NDNは「思いやり卵」というネーミングで2014年から鎌田養鶏とコラボして、1パックにつき50円が動物愛護活動に寄付される卵を譲渡会などで販売しています。8月6日、久しぶりに柏崎市にある農場を見学させていただきました。





鎌田養鶏は、日本で最初にエンリッチドケージを取り入れた養鶏場です。エンリッチドケージはケージの中に複数の鶏を入れる方法で、EUでは唯一認められているケージ飼育です。日本ではほとんどの採卵鶏がバタリーケージという大変狭い金網のケージに1羽か2羽入れられています。中越沖地震での被災をきっかけに、どうしたら差別化が図れるか考えて、アニマルウェルフェアにたどり着いたそうです。バタリーケージと、ケージフリーの平飼い。その中間はイメージしにくいと思います。私たちは、アニマルウェルフェアを学ぶ中では、当然、ケージフリーを考えますが、経済動物としてのバランスの中での考えを包み隠さず伺うことができました。

2012年に5棟、2019年に2棟の鶏舎を改築して、全棟エンリッチドケージで5万羽を飼育しています。これは養鶏の規模としては小規模に当たりますが、決して小さな養鶏場ではありません。衛生面では農場HACCPを取得。追加の維持管理だけで年間600万円ほどアップとのこと。ケージはドイツから輸入して、通常は3段から4段で使うところを鶏の健康管理をしやすくするために2段にしています。120日で産み始めて約14、15ヶ月で廃鶏にします。近くにと畜場がないため、新発田または県外まで運んでいるそうです。鶏糞と食品残渣を使ったリサイクル事業で、汚泥肥料などを作っています。

一羽当たり750平方cmほどのスペースを与えられており、巣の代わりにオレンジ色の仕切り版と、金属製の止まり木が入っています。これは、鶏の本能である「止まり木に止まる」「巣作りをして卵を産む」という2つに配慮しています。しかし、砂浴びの本能は満たされない点が平飼いとは違います。1つ残念だったのは、導入時に床面に使っていた保護マットが外されて金網になっていました。これは食品であることを優先させて、卵の汚染対策で変更したそうです。とはいえ、バタリーケージではよくある脚の裏の炎症は見られないとのことでした。また、くちばしの先端を切るデビークは仕入れの際の1回です。(農場によっては2回切る場合もあります。)



多くの農場では採卵率が下がると餌や水を減らしたり絶食させる強制換羽を行っていますが、ここではしていません。暑さ対策では、クーリングパド2.という冷却システムを使っていて、当日も心地よい涼しさでした。水を撒くなどミストで放熱する方法では鶏舎が湿ってしまいますし、扇風機を回すだけだと、この時期は暑さで死ぬ鶏も出るそうです。餌は1日6〜7tの輸入小麦を中心に使っていますが、今年に入って倍以上値上がりして大変だとおっしゃっていました。







鶏舎は清潔で臭いもしませんでしたが、ワクモなどの寄生虫対策はETDを使っています。寄生虫は雛の導入時に入ってしまうことがあるそうです。今は5万羽ですが、直販が増えて利益率が向上すれば、ゆくゆくはケージの中に入れる鶏の数を減らし、余裕を持った飼育をしたいそうです。加工品のスイーツも販売しているので、お近くの方は直売場に行ってみてはいかがでしょうか。また、冷凍のスイーツも開発しており全国にネット販売も計画しているそうです。自宅では高齢のダックスを飼っていて、お店の前には無料のドッグランも整備しています。動物が好きで、犬だったら具合が悪ければ獣医に連れて行くが、鶏はそうではない、経済動物として思うところはあるとおっしゃっていたのが印象的でした。このようにオープンに対応していただける農場は多くはないです。貴重な機会を大変ありがとうございました。

*直売所では、10個入りは全て紙パック、それより多いと、リサイクル可能なカゴでの販売もしています。今でいう脱プラの取り組みを10年以上前から行っています。