昨今のデザイナーの傾向。 | とあるインテリア・家具デザイナーのブログ

昨今のデザイナーの傾向。

私が現在関わっている3工場のクライアントの8割は日系企業である。

そして私は工場再度の人間として、クライアント側のデザイナーと仕事を

する機会が多々ある。私は特定の企業の担当等はやらないので、

あくまで打合せに同席して商品開発に関してアドバイスを行う立場である。

最近特に思うことは、経験が無いデザイナーがあまりにも多すぎて

打合せから商品開発の過程でうまく行かないことが多々ある。

日本企業との商品開発においては、まず「低価格」というのが大前提である。

なのでコスト(商品のつくりや材料)を考慮しながら商品を開発する必要がある。

コストというのは具体的に言うと、手間のかかる形状だったり、材料だったりである。

しかしそれを理解していないデザイナーがあまりにも多い。

もちろん中国の材料等の事情はあまり理解していないわけだから、

そういった特殊な事情での理解不足はこちらも理解できる。

しかし、根本的な部分を理解していない人達が最近あまりにも多い。

オーダーが少量しかないのに、型を起こすだとか、モールドウレタン使用だとか...

そしてデザインの根本的な部分である形状に関しても、

3面でしか立体を捉えることができないデザイナーが多く、

多面的に立体を捉えられないデザイナーが多い。

わけの分からない図面も多い。

例えばソファのデザインなんていうのは基本的な形状は出尽くしている。

だからそこからさらに立体的に形状を捉え、設計していくしかない。

細かいふくらみだったり、パイピングのラインだったり、

生地の張り替えだったり考え方はさまざま。

私はデザインとは消去法だと思っている。

というのは100思考した中での10の形状がデザインだということ。

分かりやすい言葉で言えば、アイデア、経験、そして引出しの多さかな。

経験不足の人は大体が足し算になってしまう。

だから細部を突かれた時に、その理由が説明できない。

そしてデザインの資質は段階的に上がってのだと私は思っている。

Aのデザインが出来た人間はBのデザインを行わずにCのデザインにはたどり着けない。

つまりデザインとは飛躍的に能力が上がるようなものではなく、

段階的なものである。それにかかる時間は個人の努力や能力次第だが。

とあるインテリア・家具デザイナーのブログ

例えば、こういう風にパッチワーク風とし、

角部をすべてRを取るだけで大分イメージは変わってくるわけで。

そして形状に普遍性を持たせれば日本の市場で売れるソファの開発ができる。

日本では奇抜な形状のソファは売れない。

$とあるインテリア・家具デザイナーのブログ

これは木をスリットのような意匠とし、

その一部が回転して小さなテーブルになるというデザイン。

海外向けにこういったソファの開発もしているが...

私はアートとして捉えられる様な崇高なデザイナーではない。

あくまで商業デザイナーである。

まあ落ちぶれてアート的デザイナーになれなかったというのもあるのかも知れないが...

商業デザイナーという意味は

「関わる企業(小売店、工場)の特性を理解し、そこから売れる商品を開発する」

デザイナーである。自分の理想の家具をデザインしようと思えば、

もっと複雑な形状で凝った手間のかかる商品をデザインすることだろう。

しかし現在日本の市場においての家具開発は商品のボリュームとや機能を考慮し、

他社と商品の競争力を比較したうえで、まず上代を設定しそこから工場から

仕入れるFOB価格を算定し、商品を開発する。

そして我々はその制約の中で最大限の商品を開発しなければならない。

だから商業的な意味合いをしっかりと認識し、切り捨てる部分はばっさりと切り捨て、

割り切って商品を開発する必要があるのである。

そしてその評価を下すのは市場(エンドユーザー)である。

玄人の評価が高くても、全く売れなければ仕事で有用性を示せないのと同義。

そのためには商品がどう作られているか?を知らなければならない。

最近は机の上でしか仕事をしないデザイナーより、経験豊富な家具のバイヤー

の方が家具の構造や中身を良く知っているという現象になってしまっている。

謙虚ならまだいいが、そうでない人も多いですね、この業界は。

現在の日本市場においての家具のほとんどは海外で生産される時代。

自分はデザイナーだからどうこう、という考えは人それぞれだが、

そこから先の仕事(ソファがどうつくられているか)を真剣に考え

突き詰めて行くと、その会社を退職した時に別の会社から声がかかる

デザイナーになるんじゃないのかなと思う。

所詮組織に社員として所属するデザイナーの収入なんてのはたかが知れてる。

だから多くの人達(社内、仕入先や取引先等の社外)に評価され、

収入を少しでも多くしたいなら、必然的に通る道ではあると思う。

その生産国の言葉が話せる、材料等の事情を良く理解し商品開発ができる等。

まあ色々と書いたんだけども...

家具も含めデザイナーは机の上で仕事をしているだけでは、

平均以下の収入から増えることは無い時代になってしまった時代。

そこからは自分がどう考えるかという個人の裁量に大きく関わる。

新しい経験はしといた方がいいですね。