1.東京の"中心"

 

皆さん、東京の中心と言えばどこを連想されるだろうか?

 

都庁を擁する「新宿」

新幹線の始発「東京駅」

若者文化の発信地「渋谷」

 

曖昧な質問で、明確な答えは存在しない。

この問いに対し、新たな解を示したい。

 

 

飯田橋

 

だと。

山手線で囲まれるエリアの中心付近に位置し、東京メトロの南北線と東西線が交点である飯田橋駅は、配置的に東京の中心と言える。

筆者自身、一社会人として、南北移動と東西移動を切り替える際の乗換え駅として頻繁に利用してきた。

JR中央線通っており、23区外からのアクセスも容易と、利便性は非常に高い。

 

そんな飯田橋駅から、北西方向に歩くこと数分。

今回の舞台をご紹介しよう。

 

神楽坂

 

 

2.高級ランチ激戦区「神楽坂」

 

コロナの様子を見つつ、昨年から何度か開催されている「セレクターグルメ部」。

感染拡大を受け、冬季は活動を休止しているが、水面下で個人活動が継続されていた。

 

 

筆者が昨年秋から通い始め、約週1のペースで累計20回以上通うアツいエリアが神楽坂。

機会があれば仕事の移動ついでに立ち寄り、機会が無くても時間を作って自宅から通い続けてきた。

「神楽」という高貴な雰囲気を纏う名称に違わず、毎回2000-3000円の規模の高級ランチを堪能してきた。

 

店の質・量ともにレベルが高く、歩く一面全てが飲食店、興味を持つクラスのお店でも数は50程度にのぼり、いつも開拓に胸が躍る。

店の探し方は極めて単純。

 

①裏道に入る

②雰囲気に良さそうな店を見つける

 

これだけだ。

流石は飲食店の激戦区、裏道だろうが店の途切れる気配が無い。

表通りは人が多く、行列待ちは避けられないが、裏通りだとすぐに入れ、社会人の昼休みに適している。今のコロナの時期は人が少ないせいか、「1人で和室1部屋貸し切り」という至高の贅沢を堪能できることもしばしば。

今回は店の情報を食べログのリンクで紹介するが、食べログ推奨の人気店に行こうものなら、大行列は必至である。神楽坂の空気に触れつつ、自力で開拓するのが乙というもの。

 

高級なランチと言うと贅沢に感じるが、2週間に1回飲み会で5000円程度使うのと金銭的には変わらない。

ディナーで万単位を要する高級店の味を安く頂けるのだから、コスパとしては最強と言えよう。

では、「セレクターグルメ部」の活動記録として、そんな"非日常"のランチの一部をご紹介しよう。

 

 

3.孤独のランチ部 in 神楽坂

 

 

神楽坂のメインストリート「神楽坂通り」から見番横丁に入り、更に地図にうっすら写る細い路地に入り込んだエリアが、筆者のお気に入りのエリアの1つ。

徒歩30秒で行き来できるこの狭いエリアから3店舗をご紹介しよう。

 

神楽坂 前田

 

 

Q.なぜトップバッター?

A.今日行ってきたから

 

和室を一人貸し切りというパターンにはもう慣れたし、「銀鱈の西京焼き」というメニュー、そして実物を見て、「まぁこんなもんだろう」と正直侮っていた。

蓋を開けてみれば、帰宅後にブログで紹介する位にハマる始末。

脂の乗り、味付けの染み込み共に絶妙で、単なる焼き魚だと侮っていた自分を叱り飛ばしたくなった。

 

丁寧に作られた一品ずつをじっくり味わいながら、広い和室で優雅に佇む。

心を無にしてリラックスできる時間こそ、現代人に平等に与えられた、最高の癒しと言えるのである。

 

 

神楽坂 梅助

※閉店したという噂もありますが、昔行った時の情報を載せています

 

 

前田から徒歩10秒、こちらも和の個室を独り占めしていた。

 

御造里(おつくりは漢字でこう書きます。皿の上に里を造るように盛るかららしいです。)

いくら&鮭の親子丼

羊羹

 

と、和のセンターラインを疾走する中で、中央で異彩を放つ「カニクリームコロッケ」。

違和感を覚えつつ口に運ぶと、一瞬で濃厚な味わいが広がった。

横向きの写真に収まらない位、大量の料理が並ぶ様子は、まさに"贅"の極みであった。

 

 

カルボナーラ専門店 ハセガワ

 

 

圧倒的和食環境である当記事の中で、唯一の洋食枠となるカルボナーラ専門店。

大皿の中央に小さく盛るスタイルは、「気取っている」と筆者が最も嫌うはずなのに、それでも紹介するのはやはり味。

カルボナーラのクリーミーさ基調として、トマトの程よい酸味で飽きさせず、バジルで香りも楽しめるという三位一体の構造。

〆はシソのシャーベットで更に後味爽やか。

 

