タイトル「北海道畜産公社・十勝工場、見学報告」
AW班・佐藤由希子
8月30日に(一社)アニマルウェルフェア畜産協会の企画で
と畜場の見学会があり、参加してきました。
畜産公社では毎年見学会をされているんだそうです。
こんなにオープンなと畜場はめったにないそうなのですごいと思います。
畜産公社には第1~第3まで3つの工場があります。
釧路にあったと畜場がなくなったため
十勝以外にも釧路や阿寒方面からも搬入されてくるので
一日で牛は約400頭、豚は約200頭の作業をするそうです。
多くのと畜場では1工場で100頭/日くらいとのこと。
帯広食肉衛生検査所管内の畜産公社の3工場を含めた
4つの工場だけで、全国の一割を担っているのだそうです。
3工場それぞれに、係留場所があり、扉を経て、と殺する部屋、
その先に解体レーンが続いています。
係留所はすべてフリー(繋がない)で
同じ農場の動物たちは数頭ずつ、同じ仕切りの中で過ごします。
午後に着いた動物たちは翌日作業になります。
長ければ20時間ほど待つことになるでしょうか。
と畜がない日の前日は動物の搬入もありません。
「水を飲ませると肉質が落ちる」といわれていたため
飲水設備がない、または、あっても使われていない係留所も多い中、
畜産公社では3つの係留所すべての飲水設備が稼働しています。
なお帯広畜産大学によれば、
飲水しても肉質は落ちないどころか、ストレス軽減によって
肉の歩留り(※)が向上したという研究成果が出ているそうです。
※歩留り=体重に対し肉として残せる部分の割合。
畜産公社では対米輸出用の加工も行っており
それは2016年に新設された第3工場で行うとのことです。
第3工場は新しいこともあり天井が高く、照明が明るかったです。
作業に際しては様々な規則がありますが
輸出用となるとさらに設備などの条件が厳しく定められているんだとか。
たとえば
・給水および給餌
→けい留中の牛には給水し、24 時間以上けい留する場合は給餌を行うこと。
・係留スペースの広さ
→けい留所は牛専用に1日のとさつ及び解体処理する数に応じた広さを有し、生後1年以上の牛は1頭ごとにけい留できる区画が設けられていること。
・動物の扱い方について
→とさつペン室へ牛を追い込む際の牛に与える刺激、苦痛等は最小限なものであるこ と(電気刺激棒などは極力使用しないなど)
→動物が汚れていて洗浄する場合は湯温で行う。
・係留所の明るさなど(環境)
→生体検査所は生体検査を行うための十分な広さを有し、検査に必要な器具、計量及び保定に必要な設備が設けられており、照度は110ルクス以上であること。
(110ルクスは外灯の下くらい。畜産公社の第3工場は800ルクス=居室の蛍光灯くらいだそうです)
など定められており、
第3工場はその基準に沿って建設されたそうです。
5つの自由が守られていますね。
すくなくとも数時間を過ごす最後の空間で、
少しでもストレスのないように過ごしてほしいと思いました。
係留所を出ると、豚は電気で、牛はエアガンのようなもので眉間を撃ち
気絶したあとに頸動脈を切って放血させます。
解体レーンは2階にある廊下の窓から見学しました。
上から牛を吊るすので、2階相当分の天井の高い
作業場になっており、ゆっくり動くレーンでは
・後脚と臀部の皮をはぐ
・乳房を切り落とす、
・脊髄を吸取り除去(BSE対策)
・内臓一式を取り出す
・巨大なバンドソーを操り肢体を半分に割る、など
分業になっていて、それぞれの作業者の方がよどみなく動いていました。
一つ一つが重労働のように見えました。
そして取り出された内臓は食肉検査員(獣医師)がチェックし
病気の部分は廃棄にするなどの判断をします。
残念なのは、健康な部分でも需要がないと廃棄になるそうです。
見学会の参加者は17名で様々な職種の方が来ていました。
ホテルのシェフ、教育ファームの方、
女子中学生は夏休みの自主課題でAWを調べているとのことでした。
毎日の食卓にのぼるお肉は
農場から食卓までの間に様々な場所を通っています。
その過程にもAWに配慮してくれる場所があり
心を寄せてくれる人がいることを、
いただく側としてもっと知りたいと思いました。
畜産公社の皆様、AW畜産協会の皆様、
ほんとうに貴重な機会をいただき、ありがとうございました。