ブックレビュー「最果てのブルートレイン~トラベル・ミステリー傑作集Ⅳ」 西村京太郎 | ネコのひとり言

最果てのブルートレイン
以前はたくさん読んでいた西村京太郎さんのトラベル・ミステリー。

 

久々です。

去年南信州の旅で飯田線に乗ってから、「愛と死の飯田線」をもう一度読みたくて、借りたのが「最果てのブルートレイン」。

 

「傑作集」とあるように、本書には3編が収められています。

 

 

 


■最果てのブルートレイン ★3

急行「天北」

 

札幌~稚内間を走る急行「天北」。

 

急行「天北」

 

去年妻と旅行した思い出の地を訪れるため、北海道へやってきた矢代。

 

彼が乗車した下り急行「天北」車内で、突然現れた女性から助けを求められた。

 

彼女はすぐに立ち去ったが、その後気になった矢代は車内を探したが見つからない。

 

その彼女は上り急行「天北」の車内で殺されているのが発見された。
だが、持っていた切符は下り「天北」用。

 

下りに乗車したはずの彼女が、どのようにして上り車内で殺されたのか・・?

■余部橋梁310メートルの死 ★3.3

余部橋梁310メートルの死

 

余部橋梁は山陰本線・鎧駅(よろいえき)と余部駅(あまるべえき)間にある、長さ310m、高さ41mの鉄製の橋。
※現在はコンクリート製の橋に架け替えられている。

余部鉄橋マップ

 

ある日、鉄橋の下で男の死体が見つかった。

 

自殺・他殺・事故死で捜索は続く中、捜査線上に3人の容疑者が浮上。

 

彼らはどう関わっているのか・・?

ラストシーンは「刑事コロンボ」の名作「別れのワイン」に似て、完全犯罪をもくろむ犯人の自信が崩れる瞬間が面白い。

■愛と死の飯田線 ★3.5

愛と死の飯田線

 

同僚の女性が自殺した原因となった男(青柳、羽田)を殺害する、二人のOL(みどりと夕子)の復讐劇。

 

この二人と諏訪湖のペンションで知り合った久我は、翌日飯田線で辰野駅から豊橋駅まで乗車することになった。

 

疲れているため隣の車両で寝たみどり。
この間久我は夕子と楽しい一時を過ごし、彼女を好きになった。
一方、名古屋では青柳が殺されてしまう。

 

飯田線マップずっと飯田線に乗車していた二人が殺人に関係するはずがないと思っている久我だったが、十津川警部の粘り強い捜査と理詰めで説得力のある話し方に、考えが揺らいでしまう。

 

果たして飯田線でどんなトリックがあったのか・・?

十津川警部が久我に証言を変えさせるために言った言葉が印象的でした。
「私が家内のために偽証するのは、家内が私を愛していることを、知っているからですよ。夕子も、あなたを愛しているんですか?」

 

最後に夕子が久我に言った、「人殺し」という言葉が恐ろしい、。

愛は残酷だ。

 

西村京太郎作品西村京太郎さんのトラベル・ミステリーはどれも面白い。
思わず夢中になって最後まで一気読みしてしまいます。

 

また、ミステリーものはアリバイ崩しが最大の見どころですが、読む側も一緒に推理しながら読めるのが醍醐味です。

特に「愛と死の飯田線」は、去年飯田線に乗車したばかりだったのでワクワクドキドキ。

 

残念ながら利用した七久保駅は出てきませんでしたが、飯田線の駅間距離が短いことや、列車のスピードが遅いこと、辰野から豊橋まで7時間もかかることなど、これらがトリックに関係していることが実感できたのが収穫でした。