玉村豊男は自由な文筆人でエッセイ等で活躍している。東京で文筆活動をしていたが、30代で軽井沢に引っ越し、40歳ごろからブドウ栽培を始め、ついにはサミットで使われる程の自前ブランドの葡萄酒を作るまでになった人である。 彼のブログは経営しているヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリーのホームページで時々覗いている。
昨年このブログで自身の病気について書いていた。 今年これに加筆して「病気自慢」という本にしたものを出版した。
早速アマゾンで注文した。これは彼自身の病気の履歴書である。
玉村豊男は37歳からの36年間に14回入院している。そのうち大病が2回で、最初が37歳の時交通事故に会って入院したこことで、次は42歳の時に原因不明の大量吐血で入院したことである。特に吐血の際は輸血によって肝炎に罹った。肝炎の治療に長い間定期的に都内に出かけていたそうである。この間の病気のことが詳細に書かれています。他人の病気の話の何が面白いのといわれそうですが、エッセイストだけに文章に読ませる力があります。書かれている入院の日付等も過去欠かさず続けてきたスケジュール手帳(毎年更新するお気に入りの大型の外国製手帳で書棚のかなりのスペースを埋めているとのこと)の記録から取ったそうで、自分の人生の一切を文章で記録し,作品として出版し続けるという文筆人の姿勢が見えます。
若い時から束縛を嫌い会社勤めをしたことがないという自由人は、自分の身の回りのすべてのことを文章で発表してきた。画家の末っ子として生まれてきた彼が40歳頃から独学で絵に打ち込みやがて個展を開くまでになった経緯やブドウ畑を開墾しワイナリーを開くようになった経緯などをエッセイ等で発表している。 いずれも上質のエッセイで引き込まれます。
本書の中でも触れられているが、絵を描くようになったいきさつについては病気の間の退屈しのぎというからおおしろい。
今ではヴィラデスト・ガーデンファームの販売する料理皿のデザインも描いており、その繊細な植物画に感嘆します。
病気の自慢はなしというのもおかしいですが、自分が付き合ってきた病気のことを愛おしむようなエッセイです。長い間患っていた肝炎は治ったものの数年前肝臓がんが見つかったという。これまで病気を自慢にするなんて世の中の病気の人に悪いと思っていたが,がんになったことで病気を自慢する資格が出来たと感じ病気のことを本にしようと思ったという。読む人には遺言書のような本である。
実際遺言の話も載せてあり、死後骨はブドウ栽培を始めた時に牡蠣殻を三陸から運んで肥料として入れたように、ブドウ畑に蒔いてほしいと述べています。玉村豊男の「粉骨砕身」ヴィンテージワインとなるように。