コロナ騒動でカミユの「ペスト」が増刷されているとの新聞記事があった。昔学生時代に文庫本の「ペスト」を買いました。 翻訳のせいもあるのか、すっと頭には入らない文章で途中で投げ出した記憶があります。
本屋を覗いていたら昔の文庫本の改定増刷版「ペスト」を見つけました。 今の時期ならじっくり読めると、読み通すつもりで買って帰りました。
文章の感じは昔と同じで、繰り返しながら読み進めました。 カミユが一時期すごしたというアルジェリアのオランを舞台にペストが街を襲った様子を約1年にわたって記録したという小説の作りになっています。
はじまりは鼠の死です。町のいたるところで鼠の死骸が見つかるようになり、やがては熱病に侵され脇と鼠径部に腫物のある患者の死亡が増え続けます。当局は最初ペストを宣言することを、ためらっていましたが、植民地総督府の命令で市は閉鎖されることになります。いまでいうロックダウンです 。 この時から市民は移動の自由を奪われ、監禁状態に置かれます。
小説は作者の分身であるような医者リュウがどのようにペストに対応したかを記録するという形で進行していきます。あわせてリュウの周りで結成されたペスト保健隊の面々の行動が記録されていきます。 保健隊は司祭や、役人、裕福な若者、記者等のメンバーからなっています。
「ペスト」は、人間がこのような不条理な状態に置かれたとき、どのように行動するのか、どのように行動すべきかをリュウや保健隊の面々を通して記録し、読者に突き付けていきます。
4月から始まったペストは死者数が夏に頂点を迎えます。秋になると一時停滞状態を迎えますが、終息するには次の年の2月までかかります。 これはカミユが作り出した虚構の物語ですが、その洞察のリアル感に感心しました。
実際に起きた今回のコロナ騒動で、日本の場合はロックダウンもなく、死者の数も少なくて済みましたが、イタリヤやフランス、スペインではこの小説「ペスト」で起こった以上のことが起こっていると報道から感じられます。 ブラジルでの埋葬のニュースは「ペスト」に書かれている光景を思い出せる悲惨な映像でした。46歳の若さで亡くなったカミユがこの状況を観たらどう感じるでしょうか。
