先月入庫したプリウスですが、お客様のお言葉に甘えて他の修理を優先させて頂き後回しとなっていましたが、今月修理が完了しましてやっとお返し出来ました。
50プリウスは当店にとって初入庫とあって手さぐりの部分もありましたが、色々と勉強になりました。
こちらのお車ですが事故当初はディーラーさんに入庫となっていたのですが、訳あって自費での修理とのことでご相談を受けまして私が修理を引き受ける事となりました。
保険修理ならそのままディーラーさんでの修理となっていたかもしれませんが、ディーラーさんに依頼しても結局直すのは外注先の板金塗装工場ですからね。
保険を使った修理でも当店に持ち込んで頂ければお客様にはメリットはあると思います。
ディーラーさんにお車を引き取りに行くと、担当者さんが私にもすごく良い対応をしてくれました。
こんなディーラーさんなら取引先としてお付き合いしたいよな~って思う位の好印象でしたよ。
私は、他の車屋さんを通さず直接うちに相談に来てもらってお車を持込んでくださるお客様の修理を増やしていきたいと思っているのであまり営業にも行ってませんから、取引先として提携している車屋さんは少ないんです。
もし、修理をお願いしたいと思ってくれる近くの車屋さんが居ましたら声掛けてくださいね~。
近くの車屋さんはこのブログ見てないと思いますけど・・・。
そもそもお願いしたいと思ってくれる所があんまりないかな?
お願いしたいんじゃなくて、修理を出してやるから安くやれ。
こっちの言いなりになるなら出してやってもいい。
そんな感じなので、私が断ります。
だからって事でも無いかもしれないけど増えないんだな・・・。(;^_^A
今お付き合いしている車屋さんはこっちの都合も考えてくれたりして本当にありがたいので、私は下請けではありますが元請けさんがお客様からの信頼を損なわないようにしっかりと修理をしています。
本音を言うと元請けさんは私にとってお客様でもあるのですが、その先のエンドユーザーであるお客さんの事を1番に考えている。
車屋さんの為ではなくてお客さんの為に修理をしているんだから手抜きは出来ないし、そこに掛かった分は対価として頂きたい。
そこです。
前置きはこの辺にして作業内容にいきましょう。
入庫時の損傷状況です。
ドアは交換ですね。
ルーフサイドも潰れています。
ディーラーさんの見積りは交換ですが、当店では板金修理です。
クォーターパネルも板金修理します。
一番の悩みはロッカーパネル。
まだこの状態ではロッカーパネルモールを外していないので中の様子がわかりません。
ロッカーパネルを交換しなければならない状況だったらクォーターパネルも板金修理では済まなくなり、交換となってしまうので修理代金にかなり差が出てきます。
初期の見積りは部品を外さない状態で予測しての見積りですので、交換しなければならない状況だったとして仮定しての見積りをお伝えしました。
そうするとディーラーさんの見積りより当店の方が高いんです。
ディーラーさんの見積りも見せてもらいましたが、その内容で作業しようと思ったら足りないところが色々とあって項目が抜け落ちていました。
その抜け落ちている箇所を私はしっかり入れての見積りを作っているので当然こちらの方が高くなってしまう。
修理単価自体は当店の方が安いのですが、そりゃ~足りない所があったら単価とか関係ないんですよ。
ディーラーさんに引取りに行った時も担当の方とお話ししましたが、「板金塗装の事は良くわからないんですよね。」とおっしゃっていましたが、経験がないとやっぱりわからないもんですよ。
お客様もサービスの方が見積りをしてくれたとおっしゃっていましたが、サービスの方が見積りを作ってくれたとしても板金塗装の経験が無い人です。
整備については詳しいかもしれませんが、板金塗装に関しては知識不足。
知識や経験が無い人が見積りソフトに頼って見積りを作ると抜け落ちるんです。
いや、見積りソフトが抜け落ちるように作られていると言っても良いかもしれません。
でも担当者さんだって見積りを頼まれれば作らざるを得ないので仕方ないんですよね。
そんな訳もあって初期の見積りは当店の方が高かったのですが、部品を外してみてからの再見積りをしなければどちらに修理を依頼しても最終的に掛かる費用を算出きない事をお伝えして、部品を外すならまず修理を当店にお任せ頂いてそこから費用が掛かる事を承知してもらいました。
正式に修理の依頼を受け作業を開始し部品を外して行くと、ロッカーパネルを交換しなければならないまでの損傷は及んでいませんでしたので、ぐっと掛かる費用も少なくなりました。
少し凹んでいましたが、ロッカーパネルはここだけの板金で済みましたので。
ココが大きく凹んでしまうと板金不可能だと思います。
すごく硬い鋼板を使っているので、引っ張り出そうと思ってもビクともしない。
鋼板が硬すぎて凹んでしまうと直せないんです。
さらに赤ラインのところでクォーターパネルが上に被さっているのでロッカーパネルを交換するとなるとクォーターも交換。
もっと最悪な状況なのは青ラインから前側のロッカーパネルを交換しなければならなくなったら一気に修理代が跳ね上がります。
詳しくは調べてないのでメーカーのサービスマニュアルとしてどうなっているのかわかりませんが、多分途中で切って繋いだらダメなんですよね。
