栄のスダアカリが、優子とレナを相手に暴れたという噂はなんばの渡辺派に衝撃を与えた イチカワミオリの仲介で乃木坂攻めを見合わせていた渡辺派だったが、栄に先に動かれて辛酸を舐めさせられた格好となったのだ
「くそっ、やられた まさかマジ女に乗り込むとはなあ それにしてもスダって、どんな奴なんやろ ラッパッパの部室で暴れたらしいで」
ジョウニシケイが荒れている なんばの栄に対するライバル意識は半端ないのだ
「なんでも、運動能力は東海地方でもトップクラスらしいで ブリッジの態勢で動き回れるねんて」
ヨシダアカリが険しい表情で応える
「ほんまかあ エクソシストに出てきそうやなあ まあ、ええわ うちらは乃木坂を攻めるで」
ジョウニシの言葉に、一同が活気づく
渡辺派は、ミユキと同級生のジョウニシ、ヨシダ、コンドウリナ、タニガワアイリ、一年生のヤグラフウコ、ヨギケイラ、ヤブシタシュウ、カトウユウカ、オオタユウリらが属していた ミユキが積極的に派閥をつくったわけではなく、側近のヨシダとコンドウの人脈も結集して渡辺派ができたのである ヤマモトサヤカが近づきがたいキャラクターであるのに反して、ミユキは後輩の面倒見もよく、親しみやすい したがって、一年生の多くは渡辺派であるといっても過言ではない 忙しいミユキの代わりに、ジョウニシやヨシダが一年生の指導にあたっている なんばの一年生は、ミユキに認めてもらおうと精進し、切磋琢磨しながらお互いを高めあっているのだ
「マジ女がもめてるよ」
ご機嫌な様子でコジママコがホリミオナに話かける
「ババアは頭が固いからさあ うちらみたいに、要領よく立ち回らないと」
「そうだね 栄となんばが攻めてくるって噂だから、イクちゃん(同級生のイクタエリカ)を介して、番長グループと協定も結んだし 総大将はサクライレイカってことになったよ ババアの相手は、ババアにしてもらわないとね」
ホリがケラケラと笑う
「シライシ(マイ)は、関西連合と手を結んで全国制覇するつもりだったみたいだけど、うちらだけでじゅうぶんじゃん 実は、博多のトモナガミオ、タシマメルにも声をかけてあるんだ 博多の一年もサシハラ(リノ)のババアがうざいらしくて、クーデターを企ててるみたい ほんとババアはうざいよね」
コジマも腹を抱えてゲラゲラと笑った
「ところで、ホシノ(ミナミ)って、何者だ? なんかうちらのことを嗅ぎ回ってるみたい」
「ミナミはヤンキーやめちゃったから、関係ないだろ ババアの介護しなけりゃならないとか このババアってのは、お祖母ちゃんのことだよ」
ホリが相変わらずケラケラ笑っているのに対して、コジマの顔からは笑みが消えた
「介護…」
コジマは、そう呟いたきり、黙り込んでしまった
優子はキザキユリアを見舞った
「どおして(ワタナベ)ミユキとふたりっきりでかちこんだりしたんだ トモ(イタノトモミ)と(マツイ)レナでさへやられたんだ てめえらふたりじゃ無理に決まってるだろ」
「無理かどうかは、やってみないとわからないじゃないですか マジ女のセンター候補のジュリナよりも、ワタナベの方が強いと思いますよ」
キザキが口を歪めて笑う
「そうかい… ヤマモト(サヤカ)の話じゃ、シライシから私とのたいまんを急かされてと言うんだが、てめえは何か知ってるんじゃねえか?」
優子が優しく微笑む
「私は栄の人間ですから なんばのことなんか、知るはずないじゃないですか ワタナベに聞いた方がいいんと違いますか」
キザキが遠い目をする
「そう言うだろうと思ったよ ミユキがてめえに頼んだ理由がわかった 実は、スダアカリにぼこられてよお 喧嘩に負けるの初めてだ 皆、てめえのことを心配してる 信頼されてないと勘違いしてるんじゃねえか メールしてやれよ 皆、てめえに会いに来たいのに、我慢してるんだ 元気そうな顔を見せてやりな」
キザキの頭を撫でて、優子が席を立つ
「優子さん、すみませんでした スダちゃんが優子さんに勝てないことはわかってます 許してやってください」
キザキの顔がようやくほころんだ 脳裏に、必死に戦うスダの姿が浮かぶ
「やってみないとわからないんじゃないのか スダは強かったよ いい仲間を持ってるな 奴は、卒業しても、てめえのことを守るにちげえねえ」
優子はウイングし、病室を出ていった
キザキは考えていた ヤマモトのことを思って、ライバルである栄の私に頭を下げたワタナベのことを きっと、なんばの連中も、ワタナベのことを心配してるに違いない しかし、ときには、仲間を裏切ってでも、戦わなければならないときがある キザキには、ワタナベの気持ちがわかる気がした 奴は、ヤマモトを守ったのではない なんばを守ったのだ そして、自分は栄のプライドを胸に戦った それが、ライバルってもんだろ… キザキは携帯を取出し、スダにメールした “ありがとう”


