ブックレビュー「ハイジが生まれた日」 ちばかおり著 | ネコのひとり言


 

副題「テレビアニメの金字塔を築いた人々」とあるように、今でも根強い人気のある「アルプスの少女ハイジ」が生まれるまでの過程と、制作に関わった人々の足跡を追った渾身ドキュメント★4

著者のちばかおりさんは1962年福岡県柳川市生まれで、海外児童文学およびテレビアニメーション,とくに「世界名作劇場」シリーズを研究、日本ハイジ児童文学研究会に所属されているそうです。

 

 

ハイジと言えば演出の高畑勲さん、作画の小田部洋一さん、場面設定の宮崎駿さんの3人が特に有名ですが、本書ではプロデューサーの高橋成人さんをメインに、編集の瀬山武司さん・音楽担当渡辺岳夫さん・撮影黒木敬七さんなど、ふだんあまり取り上げられることのない人たちにまでスポットを当てているのが特長です。

主題歌にまつわるエピソード、撮影はその頃一般的だった16ミリではなく35ミリで行ったこと、モミの木の音作りの苦労など興味ある裏話もたくさん出てきます。

また放映開始後、こんな”クレーム”がよせられたことも紹介されています。
山小屋で暮らす生活の中で、おじいさんが炉端でチーズをあぶるシーン。

 

 

チーズがゆっくり溶けて丸みをおび、とろりとつやを出す描写を見た多くの視聴者から、お店で買ったチーズをいくらあぶっても思うように溶けずに焦げるばかりだというのです。
その頃の日本で売られていたチーズの大半は、プロセスチーズだったことが原因だったようです。
時代を感じさせますね・・。

 

スポ根ものやロボットアニメなどが数多く作られる時代背景の中、ハイジの淡々とした日常を描いたストーリーは、日曜夜7時半という家族が一緒に過ごす団らんを、おだやかであったかく、ほのぼのとした雰囲気にしたことでしょう。

ハイジの成功は制作に関わったすべてのスタッフ一丸のチーム力と、本物を作りたいという方向性を全員が共有できていたことが大きかったと思います。

劇場映画なら「太陽の王子ホルスの大冒険」、テレビアニメなら「アルプスの少女ハイジ」。
これらはまさにアニメ草創期の金字塔であり、ターニングポイントとなった作品と言えるでしょう。

 

 

そして、ここから育ち影響を受けた数多くのアニメータがその技術を継承発展させ、世界から注目される現在の日本のアニメを作って来たことを考えるととても感慨深いです。

 

影響を与えた人の一人が高畑勲さん。

朝ドラではいっきゅう(坂場一久)さんがその役柄なのですが、麻子さんが立ち上げたアニメ会社で、きっとハイジに相当するアニメを演出するのでしょうね。

今後の展開が楽しみです爆笑