二次投票締め切りの12時間前だった。だからイェヨンの長いアーティスト人生から見れば、ガルプラという一つのオーディションの合否よりももっと大事なものを見つけられたんじゃないかなと思います。

 

7 イェヨンはガルプラには合わなかった ⇒NiziUみたいなグループでリーダー兼メインボーカルとしてデビューしてほしい

 

K-POPのファンたちは目が肥えているので、単にヴィジュアルが可愛い、美人だというだけではアイドルになれません。それどころか、歌も歌えてダンスも踊れて、ヴィジュアルもいい少女たちのアイドル予備軍はいくらでもいるわけです。そのなかで何かインパクトを残す、あるいは何かストーリーを作る、ということをしないとこの種の人気投票制のサバイバル・オーディション番組では生き残っていけないでしょう。

 

だから、このガルプラで最後に残るTOP9のメンバーは良くも悪くもインパクトの強い個性派集団になるような気がします。そして、そのグループはIZ*ONEと同じように2年半という限られた期間で活動します。人気投票制を用いたことでファンもどんどん加熱していきます。大勢のファンを引き連れた9人の人気アイドルが2年半、全速力で駆け抜けていくわけです。

 

そのグループが一つのグループとして融合していけるのか、今の僕には正直なところイメージが湧かないでいます。というのも、ガルプラを見れば見るほど、NiziUの一体感がとてつもなくすごいことのように思えてきたのです。NiziUのなかでは誰が推しかと聞かれたらいちおう「マコ推し」と答えますが、正直なところ「箱推し」です。9人全員が好きなのです。本ものの信頼と友情の絆で強く強く結ばれたかけがえのない9人です。誰一人欠けることもできません。マコはリーダーとして、このグループの絆の核となりました。歌もダンスもいちばん上手なマコが誰よりも他のメンバーに敬意をもって接し、信じ抜いて一緒に成長していこうとしました。だからマコという中心軸があるNiziUは9人で一体です。

 

                              NiziU

 

僕はイェヨンにマコと共通した何かがあると感じています。歌もダンスもきっと誰よりも練習しているにちがいないのですが、その姿を人に見せず、グループの仲間に貢献することばかりを考えている。だからイェヨンと一緒に歌った人達はみんなイェヨンのことが大好きになるのです。ダヨンもスヨンも。マシロやイェソたちも。ミウもシンチャオも。でもガルプラはイェヨンという核を失ってしまいました。

 

そう言えば、All About Youを歌ったあと、ソンミが彼女たちに「一つのチームに見えた」という言葉を贈りましたね。イェヨンがシンチャオとミウに献身的に関わって、発声もハーモニーも見事に一つに融合したグループとなりました。J.Y.Park氏は虹プロジェクトのときに「人柄」を重視しました。それはグループの調和を大切にして一つのグループを作るためです。かつてJYPに所属してJ.Y.Park氏とも何度も共演しているソンミだからきっとこのチームの融合を高く評価してくれたと信じたいです。

 

⇒イェヨンの所属事務所(BlockBerryCreative)のこと、イェヨンの今後のこと、何もわかりませんが、そんなに個性派集団でなくていいからNiziUのように一つに融合したグループのリーダー兼メインボーカルとしてデビューし、2年半と言わず、長く活躍してくれたらと思います。座って歌うバラードも素敵だったけど、やはりFIESTAのように激しく踊りながら、人々の心を揺さぶる高音の歌を朗々と聞かせてほしいと思います。長くやればやるほど、何でもできる能力の高さ、引き出しの多さが生きてきて、揺るぎない人気を確立すると思います。このブログがその予言となって的中したらいいなあと願いを込めて、5回シリーズを終えたいと思います。(おわり)

 

  チェ・イェヨン、ありがとう。최예영、감사합니다

 

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