 

馳走紺屋

 

 

食べログでオレンジと言えば、評価3.50以上の高評価店。

そんな高評価店が4つ集う激戦区の中で、敢えて3.49の推しをご紹介したい。

(※4つともまだ行っていないだけで、そのうち行きたい)

 

紺屋の最大の魅力、それは何と言っても、

 

 

酒が飲めて2000円

 

右に見えるグラスは水ではない。いや、成分はほぼ水だが。

小鉢8品、見た目は小さくとも、いずれも味は力強い。

 

金曜昼、気分良く1週間を締めたい時に、つい立ち寄りたくなってしまう。

まさに今日のことだったが、開いていなくて断念。

代わりに前田を開拓することができた。

 

 

神楽坂 SHUN 分家

 

どこまで開拓するつもりなのか・・・

 

 

飯田橋駅から大きく離れ、パッと見て地図上で道の存在が視認できないレベルの細い路地の中にも、名店は潜んでいるものだ。

神楽坂のレパートリーの広さに驚かされるばかりだ。

ジャンルは最早定番となった「個室で和食」。

 

 

御造里

天婦羅

手毬寿司

 

豪華なラインアップで1,800円というコスパの良さには驚かされた。

元々はディナー専門のお店だったが、コロナで夜営業を短縮した分ランチを始めたそうだ。

ランチを始めたばかりでも、俄か仕込みではない、確かな品々には感心させられるばかり。

 

 

神楽坂 翔山亭

※閉店したらしいですが、昔行った時の情報を載せています

 

 

 

どんなに上品を装おうとも、肉の誘惑に打ち勝つことは出来ない。

遡ること4日前、月曜昼に僅かな時間を作って飯田橋に立ち寄り、直感で見つけた店に飛び込んだが、これがビックリ大正解。

「肉は旨い」という、汎用的なフレーズも、過去の神楽坂シリーズでは盲点となっていた。

語るまでもないだろう。

 

そして次が最後。

過去20回に及ぶ神楽坂ランチの中で、個人的に一番印象深いお店をご紹介しよう。

 

 

日本料理 斗南

 

クエ鍋

比内地鶏の炊き込みご飯

 

とてもランチに食べて良いものとは思えない。

 

 

異次元の豪華さ、異次元の味は、未だに鮮烈に焼き付いている。

上品な店で「おかわり」と言う行為に抵抗を感じつつも、「比内地鶏」を前に我慢しきれるはずが無かった。

 

まだまだ寒い日は続く。

鍋の旨い季節のうちに、また行きたい。いや、行かねばならぬ。

 

(※2021年5月1日加筆)

ARBOL

 

 

久々に開拓した名店。

わざわざ更新して書き留める辺りから、このお店の偉大さが窺い知れるであろう。

 

(2024年8月4日加筆)

※ここ数年で行った店を追加しますが、昔行ったので自分で撮った写真を発掘できない店も多く、食べログの写真を転載します

 

Nico Chelsea

 

和食、次いでイタリアンが多い神楽坂でも異色を放つ"ジビエ"というジャンル。

狩猟文化と深く結びつき、最近では熊の出没情報やハンターによる退治のニュースが増えており、身近な問題となりつつある。

が、食事を始めれば政治問題は関係ない。

 

 

ただ純粋に、"肉"を喰らえば良いのだ。

ジビエといっても、臭みなどのクセは少なく、牛などの日頃食べなれた肉と大きな差はなく、抵抗なく楽しめる。

ジビエを食しつつ、狩猟文化や食卓に上がるまでに関わる人たち、何より食事の楽しみと栄養をくれる食べ物達へ思いを馳せるのも悪くない。

 

 

とんかつ憲進

 

 

し、白いトンカツ・・・?

淡泊な見た目だが大きな衝撃が走った。

色だけではなく、食感も絶妙。

トンカツという、日常でも食べる機会のある料理であっても、この神楽坂では"非日常"に変えてしまう魔法があるのだと悟った。

 

 

日本料理 神楽坂 仁

 

「神楽坂 SHUN 分家」や「ARBOL」が控える裏通りは、静かで趣深く、歩くだけで風情に浸れるお気に入りの場所。

何度も好んで通うだけあって、変化があればすぐに気づく。

 

ある日、通りを歩いていると、見慣れない店の看板が。

2022年にオープンしたお店らしい。

日本料理の激戦区に殴り込むだけあって、懐石料理はいずれも神楽坂クオリティ。

 

今後の更なる発展に期待したい。

 

 

神楽坂 茶寮 本店

 

