月が欠けてる間に、物語をすすめたい | 恋は二度目のアネモネ



小さな部屋から一歩出た瞬間から、
きみはとっとと日常へ帰ってしまう。
くすぶった理想と憎しみをわたしに抱いて。
恋は幻のきらめき。
忘れないように書いておいてね。
わたしの好きなところ。
わたしが好きなところ。
いつだって自分勝手でずるいよね。
わたしもきみも、自由に生きてる。


さあ、書きなさいと言わんばかりの、
めまぐるしい日常。
登場人物の名前を覚えたら、
あとは喜んだり悲しんだりして、
それを練って固めて吐き出すだけだ。

左手の中指から女に戻ったわたしの体は、
あらゆることが前とは違う。
肌と胃はもちろん、味覚さえ変わってしまった。
模様替えだ。
あなたは気づいていない。
わたしが別の生きものになりつつあることを。
あなたは何にも知らない。

でもわたしも知らない。
わたしから一体何が出てくるのか。
言葉じゃない。
言葉じゃない何か。
それを書きとめたい。

産まれそうで産まれない。
くるしいの。
胸の真ん中でつっかえてる。
ピュアでグロテスクな何か。
もっとぐちゃぐちゃ引っ掻きまわして、
頭をおかしくしなきゃだめだ。
足りないままでいたい。
足りてしまうと、終わってしまう気がする。


今わかった。
わたしの心は
月とおんなじ形をしている。
欠けたり満ちたりして、
たいそう曖昧だ。

満月がこわいの。
1秒にも満たない完全体。
満ちていく過程と、
欠けていく過程でしか、
存在できないものがあるんだよ。