漫喫でハマったこの作品。最終話ときき、連載雑誌「ベツコミ」を買って読んでみた記念日記です。
主人公はクールな女子大生、水帆。
高校時代、目立たない存在だった同級生の折口はるかの葬儀に参列したことをきっかけに、過去の複雑な人間関係が暴いていくことに・・。
2013年に『第58回小学館漫画賞』の少女向け部門受賞を受賞しています。
絵柄は少女漫画然とし、ストーリーはすばらしいサスペンスミステリーものとなっているギャップ。
作者の芦原さんは砂時計の作者でもありすでに映像化されていますが、ここまでミステリーに特化したのは今作が初でしょうか。
松尾しよりさんがラブコメから時代感動ものに作風が変わったときを思い出しました。
非常に練られた構成と人物描写に舌を巻きます。
下のネタバレ注意に書きますが、設定に無理がなく、本当に現実に起きていてもおかしくない、すぐにでも実写化できる作品です。
と、思ったらとっくに本田翼さんでドラマ化してたんですね・・。
!ここよりネタバレ注意!
いきなり最終話をかくのもなんなので、「Piece」の素晴らしさ語り。
・成海が双子ではなく、兄弟。
母の研究のために特異な環境で育てられた、という設定はドラマティックではありますが、安易に「一卵性の双子」などの安易なご都合主義にはしらず、
皓と比呂が1歳違いの兄弟である、とした辺りにリアリティが生まれます。
・主人公も闇をかかえている
他のキャラクターの怒涛の自己紹介(笑)に圧倒され、水帆だけは一見問題のない、ノーマルな人物かと思われます。
もちろん冷たいとか人に関わろうとしないという性格にコンプレックスを抱いていて、その壁を乗り越えるためもあり、折口はるかに深く関わっていくことになる訳ですが。
その流れも自然で、彼女の善良さを表しています。
しかし抑え込んだ皓への情愛、束縛する母親との軋轢には、彼女が幼少期に出会ったあの移動図書館のお兄さんとのエピソードが色濃く影を落としているのです。
健全きわまりない人物にもきちんと影をつくる。
これこそが表のストーリーを重厚なものにするミソなのではないでしょうか。
・「折口はるか」というキーパーソン
葬儀の場では実に表面的に描かれていた周囲の人間関係も、話が進むにつれ実はもっとどろどろとしたモノが隠されていたことが分かってきます。
当初、成海は自他共に認めるチャラ男で、水帆もクラスのお調子者に対する姿勢をとっていました。
回想では、多くの偶然が重なり成海と触れ合った時期がありました。
高校卒業後、折口はるかを取り巻く人々はそれぞれの生活の中で、過去と折り合いをつけようと互いにそしらぬ顔で暮らしていた・・。
それらの表層が崩れ出したのが、折口はるかの葬儀という起点だったのです。
とるに足らない・・というか、いじめられっこのようなイメージさえもつ折口はるかが、多くのひとにとって不可欠な存在であったこと。
そして、彼女の「元カレ」を真実とは違う角度から知りたいと願った彼女の母親と水帆の接触から、堅い結び目が解かれていく・・。
過去は、ほじくり返すべきでなかったのだろうか・・。
いや、この水帆の道行によって、ギリギリ救われたひとは多いのではないだろか。
クールな水帆が奔走した原動力は、、どんどん”魅力的な人物”に肉付けされていく折口はるか。そして水帆を助けてくれる皓との最接近。
折口はるかは死してなお、比呂を絶望から救い、愛し、いろんなものを許し、人々を結びつけた。
けして表に出張らず、慎み深くも強く、強い愛情をもった女(ひと)だったことを知っていく水帆の旅が、この物語の大筋でした。
・脇役の存在
読んでいて一番、やられた!と思ったのが礼美の存在。
いかにもモブ。主人公のにぎやかな友人。はるかが陰なら彼女は陽。
・・そう思っていた、というかあまり気にかけていないキャラでした。
たしかに、葬儀のときもその後もよく出てくるし、水帆に対して毒を含んでいるのもみてとれました。
が、まさか水帆がはるかの過去を洗うきっかけになった「××」した女が礼美だったとは・・。
成海とできてた、くらいの可能性は考えましたが・・まさに盲点!
!最終話を読んで!
コミックは持っていないし読み飛ばしてるところもあるのですが。
最終回を掲載紙で読み、タイトルの「Piece」が、”折口はるかという人間の断片”という意味だけではなかった!ことがわかります。。
あのひと・・の手のひらで、すべては踊らされていた・・のでしょうか?
みんな、、泣いたり笑ったりだれかをかばったり、、
それが、あの人物の描いたストーリー通りに、出会って・心動かしていたのだとしたら・・?
すべてのピースは、あるべきところにはまったのか、、成海、、皓だけはお釈迦様の手を飛び出すことができたのでしょうか?
解釈によってはすべてをひっくり返すような、
かなり衝撃的なラストシーンだったと思います。
「Piece」、最後まで意外性を残してくれました。 最高の作品です。
そして次にハマる予感なのは「進撃の巨人」。
初レンタルコミックで9巻まで読んで、、発売したての10巻を買いに走ることに!
これは手元に置きたい作品なので、Pieceと共に、折をみて買いそろえたいとおもいます♪