ブックレビュー「深海の使者」 吉村昭 | ネコのひとり言
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引き続き吉村作品。
 
ブックオフにもなかったのでアマゾンで中古品購入。
★3.5
 
タイトルからはイルカかサメの物語かと思ってしまいますが、実際は太平洋戦争末期に、日本から同盟国ドイツに派遣した海軍潜水艦の行程が克明に記されたドキュメンタリ小説です。
 
ドイツは軍備を維持・拡張させるため東南アジアからの原材料入手、日本は最新の軍事技術入手という双方の思惑と利害が一致したものの、制空権、制海権の大部分を連合国側に抑えられていたため、唯一の移送手段だった潜水艦がその任務をになったようです。

 
しかし、1942年から1944年にかけて日本からドイツに送られた5隻の潜水艦のうち、伊8号のみが往復に成功。残り4隻は往路や復路で撃沈され、その任務を果たせませんでした。
 
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ショーン・コネリーの「レッドオクトーバを追え」を観てから潜水艦に興味を持っています。
 
何と言ってもほとんどが海に潜っているため、太陽は見えず時間経過もよく把握できず、飲食や運動は制限され入浴もできない、そんな生活が何日も何ヶ月も続く閉鎖された狭い空間。
想像しただけで発狂しそうです。
 
本書でも3度の食事が時間経過を体感する唯一の方法だった、などと描写されています。
 
イメージ 3 この小説を読んで初めて分かったこと。
 
1)潜水艦というのは港を出たらほとんど潜ったまま目的地へ行くのかと思っていたのが、実際はそうじゃなかった。
対戦哨戒機など敵に見つかるのをふせぐため昼間は潜水し、その可能性が低い夜間に浮上して航行していたようです。
これは浮上した方が速度が速いという理由もあるようです。

 
2)あまり長い時間潜れない
艦内の酸素が少なくなるためその補給や、電気の充電の必要から20時間くらいに1回くらいは浮上する必要があった。
 
3)潜水艦自らは発信しなかった
敵側に常時電波を傍受されている関係で、居場所を特定されないように緊急時以外は発信をやめていた。
 
4)日本の潜水艦は優秀だった
伊二百一型潜水艦は水中航測速が水上航速を上回り、戦後主要国の潜水艦の原型となった世界初の新鋭艦だった。また、伊四百型は驚異的な航続距離を持ち、陸上攻撃機三機を搭載できるなど、アメリカ海軍を驚かせた。
 
潜水艦っておもしろい!
「潜水艦」(学研刊)と併読すればより分かりやすい。
 
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