グランドで、ラッパッパ軍と反乱軍のヤンキーたちが対峙している ワタナベミユキをセンターに、栄のタカヤナギアカネ、博多のサシハラリノが両脇を固める反乱軍
「優子さん、うちらかて、介護が大事なことはわかってます せやけど、ヤンキーにはヤンキーの生き方があるんとちゃいますか 優子さんの言うてはることはただの綺麗事や」
ワタナベミユキの声が、マイクを通して日本中に配信される
「確かにな」
受けて立つ優子
「だから、無理に手伝ってくれとは言わねえ 俺たちゃ信念に基づいて動いてるんだ」
「あんたら、マジ女を占めてるみたいにでかい顔してはるけど、これを見てください うちらの方が圧倒的に多いやないですか マジ女がどっちのもんか、はっきりさせましょ うちらが勝ったら、ラッパッパは解散してもらいますから」 ミユキの言葉に会場がどよめいた
「いいだろう さあ、始めようぜ」
優子が指を鳴らしながら前に出る それに続くマエダアツコとタカハシミナミ
「サシハラさん、タカヤナギさん、なんばが先陣きらしてもらいます ほな行くで」
ワタナベミユキを先頭に、なんばの兵隊がラッパッパ軍目指して突っ込んでいく 両軍合わせて二百以上のヤンキーが入り交じっての乱闘が始まった
タカヤナギアカネ、フルカワアイリ、ムカイダマナツが、マツイレナを取り囲む
「レナ、元気そうじゃねえか」
タカヤナギが微笑む タカヤナギ、フルカワはK第二中出身で、ムカイダはいっこ下だ レナはS中で、いっこ下がジュリナである S中のトップはクワハラミズキで、ジュリナを可愛がっていた ジュリナは神の仔、原石と呼ばれ、誰からも一目置かれていた レナは、S中に馴染めず、K2中のヤンキーとつるんでいた もちろん、タカヤナギやフルカワともよく遊んだが、レナには相棒がいた ある日、二人で遊んでいると、対立する中学のヤンキー十数人に取り囲まれた 多勢に無勢、袋叩きにあう二人 その時、S中のヤンキーが通りかかったのだが、K2中の生徒だからと見殺しにした レナの相棒は瀕死の重傷をおい、重い後遺症が残ってしまう それ以来、レナはS中の番長グループと距離を置くようになる マジ女でレナが頑張らなかったのは、S中に対する愛情がなかったからなのかもしれない 結果的に、レナに失望したマジ女は、ジュリナをスカウトすることを見送ったのだった
「チュリ、どうして反目に回った」
レナが構える
「そっちについたところで、わたしたちの得にはならねえだろ ユリア(キザキユリア)だけか欲しいんだよ、ラッパッパは ニシシ(ナカニシユカ)はユリアのお守り役だろ ならば、こっちで暴れて、栄の名前を全国に知らしめてやろうと思ってな さあ、たいまんしようぜ レナと戦えるなんて、卒業の思い出にもなる」
タカヤナギがフットワークを使って距離をつめる フルカワとムカイダは、レナについてきたトモナガミオ、タシマメルと戦い始めた
マツイジュリナの前に、ミヤワキサクラが立ちはだかる
「はじめまして 優子さんたちが卒業しちゃう前に、私たちの世代のトップを決めましょうよ」
ミヤワキの右フックをかろうじてかわすジュリナ
「さすがに博多のエースだな」
余裕を見せるジュリナ
「調子こいてられんのも今のうちだけなんだよ」
ミヤワキのローキックがジュリナをとらえた 苦い記憶がジュリナの脳裏を駆け巡る
優子が名も無きヤンキーたちを蹴散らしていく ラッパッパは、いわばマジ女グループのエリート集団だ 一年生も二年生も各校のエース級が揃っている もちろん、彼女たちをスカウトしたのは優子であり、より強い組織にするためによかれと思ってやった ところが、知らず知らずのうちに、格差社会を生み出す結果となってしまったようだ 博多のエースであるミヤワキサクラとコダマハルカは反目に回ってしまった 一年生のトモナガミオとタシマメルに気を取られたために、ミヤワキたちへの配慮を怠ってしまったからだ この戦いは、ワタナベミユキのグループが謀反を起こしたように見えるが、本当のところは、格差社会が生み出す不平不満の捌け口なのかもしれない ヤンキーとしてのエリート集団でありながら、介護やボランティアに尽力して世間の注目を浴びている ちゃんちゃら可笑しくて、へそで茶を沸かすぜと笑い飛ばしながら、釈然としないものがあるのだろう あいつらの方がヤンキーとしても上なんだぜ… 優子は、組織を作ることの難しさを痛感していた もっと細部にまで気が回らなければ、強い組織なんて作れっこねえ
コジママコは、校舎の陰で、乱闘の様子をうかがっている 盟友であるオカダナナとニシノミキが、また、トモナガとタシマ、シブヤナギサ、そしてオオワダナナが、ラッパッパの一員として戦う姿を、複雑な心境で見守っていた いったい自分は何をしていたのだろうか マジ女グループのヤンキー全員が戦っているのに、自分独りだけがここにいる 何故に… 必要とされてないからだ 自分がいなくても誰も困らないし、いなくても気にもならない イコマリナが血塗れになりながら暴れている ホリミオナがなんばの一年生たちを相手に奮闘している 同世代のヤンキーがキラキラ輝いているのに、自分はこんなところに潜んでいる ネズミ女… 駄目だ、恥ずかしくて、出ていけない 屈辱と孤独が、コジマに容赦なく襲いかかる


