アルバム「三日月ロック」に収録されています。
スピッツの魅力はたくさんあります。
その中で、草野さんの作詞・作曲・歌唱の素晴らしさはもう言うまでもないのですが、スピッツは演奏とアレンジもまたすごいと思います。
スピッツの録音では、演奏とアレンジが草野さんの歌を邪魔しないよう控えめに感じることも多いのですが、『水色の街』では4人の演奏が完全に対等で、各人見せ場があり、しかもアレンジが素晴らしいので、どこに耳を向けていいのかわからない!
贅沢な悩みです。
ギターのシンプルな和音で始まり、マサムネさんのボーカルが、いつになく虚ろな感じでメロディを提示し終わったところに突然硬質なドラムが割って入る冒頭から、かっこよすぎます。
サビ部分がまた非常に印象的で、歌詞がない「ラララ・・・」だけのスキャットなんですが
その裏の三輪さんのカッティング、崎山さんのシンバルがものすごくカッコいい。
スピッツ全曲の演奏の中でも一番好きな部分のひとつです。
そして間奏では田村さんのベースがうねりまくり、これもカッコいい・・・。
スピッツは、世間的にはとにかく草野さんが有名ですが、草野さん以外の演奏があってのボーカルだと、本当に思います。
歌詞は、川を渡って、間違えたステップで、水色の街へ君に会いに行く、という内容で、スピッツの曲の中でもかなりはっきりと暗い、冷たいイメージです。
「僕」「俺」など、主語が全くないのも、誰が誰に語っているのか、不確かな、夢の中のような印象を与えます。
私がこの歌詞ですごいと思うのが、「頸の匂い」というところです。
言葉だけ見るとエロティックな感じがするかもしれないのですが、曲の中では虚ろで不吉なイメージです。
でもそれが、なぜなのか自分でもわからない。
まさに「詩」の働きだと思います。
終奏はほとんどなく、ボーカルの終わりとともに投出すような感じで終わります。
ロックバンドを聴いてこんな感触を味わうことはスピッツ以外に経験はありません。
文学でもすぐには思い浮かばない。
映画でも、どうかなあ・・・。
きっと同じテーマの作品はあるはずなのですが。
全然方面は違いますが、『サイレントヒル2』という、随分前のPS2のゲームがあるのですが、それをプレイしたときの感触に近いと思いました。
水、亡くなった人への憧れ、その場所に惹かれ続けてしまう感じ・・・。
スピッツの中ではやや異質な曲かもしれませんか、本当に芸術作品だと思います。