不起訴事件記録の開示 | 今日も花曇り

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刑事事件の記録(書面化された証拠や調書の束)は、裁判が終わった後は誰でも閲覧できますが(刑訴法53条)、裁判が開かれる前は逆に非公開が原則です(47条)。ただし、「相当と認められる場合は、この限りでない」という例外も定めています。

刑事事件は裁判にならない(起訴されない)ケースも多く、そういうときは記録が公開されません。

でも弁護士は不起訴記録を見たいことが結構あります。多いのは交通事故で、刑事は不起訴になったけど、被害者が民事で損害賠償を請求したいとき。民事での損害の立証は被害者が負うのが原則なので、証拠が要ります。捜査機関が国家権力でもって集めた証拠は、被害者側としてはぜひ利用したい。

でも、上記の非公開原則。そこでどうするかですが、被害者等に対する不起訴事件記録の開示という制度があります。これは47条但書にあたるケースとして平成20年から開始された制度ということで、法務省のサイトに詳しい説明があります。

不起訴事件記録の開示について(法務省サイト)

これは意外に知られていないようで、私が事務所に入ったときは誰も知りませんでした。司法研修所の教科書にそんな記述があったことを思い出して「ほんとにできるのかな?」と半信半疑で検察庁に聞いてみると、ごく簡単な手続きですぐ開示してくれました。

それまでは弁護士会からの照会制度を使っていたようです。でも弁護士会照会は時間もお金もかかるので、この制度を使う価値はあります。ただし、公開される証拠の範囲は限定されます(交通事故だと実況見分調書だけ)。

私の地域の管轄の検察庁では、事前に電話しておき、交通事故証明書(交通事故の場合)、民事事件の委任状と閲覧請求者の身分証明書を持って行けば見せてくれます。弁護士会照会は上記のとおり時間とお金がかかるので、空振りに終わるとかなりがっかり。その下調べとしても使えます。