AKB48“モウソウ馬鹿” -6ページ目

AKB48“モウソウ馬鹿”

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ワタナベミユキは、ワタナベマユを見舞った
「なんで乃木坂に行ったん? 優子さんに行くなって言われてたやん」

マユは遠い目をした
「決着をつけたいと思ったから」

ミユキは、マユが何かを隠してると確信した
「あんた、誰かをかばってるんとちがう?」

マユはミユキをみない
「自分で決めたことだから…」

「そやなあ… あんたの気持ちはわかった もう何も聞かへん」
目を逸らすマユの綺麗な黒髪を撫でて、ミユキは席をたった








ミユキは栄のキザキユリアに連絡をとった 乃木坂にかちこみをかけるから、付き合って欲しいと ジュリナとのたいまんでのキザキの真っ直ぐな戦い方に、信頼感を抱いたからだ 大将であるヤマモトサヤカが絡んだ事案である 信用できない人間に頼むわけにはいかない 考えてみれば、おかしな話である 栄となんばはてっぺんを争うライバルなのだから しかし、キザキは何も聞かず「わかった」とだけ言った 「明日、そっちに向かう」







シライシマイから、優子とのたいまんを急かすメールがヤマモトサヤカに送られてきた ヤマモトもやる気満々であったが、ミユキが引き止めた
「そんなに慌てんでもいいやん 優子さんは、マユのことで忙しいらしい マジ女がごちゃごちゃしてるときにやるのは、ちょっと卑怯な気がする」
苦しい理由をつけたが、ミユキに卑怯と言われると、ヤマモトは二の足を踏む ミユキに認めてもらえないのなら、優子に勝っても意味がないのだ

「そやなあ マユが退院してからにしよか 美味しいおかずは最後まで食べん」
ヤマモトが微笑む

「そやで サヤカちゃん、唐揚げにいきなりレモンしぼるから レモンは食べる直前にしぼった方が美味しいんやで」
ミユキも微笑む

「細かいなぁ…」
サヤカが拗ねた顔をした









「なんで理由を聞かんのや?」
ミユキとユリアの視線が絡む ジュリナを睨みつけたときと同じで、一点の曇りもない眼差しだった

「理由なんかどうでもいい 戦うか戦わないか、それだけだ いやなら断るし、いやじゃないからここにいる ひとつだけ言えることは、わたしにしか頼めないから、わたしに頼んだってことだ 困っているひとを見殺しにするわけにはいかない」
そう言うと、ユリアは微笑んだ
「ちょっとカッコつけ過ぎだね」

ミユキは体の芯が熱くなるのを感じた 負けた…こいつはうちよりもだいぶでかい…
「お人好しやなぁ もしかしたら、わなかもしれんで」

遠い目をするユリア
「わなにはめて、てっぺんをとったところで、意味ないだろ」

ミユキにも、ユリアの視線の先にあるマジ女のてっぺんが見えた気がした









ミユキとユリアは、乃木坂の兵隊に見つからないように校舎内に潜入した 雑魚を相手にしているひまはない レナとイタノトモミがやられたのだから、自分たちもやられるに違いない ミユキは、シライシだけを倒すことを目標にしていた ミユキの目が見覚えのあるヤンキーをとらえた ミユキはそっとハシモトナナミに近づき、羽交い締めにした
「おとなしくしとったら、危害は加えん シライシさんのところに連れていって」

