キザキユリアが退院すると聞いて、優子は病院に駆け付けた
「何しに来られたんですか もうこれ以上、わたしたちに関わらないでください」
優子の前に、ナカニシユカたちが立ちはだかる
「話を聞いてくれ ナカニシさん、わたしたちはあと半年余りで引退だ だから、キザキたちが3年になったときのマジ女グループについて話し合いたいんだ 今回の乃木坂との一件でわかったんだが、マジ女は必ずしも磐石とは言えない グループ全体でまとまって、もっと強固な組織にする必要があると思うんだ」
必死に説得する優子を、キザキは澄んだ眼差しで見つめている
「わたしには、おっしゃられてる意味が理解できません 栄は、栄だけでまとまって戦っていきますから 乃木坂でも何でもやったりますよ」
ナカニシは聞く耳を持たない
「総長、いいですか」
キザキが前に出る
「ワタナベ(ミユキ)も同じことを言ってました そして、奴は捨て石になるつもりです マジ女を、なんばを最強にするためなら、自分はどうなってもいいと… 総長、自分は優子さんたちとこの国のてっぺんに立ってみたい マジ女に栄ありということを知らしめたいんです 総長やスダちゃんがいる今のうちに力を尽くしたい それが、自分を育ててくれた総長たち栄の先輩たちに対する恩返しになると考えてます」
キザキとナカニシが無言のまま対峙する 見つめ合うふたりの視線に一点の曇りもない
「そうか…」
ナカニシが微笑む そして、優子に鋭い視線を投げ掛けた
「ユリアをお願いします ただし、わたしたち栄は、ユリアに何かあったらすぐに兵隊を動かしますから 優子さんと言えども容赦しません」
「もちろんだ それじゃ、明日、乃木坂の幹部たちと話し合いをするんで、キザキとナカニシさんにも参加して頂きたい」
優子は、再びキザキの目を見た キラキラと輝く円らな瞳には、相変わらず一点の曇りもなかった
マジ女の二年生ヨコヤマユイが可愛がってる一年にイワタカレンがいる イワタは宮城県出身で、幼い頃に東日本大震災を経験した 様々な風評被害でいわれのない差別を受け、イワタは次第にぐれていった しかし、故郷に対する愛情を失うことはなく、体力に任せてボランティアを行っている ある日、そんなイワタから、ヨコヤマにボランティアを手伝って欲しいとの働きかけがあった ヨコヤマが入部したラッパッパが、介護施設で様々なボランティアに取り組んでいることを知り、思いついたのだった いまだ復興の道筋さへ見えない被災地にも、たくさんの介護を必要とする老人がいる この夏休みに、一緒にボランティアに参加してもらえないだろうか イワタの訴えは、ヨコヤマからマエダアツコに伝えられた マエダは、優子とワタナベマユの父親に相談を持ちかけ、取り敢えずボランティアに参加することを決めた さらに、マユの父親は、マジ女の理事長に交渉して、仙台に分校を作る約束を取り付けた プレハブの仮設校舎を建設して、優子たちラッパッパの部員を先乗り部隊として転校させる算段だそうだ この構想はマスコミにも取り上げられ、マユの父親は時のひととなる 口で綺麗事ばかり言っていても政治は動かない 賛否両論はあるのだろうが、やれることからやるしかないだろ…
被災地にボランティアに行くメンバーが、優子と乃木坂のシライシマイ、ハシモトナナミとの間で決められた これは、今後の組織構造の叩き台となるべくもので、各校の注目を集めた まず、部長はマジ女のワタナベマユ、部長代理に乃木坂のシライシマイ、副部長にマジ女のヨコヤマユイと乃木坂のハシモトナナミ、幹事にマジ女のマツイジュリナ、シマザキハルカ、栄のキザキユリア、なんばのヤマモトサヤカ、乃木坂のマツムラサユリ、ニシノナナセが選ばれた 優子は、マユを部長にすることをシライシが承諾するか悩んだのだったが、さすがにシライシも大人である 大蔵省がマユの父親であり、またマユの後ろに優子がついていることも考慮して、異論を挟まなかった 別に、部長になったところで何の得もないわけだし、ちっぽけなプライドだけの問題なのだから ところが、そのプライドに拘ったのが、なんば渡辺派のヤンキーたちである 執行部の中にワタナベミユキの名前がないことにいろめきだった ヤマモトサヤカの名前があるのにどういうことか 渡辺派の幹部であるジョウニシケイは、イチカワミオリを通してヨコヤマユイに抗議した そして、ヨコヤマからの解答に渡辺派は愕然となる シライシマイがワタナベの執行部入りを拒否したというのだ ヤマモトサヤカと交わした友好条約を一方的に反古にして、理由もなく喧嘩を売ってくるような人間と行動を共にしたくない 確かに、シライシの言い分にも一理あり、優子はワタナベを人事から外さざるおえなかった しかし、それを納得できない渡辺派のヤンキーは、ラッパッパに対して反旗を翻すことを決めた 同じく執行部から外された博多のヤンキーたちやボランティアに理解を示すことができない者たちの間にも、反ラッパッパの気運が高まりつつあった こうしてワタナベミユキは反乱軍のトップへと押し上げられていき、マジ女版西南の役が勃発することとなる 博多では、サシハラリノ、オオタアイカらマジ女に距離を置こうとする二年生を中心とする勢力と、トモナガミオ、タシマメルら一年生を中心とするグループが対立する構図となった マツイレナがトモナガを可愛がっているため、彼女たちはラッパッパに吸収されることとなる 栄は、ナカニシユカ、キザキユリアを中心にまとまっているが、キタガワリョウハ、アズマリオンら一年生の動向については定かではなかった また乃木坂にも、シライシ率いる番長グループと距離を置く二年生のヤンキーたちや、ホリミオナを頭に掲げる一年生のグループが存在する こうして、渡辺派の蜂起は、各校にくすぶっていた権力闘争の火種を燃え上がらせ、優子たちの目指す世界を切り拓くための最終戦争へと突入していくのだった