グルメ部には珍しいスウィーツ回。

甘味という幸福に浸れるひととき。

味はもちろんだが、なんといっても見た目が"映える"。

 


 

 

 

エノテカピッツェリア 神楽坂スタジオーネ

 

 

"本格派"の一言。

神楽坂で眺望の良い建物の5階に位置し、眺望の良いテラス席も用意されている。

上で紹介した「馳走 紺屋」や「翔山亭」と同じ建物というグルメ激戦区の一番上で待つラスボスというべきか。

 

 

奇を衒わず、前菜、ピッツァ、肉料理、魚料理、ドルチェに至るまでの流れに隙が無い。

厨房の雰囲気、内観、眺望の良い眺めと、料理以外の部分も素晴らしく、総合力の高さを感じられた。

これぞ神楽坂、久々に新たな店を開拓できたことで充実した平日休みとなった。

 

(2024年10月12日追加)

 

メゾン ツクダ

 

裏路地へ、更に裏路地へ・・・

 

神楽坂に足繁く通っていると、定番所で済ますかという安易な気持ちと、開拓しなければという使命感の板挟みになりがちだ。

主要な裏路地を制覇すると、開拓の余地は徐々に減っていくものだが、それでもこの日は攻めの気持ちに溢れていた。

 

 

気付くと神楽坂から大きく外れてしまった。

「ここまで来たらもう店は無いな」と、今まで引き返していた裏路地から気まぐれで1つ曲がってみた。

 

(食べログに載ってたお店提供の外観写真)

 

するとそこにはオシャレな佇まいのお店が。

一見しただけでは分からないが、鉄板焼きのお店だそうだ。

最も安いランチメニューでも3000円のハンバーグ。最も高いと6000円のステーキと、佇まいに違わぬ高級感。

 

これだ。

直感を信じて店内へ。

 

(食べログに載ってたお店提供の内観写真)

 

間違いない

 

個人経営らしく、オシャレで少人数にはちょうど良い広さの店内。

主要な通りから外れているだけあって、他に客は居なかったが、迷いはなかった。

この空間を独り占めできるとは、なんという贅沢か。

 

高価格帯のお店に初挑戦ということで、様子見のため最も安いハンバーグを注文。

 

 

網目状に付いた焼き色、ジューっと焼ける鉄板の音、嗅ぐだけで食欲を刺激される匂い、食べる前から五感に訴えかけてくる。

うーん、僕のスマホのズーム機能では限界があるようだ。写真では伝わり切らない分は文字から感じ取ってほしい。

 

ハンバーグを鉄板から取り出し、ようやく食べられるかと思いきや、一旦オーブンへ。

焦るな。最高の状態で頂くには時間と手間を惜しんではならない。

 

 

いよいよ実食。

もはや解説不要、美味であった。

 

何より驚いたのが、ハンバーグ本編というより、サラダ・スープ・付け合わせの野菜といった周囲の完成度だ。

サラダは野菜だけでなく、揚げた鯵が入っており、ドレッシングと絡んで前菜というには失礼な仕上がり。

付け合わせの野菜は程よく火が通り、素材の魅力や食感を残しつつも味が染み込みやすい状態で、ハンバーグと共に食すと肉単体とは異なる食感が広がる。

 

最も驚いたのがスープだった。

マッシュルームのスープと聞いたが、なんと濃厚なことか。

スープというよりソースに近いような、クリーミーでマッシュルームの旨味を存分に感じられた。

とにかく密度が濃く、凝縮されていた。

 

大満足で店を後にした後、記事にお店の情報をまとめるべく、食べログで情報を調べたところ、衝撃の事実を知ることに。

 

 

ランチ要予約

 

スミマセン、何も知らず飛び込みで入っちゃいました。。。

どうりで貸し切りだったわけだ。

 

 

(2025年4月8日追加)

 

インド料理 想いの木

 

神楽坂では裏通りに突入し、自らの足で好みのお店は開拓してきたが、行き尽くした感が出てきてしまった。

自分の感覚で店を探すと、どうしても似た雰囲気の店ばかりに辿り着いてしまう。

ここは、発想を変え、俗っぽい手段、つまり「食べログ」先生に頼ることにしよう。

 

評価の点数だけ見て選ぶのは悪手だが、こんな所にそんなお店が!と発見する手がかりになるかもしれない。

そして1つのお店を発掘した。

店の前に辿り着いた瞬間、こんな店があったのか、これはネットで調べないと分からんわと実感した。

 

(食べログ掲載の公式写真)

 

外観慎ましすぎぃぃぃ

 

大変オシャレなのだが、特に「インド料理 想いの木」という部分がさりげ無さ過ぎて、そもそも飲食店があることすら気づかずにスルーしかねない。

この店を目指して地図を見ながら歩いても一瞬オーバーランしてしまったくらいには存在感が薄い。

 

が、こんな和の懐石の趣漂うインド料理店は初めてだ。

店さえ見つかればこちらのもの。必ずや新しい体験があるに違いない・・・

 

(食べログ掲載の公式写真2)

 

内観も期待を裏切らない、上品な雰囲気。

うーん、、、本当にインド料理なのか・・・?