ハシモトもかなりの使い手なのだが、ユリアの鋭い眼光におののき、反撃することを躊躇った
「わかった ただし、ただで済むとは思うなよ」

ふたりはハシモトに連れられて、シライシら幹部のいる部屋に入った



「何だ、てめえら」
シライシが怒鳴る

「ミルキーや」
マツムラサユリがシライシの後ろに隠れた

「ああ、大阪の」
シライシが微笑んだ
「あれ、サヤカちゃんは」


「今日はうちだけや こっちは栄のキザキユリア いずれはマジ女グループのてっぺんに立つひとやから、紹介しとこ思うてな」
ミユキも微笑んだ

「はじめまして、キザキです」
ユリアがシライシを睨み付けた

「あれ、あんまり友好的な雰囲気じゃないね で、何しに来たの」
シライシの顔つきが一転して険しくなった

「あんた、何たくらんでるんや マユをふくろにして、マジ女が黙ってるはずないやろ」
ミユキは相変わらず微笑んでいる

「あれは…」


と、その時、コジママコが入ってきた
「ちわーす」


マコとミユキの視線がぶつかる
「あんたは、マジ女の…」

「あれれ、ワタナベさんじゃないっすか それにキザキさんも 先輩たちも、乃木坂さんとつるんでたんですか」
慌てる素振りひとつ見せないマコ


「そうか、読めたで あんたがマユをはめたんやろ」
ミユキの顔から微笑みが消えた



「えっ、はめたって人聞きの悪い わたしはただ、マユさんに助けてくださいって言っただけですよ でも、マユさんが弱過ぎるんで、わたしはシライシさんのパシリをやらされてるんです 弱い先輩を持つと、後輩は苦労しますね」
マコが泣く振りをした


「マユは、あんたのことをかばってるんやで 優子さんに怒られるかもしれんのに、自分独りの考えで落とし前をつけに行ったってな あんたがマユを誘きだしたんやな」
ミユキがマコの胸ぐらを掴む


シライシが立ち上がった
「今日はサヤカちゃんの顔にめんじて許してやるから、こいつを連れてさっさと帰れ」



ユリアが前に出る
「てめえ、マジ女をなめてんのか」

シライシが口を歪めて笑う
「なめてるよ、それがどうした」

「ユリア、そいつはうちにやらして」
ミユキがユリアを制した 気が付けば、数十人のヤンキーに取り囲まれている
「あんた、サヤカちゃんをたぶらかしてどうするつもりや」


「たぶらかすって、どういう意味や サヤカは、優子とやりに来たんやろ」
また大阪弁がうつるシライシ


「なんでそれを知ってるんや やっぱり、こいつがちくったんやな」
マコを指差すミユキ しかし、マコはいっこうに動じない



「ふん、ばれたらしゃーないな サヤカに、乃木坂側の人間として優子と戦ってもらいたかったんや サヤカが勝とうが負けようがどうでもいい うちとサヤカが盃交わして、関西連合と組んで、全国制覇するつもりやった くそっ、お前のせいですべてが水の泡や ほんまやったら、口を封じたいとこやけど、殺すわけにもいかんしのぅ こうなったら、痛い目にあわしたる おい、誰か、金属バット持ってきてくれ」
シライシとミユキが睨み合う



すでに、ユリアとハシモト、マツムラが小競り合いを始めていた
「ミルキー、他はうちにまかせとき」


「どいつもこいつもけったいな関西弁使いよって(笑) 馬鹿にしとんとちゃうか もう頭にきた 久しぶりに暴れたる」
ミユキの前に立ちふさがった数名のヤンキーを蹴散らし
「シライシ、かかってこいや」
と雄叫びを上げた



