私の学生時代は、インターネットの黎明期でした。ブログもTwitterもなく、ネットで何かを発信したい人は自分でHTMLを書く人も少なくなかった時代です。
そのうちに、ネットには匿名掲示板やブログというものが出現しました。
それに接して、非常に驚いたことがありました。ショックを受けたという方がいいかもしれない。
何かを世の中に向けて発言したい人が、これほどたくさんいたのだということ。
そしてその裏返しとして、ネット以前、これらの言葉は一体どこに向けられていたのだろう、またはただ溜め込まれていたのか?
ネットがそうした言葉をすくい上げることで救われたひともいるかもしれませんが、せっかくのそうした言葉が、現実の行動や人間関係に結びつかずに、ただのつぶやきとして、ネットの大海に沈んでしまうのがもったいないとも思います。
自分を表現する言葉が、家族や友人ではなく、知らないどこかの誰かに向けられる。家族それぞれ、本音はネットに書き込む。
知らない誰かのいいねやコメントという、人間関係というのはあまりに細い糸を励みに生活する。
人間がこんな状態に置かれたのは、歴史上初めてではないでしょうか。
もうひとつネットについては当時驚いたことがあります。
ネットに書き込まれる言葉が、あまりに粗雑で暴力的で厚顔無恥なことです。戦慄しました。
多くの日本人の表面上の穏やかさの内側にはこんな言葉が詰まっていたのかと思うと、寒気のする思いがしました。
いまは私の神経もすっかり鈍麻してしまい、こんなものだと諦めてしまってもいます。
それでも、たまにYahoo!掲示板や様々なレビューサイトの類を見ると、その言葉のひどさに今でも絶望的になります。
もちろんこうしたものは、ごく一部の人たちの頭の中のことに過ぎないとは思うのですが・・・。
インターネットができたことで、言葉や社会や他人についての私の信頼は、少し不安定なものになりました。