イタノトモミから呼び出され、マツイレナは乃木坂学園にやってきた シマザキハルカをマジ女のてっぺんへと押し上げるために乃木坂をやるのだと、イタノは言う しかし、レナにとっては、シマザキのことなどどうでもよかった 名古屋からスカウトされてマジ女に入り、適当な高校生活を過ごしてきた ヤンキーのエリート校の生徒であるのにもかかわらず、たいして場数も踏んでいない マジ女の生徒はセンター争いにうつつをぬかし、乃木坂をはじめとするライバル校たちの動向に無頓着だった そして、気が付いたときには、乃木坂の方が強いという噂が立つようになっていたのだ レナは、このまま静かに卒業するつもりだった 別に、マジ女にたいして思い入れもなかったからだ しかし“優子”が現れてから、心の奥のモヤモヤが増大し、鮮明になってきたのだ 汚い手を使って勝ってしまったと泣くトモナガミオに、マジ女の誇りを託したいと考えた イタノとふたりで乗り込んだところで、ぼこぼこにさ
れるのが関の山 そんなことは、イタノだってわかっているに違いない しかし、先輩として残してやれるのは、母校の誇り、そして自分たちの生きざま ミオ、負けるのは決して恥ずかしいことではない 大切なのは、悔いを残さないことなんだ…
シマザキの右ストレートが、ムカイダマナツのこめかみをとらえた しかし、疲れ果てているためか、ムカイダを沈めるほどの威力はない
ジュリナは、脅威を感じている 自分の知るムカイダは、これほど強くはなかった 栄の四天王のひとりとなったと聞いてはいたが、自分が勝てるかどうかわからないシマザキにたいして、一歩も譲らず戦っている 要するに、自分もムカイダに勝てるかどうかはわからないってことではないか…
ムカイダも拳を奮うが、シマザキが倒れることはなかった 両者の顔は無惨に変形していたが、戦いに悲壮感はない むしろ楽しんでいるかのように微笑みを浮かべ、最後の力を振り絞っている 死闘に終止符を打ったのは、シマザキのクロスカウンターだった スローモーションのように崩れ落ちるムカイダ そして、シマザキも大の字に寝そべった ふたりに近づく者は誰もいない いや、誰も動くことができなかったのだ ムカイダの強さもさることながら、ベールを脱いだシマザキに優子でさへ鳥肌がたったのだった
ムカイダがシマザキに右手を差し出す 勝ったシマザキの方が、立ち上がることができない
「実は、わたし、栄をやめるの 祖母が体を悪くしたっていうのもあるんだけど、介護の勉強をしようと思って だから、どうしてもシマザキさんと戦いたかった」
そう言うと、ムカイダはジュリナを指差した
「ジュリナ、わたしのぶんまで頑張れよ シマザキさんと力を合わせて、マジ女を日本一にしてくれ 栄はわたしの誇りだ ジュリナ、てめえは栄に背中を向けてマジ女に行ったんだろ なら、マジになれよ 今のてめえじゃ、シマザキさんには勝てない」
ジュリナの膝がガクガク震えている さっき感じた脅威は、ムカイダの強さにではなく、マジにだったのだ とかくひとはマジな人間を馬鹿にしたがる しかし、それはマジな人間の恐ろしさに気付かないふりをしたいがための強がりに過ぎない ジュリナは、必死に戦うムカイダに、自分にはないマジをみた 下に見ていたムカイダが、シマザキと死闘を繰り広げている なのに、自分はどうだ マジ女のてっぺんを目指すと言いながら、結局はシマザキとたいまんさへはっていない 挙げ句の果てに、ムカイダによってシマザキは覚醒し、その実力を見せ付けたのだった
シノダがジュリナの前に立つ
「ムカイダ、よくやった ただし、今の発言は聞き捨てならねぇ ジュリナはマジだぜ 今からこいつのマジを見てもらう キザキ、ジュリナの相手をしてやってくれ 今日のメインイベントだ」
うなだれるジュリナの肩を抱き、前に押し出した
「いいダチを持ってるな しかし、惜しいぜ ムカイダみたいな野郎が、栄をやめちゃうなんてよう さあ、思いっきりやってこい キザキのマジに答えろよ」
キザキユリアが指の関節を鳴らしている
「お久しぶりです、ジュリナさん」
真ん丸な顔に、大きな瞳をらんらんと輝かせている
ジュリナは言葉を発することができなかった 勝てる気がしない ユリアはムカイダよりも確実に強い 運動能力が半端ないし、蹴りの威力は自分より上だ ジュリナの体が大きく振るえている そして、ユリアの傍らにはスダアカリがついていた ジュリナは、何を考えているのかわからないこの先輩が苦手だった スダの運動能力は、ユリアのそれを上回る ナカニシユカやタカヤナギアカネも、スダには一目おいていた そのスダが、ユリアに何かを耳打ちしている 怖い… 足が動かない… もし負けたら、わたしは誰からも相手されなくなるに違いない…



