「小さいおうち」




昭和11年、山形から上京したタキは
東京郊外の平井家に女中奉公する
玩具会社に勤めるご主人
美しい奥様、時子
5歳の恭一坊ちゃんのお世話をしながら
穏やか生活を送るが

ある年の正月
新入社員、板倉正治が
平井家を訪れたことから
奥様と板倉は恋愛関係に

戦争の影が見えはじめた当時
この恋愛事件で
タキはある秘密を抱えることになるが…


ネタバレという言葉は
この映画にふさわしくないので
秘密を明かしてしまうと…


*知りたくない方は読まないで下さいね*

………………  📙📚✉️      ……………              
       

出兵のため東京を立つ板倉の下宿で
最後に会おうとする奥様
二人の関係は噂になりつつあったので
タキは家に来てもらう手紙を
書くようにすすめます
自分が届けると

でも、届けなかったんです


晩年のタキは大甥の健史にすすめられ
大学ノートに自叙伝を書きますが
届けなかったことは記していません

ただ、板倉さんはいらっしゃらなかった
としか書いていないのです

もう、時効で
告白してもかまわないのに


平成まで生きたタキは急逝し
健史に自叙伝と奥様との写真
渡さなかった手紙を残します
遺品をどうしてくれと言い残す訳でもなく

本当は、
どうしてほしかったたんだろうか?

実は、
どうだったんだろうか?

奥様と板倉のことを悩んだタキは
奥様の女学生時代からの親友睦子さんに
打ち明けます

「時子さんは女学生の頃も
とても綺麗だったのよ
男も女も好きになる
独占したいくらいに」

これは睦子の本音で性別を超えて
好きだったんでしょう

では、タキは?

健史に板倉のことはおばあちゃんも
好きだったんでしょ?
と向けられても、タキの返事は

「発想が貧困だねぇ」  

本当はどうだったんだろう?


タキの死後、
社会人になった健史は
板倉が後に有名画家になったことを
知ります

板倉の作品「思い出の家」には
赤い三角屋根の家と
その前に立つ二人の女性の姿

そして、
絵がきっかけで消息がわかった
恭一坊ちゃんに会いに行くことと
なります


若き日のタキに黒木華
古風なお顔が役にピッタリで
ほとんど台詞はないのに
佇まいで魅せてくれます

晩年のタキは倍賞千恵子
淡々としたなかにも思いを滲ませて
さすがです

奥様、時子に松たか子
品がよく、お着物も似合って
美しかった


そして、
もうひとつの主役

赤い三角屋根の"小さいおうち"
平井家が素晴らしい

玄関を入ると真っ直ぐに廊下
玄関横に洋間の応接間
和室の茶の間、寝室と続き
サンルームまである!
和洋折衷の昭和モダンな住宅で
蓄音機や陶器の置物が飾られ
紅茶の茶器も洒落ています

当時の東京のサラリーマン家庭では
女中さんがいるのは普通だったらしく
これで、中流家庭というのが
信じられない!

調べると
平井家の一階の見取り図があり
パンフレットに載っていたそうです
二階はどうなってたんだろ?

そうそう、
家事のプロ、タキがつくる
お雑煮、とんかつ
美味しそおぅ😋


「この家が大好きでした」とタキが記した
"赤い屋根の小さいおうち"は
空襲で焼け
平井夫妻も亡くなってしまいます

空襲の場面では
空爆が降り、火花とけむり
微かに聞こえる叫び声 
なす術なく亡くなった人々が
たくさんいる現実に心が痛かった



自叙伝を遺して
何も話さず旅立ってしまった
タキの真意は分からないまま

真相は、

そうなのかもしれないし
そうではないのかもしれない

セピア色の曖昧さが
この映画の良いところで
さまざまに思いを巡らさせられます