傘の中で、思い出はいつも優しい。去年食べたすいかの味は、もうすっかり忘れてしまった。きみの手のひらや、雨の馨も。もうすっかり忘れてしまったの。8年ぶりに、傘を買った。雨でも雪でも、何でも降ればいい。だけどそうやって憂鬱が減るほどに、わたしはますます平凡になる。足の先、肩の先、胸の真ん中がじわりと、濡れてるくらいがちょうどいいのだ。ああ水気がたりない。傘なんて買うんじゃなかった。久々にテレビをつけてみたけれど、つまらなくて消してしまった。世間はオリンピックで大騒ぎをしている。変なの。