ブックレビュー「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」 柴 那典(とものり) | ネコのひとり言
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よほどの世間音痴でなければ、たいていの人は初音ミクの名前くらいは聞いたことがあると思います。
 
しかし、タイトルにあるように世界を変えるような存在だったかなぁ・・と思う人は多いはず。
わたしもその一人です。
 
著者が言うには、初音ミクは三回目の「サマー・オブ・ラブ」とのこと。
 
ロックやクラブミュージックの歴史では、かつて2回の「サマー・オブ・ラブ」と言われる時代があり、どちらもカウンタカルチャとしての新しい文化を生み出し、ムーブメント(社会現象)となった熱気に満ちた時期だったそうです。
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1967年からのヒッピーカルチャ、1987年からのクラブミュージックの勃興が20年周期で巻き起こり、3回目が2007年に発売された「初音ミク」であるというのが著者の見解です。
 
【カウンタカルチャ】
旧来の保守的でブルジョア的な文化に対し、旧態依然とした価値観を根本的に批判する新たな文化。
 
初音ミクとは、ヤマハが開発したボーカロイドという歌声合成技術を使って、クリプトン社が制作・発売したボーカル音源ソフトとそのキャラクタです。
 

 

 

 

歌詞と音程を指定すれば、初音ミクが歌を歌ってくれるという優れものです。
これまでもコンピュータに歌わせる技術やソフトはありましたが、ボーカロイドはより自然に発声するのがミソ。

 

やっと実用に耐えうるレベルになったと言うことでしょう。
 
シンセサイザーのマエストロ富田勲氏も本書の対談で、「初音ミクは作曲者自身が理想の歌手に育てることができる」と絶賛しています。
 
イメージ 5その結果、多くの人が初音ミクのために曲を作ったり歌わせたり、また別の人がその曲にアレンジを加えて歌わせたり、初音ミク動画を作成したり・・と、”同人音楽”的な広がりができてきました。
 
そんな世界的な広がりを、著者は「サード・サマー・オブ・ラブ」と定義づけているようです。
 
本書は初音ミク発売までの、関連する日本の音楽シーンの経過と系譜が時系列によくまとめられており、非常にていねいに分かりやすく解説され、興味深いです。
★4