「僕の足じゃないから。」と笑って言った、きみを思い出す時は決まって体育館の前にいる剣道着姿。

職員室の窓から見える体育館の一番端の入口は、暑さのためかいつも開放されていて、生徒達が入れ替わり四角いかげから出たり入ったり。

館内で練習場所を得られなかったのか、きみはその入口近くコンクリートの通路で練習を始める。

さも緊急の用事があるように話しかけてきた友人とふざけ笑う姿は、神様から余分に愛をもらっている、そう見えたよ。


体育大会の400メートルリレーでトラックを走ってきたきみは、ゴールした途端 ぎこちなく倒れたね。

その時やっと、それまで無意識のうちに聞いていた音の正体が分かったよ。

グラウンドの上でカチャカチャと義足をはめ直しているきみに、そんなに走ったら足壊れちゃうんじゃないの、と級友。

「僕の足じゃないから。」と笑って答えたきみ。

きみを思い出すたびに押し寄せる、人の心の強さと脆さへの愛おしさを 一体どうすればいいのだろう。


事故で両足を失って、そんな風に笑えるようになるまでに いくつの眠れない夜を過ごしたの?

そんな風に笑ったらいけない、私はきみに憧れてしまう。


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上の文はもうずっと前のものなのですが、

先日、子供のこと(続き) という記事にチラリと書いた男の子の話です。


その記事では、

 

自分に無い物、失ったものにばかり目を向けていると、ひとは動けません。

私はそのことをある中学生の男の子から学びました。


という書き方をしましたが、彼が教えてくれたのは、

嘆いても当たり前なほどの不幸に遭っても、今あるもの、出来ることで人生を愉しむこと。

自分に降りかかったことを言い訳にしない生き方。

笑い飛ばし、むしろ周りを明るくするような強さと優しさ。


ああ、そういえば、彼ももう三十路にはなっているはず、

夫さんより年上なんだなぁ。なんだか不思議です。

それでも思い出す彼の姿は中学生で、体育館の前の通路。

そこから、グラウンドの空気にまで回想が進むたび、思い出に泣かされてしまうのです。


深夜に涙流しながらブログ書いちゃった

 

 

 

 

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