あの日、夜勤に備えて寝ていたあたしは。
外から聞こえたサイレンで目覚めた。
連日の大雨で冠水し始めた国道の状況報告を思い出し。
ネットでニュースを見たあたしは、自分の声で覚醒した。
避難指示って…逃げろってやつだ。
着替えもそこそこに、財布とスマホ、充電器だけ持って車に飛び乗った。
一刻も早く川から離れようと、市外に向かった。
橋の上から溢れそうな川を見た。
そのときはまだ、水が引いたら部屋に帰って寝なおそう、なんて考えてた。
店の駐車場で、職場からの電話を受けた。
会社の状況を聞いて、それでもまだ、どこかで部屋に帰る気でいて。
あちこちから入る連絡。
堤防の越水、道路の冠水、通行止め。
帰ってこない方がいいよ、っていうアドバイスは。
堤防の決壊とともに、危ないから帰ってくるな、動けるうちに実家に帰れ、っていう指示に変わり。
状況が理解できないまま、車を走らせた。
実家に帰るなり、両親と弟が青い顔して出迎えて。
テレビの画面には、見慣れた近所の変わり果てた光景が映ってた。
あぁ、ウチはもう流されたな。
そう、思った。
市内に残った人たちの無事を確認しながら。
明日からどうやって生きてこうか、そんなこと考えてた。