恋は二度目のアネモネ -17ページ目


なつかしい。
女の名前の、サウンドトラック。
毎日が夢のようで、
いろんなことを
まだあまり知らなかったあの頃。

痙攣するまぶたに合わせて、
吐きだせなかった呼吸を、吐く。
のどの奥で、
アセスルファムカリウムが甘いよ。
どんどんわたしを甘くして。
どろっどろに甘やかしてほしいのだ。


ケミカルな眠気に翻弄されて、
頭がぼうっとする。
あいかわらず、
副作用がつよいの。
揺れる指先を、
きみは丁寧に撫でる。
記憶はどんどん上書きされて、
少しずつ変身する。
わたしはもう、
あなたの知らないわたしかもしれない。

 






海みたい。
海を、見たい。 
気管支にひそんだ悪魔が
ずっと悪さしてる。
こんこん、
咳がとまらない。
罪と罰ですか。


ラジオから流れる東京絶景に
ちょっとだけ癒される。
どんな絶景も、
あなたなしじゃ
ただの絵画なのにね。

ここに。
わたしがここにいるのは。
あなたと一緒にいたかったからだよ。
指先がふるえる。
副作用が強いの。
どんなときめきも、
わたしを泣かせたりはしない。

つめたい体温が、
もうすでになつかしくて、
泣くかわりに、笑ってしまう。
きみに会いたい。












きみの肌の表面に、
睡魔をもぐりこませる。
海の中にいるみたいに、
揺れるの。
現実と夢のはざまを
ゆらゆら。
気持ちよくて、
だめになる。

やわらかい毛細血管が、充血する。
心臓の見えない部分から、
じんわりと熱くなる。
洋服のボタンの薄さや、
親指のかたちや、
ためいきで、
この感受性は、
いとも簡単にあふれてしまうよ。


静かなバスルームで、
わたしひとり。
こんなに未熟なまま大人になってしまったから、
きれいなことしか考えられない。

行方知れずの彼は、
また細胞をなではじめる。

人生はタイミングがすべて。
わたしはゆっくり開いたあと、
きっとまた、
何もなかったみたいに閉じていくのだろう。

内部の海へ。
わたしを泳ぐの。







だんだんだんだん、
だんだん、
別のいきものになってしまうよ。
だんだん、
だんだん、
無遠慮に変化する。

こんにちは。
ミスコンチネンタル。
脳みそにつまったコンクリートが、
わたしを困らせるの。
言葉なんて、もう出てこない。
眠って起きて、って
そんな当たり前だけで精一杯だよ。

体だけでどこまでいけるか、
試してみたいの。
不躾な感情が、この世界を滅ぼすまで。

自分では氷解できないとこが凍ってんの。
わたしは未熟者だから、
そんなにいろんな方法は知らない。

きみはどんな感じで、
彼女に恋してるんだろう。
別に知りたくはない。

あなたは。

正しいことなんて、
けして口にしないで。









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黒い楕円を割ると、
珈琲豆のように見える。
なんという大発見。

今日のお弁当は昆布のごはんと肉じゃが。
人間力高めだし、お腹いっぱい。
今日は今日しかこない。
だからといって、
精一杯生きたりしないの。
理性とも感情とも、
上手に付き合っていたいだけだ。


あなたが眠れないのはね、
ちゃんと理由がある。
シンプルで、たやすい。
必要なものが足りないだけだよ。