11月11日。

待ちに待った日がやってきた。

今日は・・・

 

シラクラ杯だ!!!

 

キーセレからWIXOSSを始めた僕にとって、初めての大型大会。

1人じゃ不安だけど、隣には誘ってくれたチームメイトが居る。

きっと強い人と対戦できる。楽しみだ。

そして何より、あの、"伝説のセレクター"シラクラさんに会えるんだ!

どんな人なんだろうなぁ~

 

会場に入る。

そこには見るからに強そうな人達が集っていた。

伝説の大会を飾るに相応しい猛者達。

楽しみ半分。不安半分。

でもまずは受付だ。

 

「あの、、、受付をお願いしたいんですが。」

「では、チーム名をお願いします。」

 

声にはっと気づき正面を見る。

なんと・・・

 

「もしかして・・・世界王者のシラクラさんですか!?」

シラクラ「いかにも、僕が世界王者のシラクラです。」

「ああああ、握手してもらっていいですか!???」

 

あの、伝説のシラクラさんに会えた!感動で頭がいっぱいになる。大型大会って・・・スゴイ!

 

シラクラ「後、下のアンケート欄にもお答えいただけますか?」

 

そこには、「ポッキー、プリッツ、トッポのうち、あなたの好きなお菓子は?」という質問が。

11月11日らしく、参加賞のアンケートを取っているのかな?

深く考えず、素直に「ポッキー」と答えておいた。

 

席に戻る。

「おっ、受付終わった?」

「終わったよーところで、参加賞はポッキーでいいよね?」

「んっ?いきなり何?」

 

チームメイトの顔が曇る。

 

「アンケートで、あなたの好きなお菓子は?って聞かれて・・・」

 

突如、チームメイトが険しい顔になり、

 

「馬鹿野郎!!!」

「・・・いきなりどうしたの?」

「あのシラクラさんが開いた大会で、何素直にアンケートに答えてるんだよ!!!」

 

意味が分からない。

直後、会場内にアナウンスが聞こえてきた。

 

シラクラ「それでは受付が終了しましたので、1回戦のマッチングを発表します。本日の予選は3ブロック制です。」

 

・・・・・

 

その瞬間、初心者の僕でも全てを悟ってしまった。

あのアンケートは、予選のグループ分けのためのものだったのだ。

そう、戦う前から、予選は始まっていたのだ。

愕然とする僕に対し、隣の卓から声が聞こえた。

 

「残念だったねぇ。これはセレクターバトル。騙し合いのゲーム。世界3位のシラクラさんは、世界で3番目に嘘をつく人だってこと。そんな馬鹿正直に答えてどうするのwww」

「えっ、世界王者ってさっき・・・」

「また嘘をついたねぇ。それくらい嘘をつけないと、世界3位にはなれないってことかな?」

 

見栄を張るために嘘をつく。あんな人だと思わなかった。

僕の中で、何かが崩れていく。理想と現実の狭間で、崩れた理想に押しつぶされそうになっている。

その時、別の声が僕を現実に引き戻した。

 

謎のプレイヤーX「ひっひっひ。馬鹿だねぇ~。あんた達。」

 

また煽り声が。

もう、どうにでもなればいい。

僕のような初心者が来ていい場所ではなかったのだ。

 

更にうなだれる僕。

だが・・・何かがおかしい。

表しようのない違和感が、僕の頭をよぎる。

 

あんた・・・達・・・?

 

シラクラ「それでは、全30チームの予選ブロック分けを発表します。」

 

X「セレクターバトルは騙し合いのゲーム。そんなの常識に決まっているよ。」

 

シラクラ「まずはプリッツグループ。10チーム。」

 

X「常識って怖いよね。セレクターの常識。嘘つきの常識。強者は"正しい"選択をする。だが、"正しい"選択が、本当に正しいかは分からない。」

 

シラクラ「次にトッポグループ。18チーム。」

 

突然、辺りがざわめく。

 

X「"正しい"選択肢が見えてしまうと、ついついそれを選んでしまう。ポッキーはいかにも怪しい。避けるのが正解。だが、皆が避けるとどうなるか?

 

シラクラ「最後にポッキーグループ。2チーム。」

 

僕は顔を上げた。

 

X「ようこそ、ポッキーグループの決勝戦へ!!!」