ワタナベミユキとキザキユリアがふたりっきりで乃木坂学園にかちこんで、ヤンキー数十名を倒したという噂は日本中を駆け巡り、マジ女に新しい風が吹き始めていることを全国に知らしめたのだった…
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称賛や祝勝を表すジェスチャーとしてのハイタッチ(ハイファイブ)が、いつ頃からこの国に根付いてきたのかは定かではない 少なくとも、高齢者たちにとっては馴染みのない行為であるに違いない しかしながら、マジ女周辺では、高齢者と子供がハイタッチする光景をよくみかける ラッパッパは、ボランティアで演奏する際に、子供たちを伴うようにしていたからだ 演奏が終わると、部員たちはハイタッチする それを真似した子供たちは、自然と高齢者ともハイタッチするようになったのだった ヤンキーのエリートが集うマジ女の生徒が、子供たちの不良化を抑えていては本末転倒なのだが、高齢者と交流することによって、マジ女周辺の子供たちは礼儀正しくなってきたという マユの父親は、ラッパッパの活動を社会実験とすべく、おおいに支援した 地域包括ケアであろうが、防災対策であろうが、かしこまってやろうとするから面倒臭くなる 普段から、高齢者と若者が交流を深めていれば、いざというときに助け合うことができるのではないだろうか マエダやミナミが懇意にさせてもらっている福祉施設に、駄菓子屋を併設することとなった 認知症の高齢者たちに働いてもらうことによって、症状の進行を抑える効果が期待されるというのだ 認知症がよくなるわけではなさそうだが、子供たちと触れ合っているとき、彼女たちは生き生きとして楽しそうである ラッパッパがかかわっている駄菓子屋で万引きをする子供などいようはずもなく、心配されたトラブルもほとんど起こっていない ただし、すべてが順風満帆というわけではなかった マエダ、ミナミ、優子、マユが中心のラッパッパに面と向かって歯向かう生徒はいなかったが、ボランティアなんて糞食らえと考えている者も少なくはない イタノトモミとシマザキハルカ、それにマツイジュリナもラッパッパに距離を置いていた また、マエダやミナミも、無理に賛同してもらうつもりもなく、淡々と自分たちの信じた道を歩いているだけである 優子はマエダたちと一緒に勉強するうちに、社会というものについて考えるようになった 要介護高齢者や認知症の患者さんたちは、お荷物のように考えられている 果たして、本当にそうなのだろうか 優子は、駄菓子屋で戯れる子供たちの姿をみて、このお婆ちゃんが不必要なのかと怒りを覚えた 確かに、介護するというのは大変なことだ しかし、それだからと言って、このお婆ちゃんが必要ないってことにはならないだろう おそらく、これがこの国の社会の有り様なんだ 無駄なものを省き、効率ばかりを重んじる しかし、このお婆ちゃんから教えてもらう知恵や伝統は、学校じゃ教えてくれない












なんばのヤマモトサヤカは、ラッパッパを責める決意を固めていた このまま優子やシノダマリコに卒業されると、自分たちがてっぺんに立ったときに、後ろ指をさされかねない やはり今のラッパッパを倒さないことには、真にてっぺんをとったとは言えないだろう
「ミユキィ、そろそろ決着つけに行こか」
これ以上の言葉は必要なかった ワタナベミユキの鋭い視線がヤマモトを貫く

今回の遠征は、ヤマモトとワタナベのふたりっきりで行くことにした なんばが戦うわけではなく、ふたりがてっぺんに立つために戦うのだから ヤマモトは、ヨコヤマユイに、たいまんを申し込む伝言を頼み、優子から快諾を得た
「優子さんが、サヤカのマジを見せてくれ、言うてるで」
ヤマモトは、体の奥深くから熱いものがこみあげてくるのを感じた マジを見せてくれ… ワタナベも優子と戦いたかったが、ヤマモトに譲るつもりだった そして、自分はワタナベマユをやる 現在のラッパッパの流れからすると、来年の部長はマユになるのだろう ちょっと物足りないかもしれないが、今のうちにマユを倒しておいた方がいいかもしれない それに、万が一ヤマモトが敗れた場合には、自分が優子をやれるのだから ワタナベミユキは、自分が負けることなど考えてはいなかった 来年は、マジ女グループを“私”が引っ張るのだ












コジママコから、ヤマモトサヤカと優子がたいまんをはるという情報を得た乃木坂学園のシライシマイは、マユに制裁を加えるべく行動を起こした コジマから助けを求められたマユは、因縁の決着をつけるためにも、独りで乃木坂にやってきた 当然の結果として、マユはふくろにされる シライシは、ラッパッパが攻めてくることを見越して、ヤマモトサヤカに助けを求めた たいまんすることは決まっているのだから、乃木坂のために戦ってもらおう そして、ヤマモトとの友情を育んで、なんば、いや関西連合と手を結ぶ
「サヤカちゃん、助けて マユが攻めてきたから、うちら戦ったんや」





