毎日、浅い眠りを繰り返してる。


被害が大きかった市役所方面の片付けを手伝いに行ったり。


会社に出勤したり、髪を切りに行ったり。


日常と、非日常を繰り返しながら生活している。


相変わらず、ウチは床下浸水中だし。


また雨が降り続いてるし。


いつもの通勤ルートは通行止めだし。


ライフラインの復旧が、予想よりも早くて。


今はどこに住んでるの?


と聞かれる度に、フツーに部屋にいますよ?床下浸水中ですけどっ。


と答えるあたしは。


さぞかし丈夫な人間に見えるんだろうな。


カラダもココロも限界をこえていて。


無表情、無感情でいるのが一番ラクだ、なんて思う。


まだ、どこか理解できていない状態なんだと思う。


そんな状況すら、忘れる前に記録しようとしていて。


感情の整理の為にアウトプットしているのかもしれない。


カラダもココロも”あたし”以外のもので動いているみたい。


そんなこと、考えてる。







結局、眠れないまま朝になった。


また大渋滞のなか部屋へ。


床下に浸水しているのを確認。


2センチくらいの水嵩で、泥は混じってなかった。


周辺の道路の様子や、景色を確認しながら、テレビで見ていた以上の恐怖を感じた。


避難所が孤立していたり、報道されていない場所の被害が大きいことを知る。


非常時に本当に必要な情報をくれるのは。


テレビでもネットでもなくて。


結局は地元ネットワークだった。


通行止めの状況、ライフラインの復旧状況、被災状況など。


あたしが知りたいことは、すべて市内に居て無事だった人たちが教えてくれた。


報道ってなんだろう、ネットの情報ってなんだろう。


そんなこと、考えてた。






結局、眠れないまま朝になった。


テレビでは、変わり果てた近所の光景が流れてて。


だけど、ウチの周辺の様子は映らなくて。


片付けの道具の買物をしてるところに、会社からの連絡。


もしかしたら、流されてないかもしれない。


もっと川沿いの家が無事だって連絡が入った、と。


そのまま部屋に向かうも、大渋滞にはまり、夕方到着。


建物がそのまま残ってた。


周辺も、そのままだった。


震える手で、玄関のカギをあけて。


一滴の水も入ってない部屋に膝からくずれた。


実家と会社に連絡いれて。


すぐに必要なものと、パソコンを車に積み込んで。


大渋滞にのまれながら実家にもどった。


あたしは、一生分の運を使い果たしたかもしれない。


きっと、宝くじは当たらないだろうな、なんて。


そんなこと、考えてた。




あの日、夜勤に備えて寝ていたあたしは。


外から聞こえたサイレンで目覚めた。


連日の大雨で冠水し始めた国道の状況報告を思い出し。


ネットでニュースを見たあたしは、自分の声で覚醒した。


避難指示って…逃げろってやつだ。


着替えもそこそこに、財布とスマホ、充電器だけ持って車に飛び乗った。


一刻も早く川から離れようと、市外に向かった。


橋の上から溢れそうな川を見た。


そのときはまだ、水が引いたら部屋に帰って寝なおそう、なんて考えてた。


店の駐車場で、職場からの電話を受けた。


会社の状況を聞いて、それでもまだ、どこかで部屋に帰る気でいて。


あちこちから入る連絡。


堤防の越水、道路の冠水、通行止め。


帰ってこない方がいいよ、っていうアドバイスは。


堤防の決壊とともに、危ないから帰ってくるな、動けるうちに実家に帰れ、っていう指示に変わり。


状況が理解できないまま、車を走らせた。


実家に帰るなり、両親と弟が青い顔して出迎えて。


テレビの画面には、見慣れた近所の変わり果てた光景が映ってた。


あぁ、ウチはもう流されたな。


そう、思った。


市内に残った人たちの無事を確認しながら。


明日からどうやって生きてこうか、そんなこと考えてた。






三年目の今日も無事に終えられそうで。


朝からずっと、あの日のことを、あれからのことを考えてた。


毎日楽しいことばっかじゃないし、むしろしんどいことの方が多いけど。


それでも、あたしは、今日も生きてる。



未来を想像したり、明日の約束をしたりするのは。


自分が存在しているのかどうかさえ不確かなのに。


それでも、朝が来ることを信じてるからだってこと。


焦りも、不安も、憤りも。どうしようもないってわかってるのに泣きそうになるくらい寂しいキモチも。


対に存在する誰かがいるから感じることだってこと。


そんなこと、考えてた。



進んでる方が未来なのです。


そう、信じているのです。


最後に残る感情が幸福感なら、きっとその過程も楽しいでしょう。


すべてのことを楽しめる自分自身で在れますように。


そしたらきっと幸福なんじゃないだろうか。


そんなこと、考えてた。




明日も笑ってすごせますように。


みんなが笑ってくれますように。