 

 

まずは前菜で、トマトとスープ。

トマトはメニューを出された時にお勧めされたもので、福岡の農家の方が栽培された、季節限定の一品だそう。

お勧めされるだけあって、一口食べれば違いは明らか。

 

密度がスゴイ

 

トマトといえば、中はみずみずしいというか、水分ばかりなイメージだが、中までしっかり実が詰まっており、力強い食感に驚かされた。

僕の祖父母が農家だったのだが、子供の頃、毎年夏に帰省するたび、段ボール一杯のトマトを貰って帰ったのを思い出した。上京してからは水っぽいトマトばかりを食し、物足りなさを感じていたのだが、久々に思い出の味に近づけたこと感銘を受けた。

 

スープも独特の風味で、酸味の中にスパイシーさがあり、その奥には確かな旨味が感じられた。

よく食す和洋中とは異なる、アジアンな風味を感じつつも、店の雰囲気に合った上品な仕上がりとなっており、大いに満足させられた。

 

 

続いてメインのカレーが到着。

僕は野菜のカレーとココナッツとゆで卵のカレーを注文した。

 

敢えてベタなチキンカレーを外した攻めたチョイスだったが、これが大当たり。

良い店の野菜はお飾りではなく、食感で訴えかけて確かな存在感を放つ。

中でもルゥをしっかり吸った茄子は肉にも劣らぬ主役格だ。

 

ココナッツの方も攻めたチョイスで大正解。

ココナッツは聞き覚えがあったが、ゆで卵は合うのかと半信半疑だった。

最初は自炊にありがちな、固茹ででパサパサした食感をイメージしてしまったが、お店のゆで卵がそんなはずも無く。

白身・黄身共に程よい茹で加減でカレーに調和しており、それでいてルゥの風味に負けることなく、黄身の旨味をしっかりと感じられた。

 

どちらのカレーも大満足。

次は大本命、肉入りのカレーも頂きたいものだ。

 

 

(2025年7月19日追加)

 

のいえ

 

飯田橋駅周辺は行き尽くした感があるため、より遠くへ、遠くへ開拓先を求める。

前回の想いの木もそうだが、東西線神楽坂駅周辺が今後の主戦場となりそうだ。

 

地元の生活で使われそうなスーパー等が並び、路地に入ると住宅街に入る落ち着いた街並みで、飯田橋駅周辺とは雰囲気が違った。

その中でも特に特徴的な外観のお店が今日の舞台だ。

 


※飯屋です

 

草木が生い茂り、隣にはガレージがあり、階段の上は家のようにも見える特徴的な外観。

「お昼ごはん」とちょこんと書かれただけのひっそりとした佇まいは、僕じゃなきゃ見逃しちゃうね。

しかし、こういう個性的な外観は店主のこだわりの表れ。

料理もこだわりの逸品が出てくるに違いない。

 

 

スペシャルランチを注文。

ご飯、味噌汁、漬物、サラダ、塩で頂く豆腐、アジフライ、カキフライ、シュウマイ、海老、デザートのシャーベットと盛り沢山で2800円。

普段と違った空間でちょっぴり贅沢するには丁度良い。

 

まずは味噌汁を一口。

汁の風味はもちろん、具の油揚げやキノコも食感がしっかりしており、食材や調理が工夫されていると感じた。

これは間違いない。

 

どの料理も素晴らしく、みるみるうちにご飯が消えていく。

個人的には漬物のいぶりがっこが印象的で、燻製という他の漬物とは異なる工程で作られ手間が掛かるためか、定食屋のご飯の付け合わせで出てくる機会は少ない。

たまにしか頂かない分、出てきた時は香り・食感・味を存分に堪能できる。

 

最後はゆずシャーベットと温かいお茶が出された。

さっぱりした食感は夏にベストマッチで、お茶が添えられているのもほっと一息つける。

多種多様な料理で、どこにも隙の無い完成度。

これぞ神楽坂でちょっと贅沢の醍醐味であろう。

 

 

いかがだろうか。

やはり評価には主観が混じるようで、今回食べログで見返すと3.5を超えない店が多く驚いた。

 

だが、孤独のグルメは自己との戦い。

 

自分がいかに美味いと感じられるか。

自分がいかに無に落ち着けるか。

 

究極の自己満足を追い求め、今日も筆者は開拓へと繰り出すのであった・・・