帰宅すると、まず“縞のアニキ”が出迎えてくれる。

…というか、下駄箱の上で寝ていたところを起こしてしまうのだが。

次に“御大”が、「やぁやぁ、お帰り」と、ゆっくりと現れる。

最後に“D・W”が、「おい、帰ったンなら、メシ!」と顔を出す。


これがいつものパターンなのだが、今日は違った。


まず、ドアを開けたらすぐに足元にいた“D・W”が、私を見上げていた。

下駄箱の上に“縞のアニキ”はいない。

とりあえず、「ただいまぁ~!」と良いながら居間へ。

ベランダの窓近くの水呑場で、“縞のアニキ”が不思議そうにこちらを見ている。

「ねぇ、“御大”は?」

話しかけるも、二人はソワソワしているばかり。


ちょっと不安になる。

なぜなら、“御大”は当年とって十六歳というお年寄りだから。

部屋の隅でポックリ逝っている。。。なんてことも、ありえなくはない。


「御大~!おんた~い!おいで~!」

呼んでみても、返事はない。姿もみせない。

どーしよ、ヤバイかも!?

部屋のあちこちを、姿を探しながら名前を呼ぶ。

やっぱり反応がない。


「御大~!御大~!ご飯だよ~!」

伝家の宝刀、“御大”が絶対反応する言葉を出してみた。


すると、遠くのほうで声がした。


「ここでぇ~す!」



声の先は、ベランダだった。

ガラス越しの薄暗がりの中に、わりと悠然と腰を下ろした“御大”が

大きな口をあけて何か言っている。


「ご飯、食べます~!」



約12時間後にようやく家に帰れた薄汚れたジジィは、

何日も食べていなかったように、ガツガツと皿に顔を突っ込んでいる。

自慢の真っ白な手足は、泥とホコリで濃いグレーになっていた。

腹や背中も汚れていたので、おそらく身体をおもいきり伸ばして

ひなたぼっこをしていたのだろう。

生まれて2度目の外の世界を、満喫していたのだろう。

(そう思いたい)


今日が、雨降りじゃなくてホントによかった。



家人が帰宅したら、教育的指導を行わなければ。