なので見積りソフト上では、交換の前提条件としてフロントガラスの脱着まで入ってきます。
フロントピラーが上に被さり、ロッカーパネルが下に潜る形なので、ガラス外してフロントピラーも交換。
ガラス外したら、カメラの再設定(エーミング作業)も必要。
今回の修理はそこまでの作業の必要が無かったので私の方としてもホッとしました。
初期の見積りでは高かったですが、最終的にお客様への請求額はディーラーさんの見積りよりも10万円程安くなっています。(^∇^)
最初に安い見積りを作っておいて部品外してみたら20万、30万追加で掛かりますとは私は言えないので、「もしかするとこれだけの修理代が掛かってしまうかもしれませんが・・・。」と言った感じでご説明してある意味「覚悟」を決めてもらっています。
掛かってしまうものは掛かってしまいますし、部品をバラしてからの再見積りで修理が安く抑えられる様子なら初期の高い見積りの金額は頂きません。
ちゃんと減額して、作業を行った分を頂いてますから安心して下さい。
ここの部分が一番の問題となっていたので、あとはいつもの様に板金修理を進めています。
いつもの様にと言っても何気に難しいな~と思うところがある訳で、ルーフサイドはプレスラインの上はほんの少し逆アールでやりにくい。
クォーターパネルはホイールアーチ部分がヘミング加工となっているので、思っていた以上の板金範囲になってしまった。
ヘミング加工とは、ドアの端っこの様に表側のパネルが裏側のパネルを巻き込む形でしっかりと折り曲げられている形です。
車高を下げたい人はよく「ツメ折り加工する」といった事もあるのですが、そのツメ折り加工がされている状態みたいなものですかね~。
ツメ折りよりもっとしっかり折り曲げられているのですが。
参考に今入庫中の前の型となります、30プリウスの写真がこちら。
この辺りも現行モデルとなって変わったのですが、一般ユーザーさんは気付いてませんよね。
というか、気にしませんし。
ヘミング加工されていると見た目でも薄いじゃないですか。
薄くなった分強度的には曲がる力に弱いんでしょうね。
見積りの時にはそんなに気にならなくて気付いてなかったのですが、内側にグニョって曲がる感じで入り込んでました。
なので給油口のフタの下まで歪みが出ちゃってて・・・。
車の為にもお客様の為にも、そして自分の為にも交換したくなかったので板金修理で終れて良かったです。
交換するとなるとヘミング加工するための工具買わなければならなくなるし、それが5万円位する。
次に使う機会がいつくるかわからないのに5万の工具を買ってしまうと作業工賃が飛んでいく。
ハンマーとドリーで曲げていくのもありかもしれないけど、ホイールアーチは確実に全面パテ処理必要になるし・・・。
我ながら、板金技術持ってて良かったとホントに思いました。(汗)
ここから先は詳しく書く事がそんなに無いと思うので一気に進みます。
パテ処理。
サフェーサーの塗装。
新品のリヤドアのシーリング作業。
サフェーサーの塗装。
フロントドアも取外して並べて塗装。
リヤドアはこの時に表と裏を塗装します。
フロントドアはスタンドを引っかける穴の良い位置が無かったのでこんな斜めな状態での塗装になってますけど。
続いてクォーターとルーフサイドの塗装。
あとは外した部品の組付けと磨き作業を行いほぼ完了。
最後に診断機繋いでエラーコードのチェックと消去です。
ドアを外して車を動かすとメーターパネルにこの様な表示が3つも出ました。
部品を全て組付け終わると表示は消えてしまうのですが、念の為にチェックします。
診断の結果。
一つエラーコードが見つかりました。
これを消去してもう一度確認。
すべてOKになりました。
だんだん板金と塗装だけでは修理が完結出来なくなってきています。
なので板金塗装と言うよりは車体整備と言う方がしっくりくるような気がしますね。
全ての作業が完了して納車前です。
納車の際にも「まだ時間掛かっても良かったのに。」とおっしゃって頂けましたが、だいぶ遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
最初の見積りの金額にとらわれず、私を信頼して修理を任せて頂きありがとうございました。
50プリウス、修理するとなるとなかなか大変ですね。
最後に同業者さん向けに写真を付けときます。
この型のプリウスから採用された溶接方法。
レーザースクリュー溶接。
通常のスポット溶接と併用しているみたいですが、これを再現しようと思っても難しい。
見た目よりも溶接強度に重点を置いての溶接になりそうです。
ちなみに確認した範囲ではクォーター側ではシーリングで隠れている部分にしかレーザースクリュー溶接はされていないのでは?といった感じでした。
どんどん車の造りも変わってしまって修理する側がついていくのも大変ですが、頑張っていきましょ~!
そして一般ユーザー様のお客様には、負担が増えてしまう事も承知して頂きたいものです。
車は急速に進化して燃費の向上や安全性の向上など、飛躍的に便利になってきました。
そして事故に遭う、事故を起こしてしまう事も減ってきています。
ですが、そんな車が事故により修理することになったら昔のような感覚では直せない直らないのです。(>_<)