「サヤカちゃん、おかしいと思わん なんでマユが乃木坂を攻めなならん ややこしなるから、乃木坂に近づくなって言われてたやん」
ミユキは、シライシが嫌いだった ヤマモトがお人好しなのは承知の上だが、あまりにも調子が良過ぎる 絶対に裏があるとふんだミユキは、マユに確認することにした
「サヤカちゃん、早まったらあかん 同じたいまんでも、意味が違う 理由のないたいまんは虚しいだけや」
このミユキの機転が、マジ女の運命を大きく変えることになるのだった…
優子は、ラッパッパの部長にマエダアツコ、副部長にタカハシミナミを指名した 担当する楽器は、マエダとミナミがギター、優子がベース、体調がよくなったカシワギユキがドラム、トランペットがレナとヨコヤマユイ、トロンボーンがミネギシミナミ、シンセサイザーがコジマハルナ、そしてタンバリンがシノダマリコ

「こりゃ吹奏楽部というよりはバンドだな(笑) レナ、ユイ、ミネギシのおかげでなんとか面目は保てたが」
優子はご機嫌だった 楽器ができない者はラッパッパに入部する資格がないと言いながら、ほとんど演奏したことがなかったのだ 実は、優子もたいした腕ではない しかし、吹奏楽部なのだから演奏しないと 優子は、ボランティアで演奏したいと考えた 何でもいい、取り敢えず生まれてきた意味を考えたい ラッパッパは最強だが、それだけでは…

ワタナベマユが入部を志願した
「ピアノならひけます」
キラキラと目を輝かすマユに、優子は思うのだった ひとは変われる この世界に不必要な人間なんていない ただ、生まれてきた意味を見つけられていないだけだと 桜が散るのを見るたびに、この花びらたちはどうして咲いたのだろうかと考えた 桜が散るのを見るたびに、自分も散るためだけに生まれてきたのだろうかと考えるようになった 下手くそな演奏に喜んでくれるお爺ちゃん、お婆ちゃん 腕前なんて関係ない、大切なのは誠意なんだ 生まれてきた意味、それは結果ではない この世に、不必要な人間も、花びらも存在しない 大切なのは、精一杯生きること

「貧乏だったけど、ピアノを習ってたんです わたしは嫌だったんですが、母が習えって言うから もし、入部させて頂けるなら、母も喜ぶと思います」
マユの腕前はかなりのものだった もし、優子と出会っていなければ、マユは二度とピアノをひくことがなかったのかもしれない 桜の花びらも、マユのピアノも、意味があるから存在する

「母ちゃんに感謝しろよ ピアノだけじゃねえ、産んでもらったことによ」
優子の言葉に涙するマユ ボロボロの服を着ていても、自分にピアノを習わせてくれた母親の笑顔を思い出していた


ピアノをひくマユの姿をみて、マユの父親は驚いた マユの母親もピアノをひくのだが、その姿が生き写しのようだったのだ マユは、人前でピアノをひくことをこばんでいた ピアノをひく自分の姿が、母親に似ていることに気付いていたのかもしれない そして、父親が、ピアノをひく母親の姿を愛していたことも… ボランティアでピアノをひくマユ そして、マユはこう語った
「女手ひとつでわたしを育ててくれたお母さん、ピアノを習わせてくれたお母さんへの感謝の思いを、人生の偉大な先輩である皆様方に代わりに聞いて頂ければ幸いです」

マユの父親は、マユのことを誇らしく感じた そして、マユを生き返らせてくれた優子とマジ女に感謝した 教育というのは、押しつけるものではない 尊敬の念があれば、自然と身につくもの マユは、優子を尊敬している 優子の誠意、“マジ”に傾倒している だから、素直になれるし、自分を発信できる マユの父親は、ヤンキーと呼ばれる小さな少女から、多くのことを学んだ気がした 自分の娘をちゃんと育てられない男が、国民の生活を治めることなどできようはずがない こうして、マユの父親と、優子たちの、マジ女発地域包括ケアプランが、本格的に立ち上がることとなる 合言葉は“GIVE ME FIVE !”