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つくば暮らし(隠居日記)

気が向いたときに更新される日記です。

 

五木寛之の最新エッセイ「大河の一滴 最終章」を読む。

 

作家は今年九十三歳になった。

人生の最晩年を迎えた老作家が、現在の自身への思いや、これまで経験してきたことについて語っている。

 

作家はこれまで病院に入院することもなく、元気で過ごしてきたが昨年咽頭癌が見つかり治療をすることになった。治療にあったって作家が主治医にお願いしたことは、執筆活動に影響がでる副作用のあるような外科手術や抗がん剤の投与はせず治療したいということであった。 

作家は専業生活を70年ほど続けており、現在も日刊紙に連載を持っており、毎日夜12時の締切までに2000字の原稿を仕上げる毎日だという。 この作家の生活の指針は<働き続ける>ということである。

「そのために必要なのはリズムのある生活だ。 食事、睡眠、運動。 まず食事は朝食に重点を置くこと。睡眠は7時間前後。運動は原稿を書くこと。・・・・1時間や2時間机に向かって字を書くのは仕事ではない。もちろん運動にもならない。しかし時には20時間も40時間も、考え続け、書いては破り、破っては書き、ペンを動かし続けるのが、全身の運動でなくて何だろう。」と特別な健康観を披露している。

 

自身の引き上げ体験について、これまでいろんなところで書いているのを目にしたが、本書でも触れている。

生後すぐに教員だった父親の赴任先である朝鮮にわたり、戦後平壌から引き上げる際、進駐してきたソ連軍に母を殺され、38度線を越えて命からがら帰国した。

「母は私に<生きる>というメッセージを託して非業の死を遂げたのではなかったか。母は敗戦直後の北朝鮮の街で死んだ。遺骨をもって引き上げることすらできなかった。弔うことすらできなかったのだ。注射一本、薬一服、与えることもできずに見送った。‣・・・・戦後、80歳を過ぎるまで私が頑なに病院に行かなかったのは、サイバーズ。ギルトとかいう無意識の抵抗のせいだと後年指摘されたことがある。」

 

高齢者についての見方も面白い。

「平均寿命が今よりはるかに短かった時代は、40代はすでに老人扱いだったのでしょう。今や我が国は世界に冠たる高齢者国家です。

・・・・<人はどう生きるか>が青年期の問いであった時代は過ぎました。いまや老人が哲学する時代が来たのです。・・・・<若きウェルテルの悩み>よりも<老いたウェルテルの悩み>をこそ追究すべきなのです。」

 

 

作家が昔数年間休筆して学んだ仏教の他力本願の考え,

人は本来他者や大きな流れに支えられて生きている存在(大河の一滴)だと受け入れていくことが本書でも語られていました。

 

「人はただ生きながらえることを目的に生きることはできない。<何かのために>生きるのではない。<だれかのために>生きるのだ、という目標こそが、本当の生きる力になるのではないかと思うのだ。それをこそ<生命の大河>というのではないだろうか。」

 

 

 

 

 

 

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