AKB48“モウソウ馬鹿” -29ページ目

AKB48“モウソウ馬鹿”

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“妖気を纏った女の子”


集中治療室のベッドの上に横たわるみなみ 顔からは血の気が失せ、まるでマネキンのようだ 突然、みなみが起き上がった

「敦子、来てくれたの でも、もう遅いよ わたし、死ぬから 敦子の身代わりになって死ぬから 痛かったよ バットで殴られたんだよ 何十回も蹴られて、内臓破裂したんだよ 痛いよ 苦しいよ 人殺し 敦子の人殺し…」

「ごめんなさい、ごめんなさい、みなみ許して」

「人殺し、人殺し、敦子の人殺し…」

「ごめんなさい、ごめんなさい、みなみ許して」

目が覚めると、自宅のベッドの上に、制服を着たまま横たわっていた ヲタに責められ、逃げ出したのまでは憶えている
「みなみ…」
マエダは溢れる涙を拭うことなく、名前を呼び続けた

みなみとふたりなら誰にも負ける気はしなかった お互い複雑な生い立ちだったために、将来などどうでもよかったのだ 毎日、喧嘩に明け暮れた 関西にまで喧嘩をしに遠征したこともあった 自分を傷つけたかった 強い奴と戦いたかった 戦っているときだけ、生きていることを実感できた

そんなある日、みなみが介護の仕事がしたいといい出した 彼女は、幼い頃に両親を事故でなくし、孤児院で育てられたのだが、世話になった施設の人が倒れ、介護されるのを見て感銘を受けたのだという そして、マエダにもいっしょに介護の仕事をしようと誘った マエダは勉強などしたことなかったのだが、みなみといっしょにいたいがために勉強した みなみは、そんなマエダを見て喜んだ
「本当は勉強が好きだったんだね 敦子はわたしと違って、お父さんもお母さんもいるじゃん 親孝行してやりなよ」


そんなある日、マエダがトラブったヤンキーが仲間を大勢伴って学校にやってきた 当然、みなみが呼び出され、マエダを連れてくるように言われた ミナミは断った マエダは真面目になるんだから、落とし前は自分がつけると申し出た マエダの身代わりになってリンチされたミナミは、帰らぬひととなってしまった マエダが病院に到着したとき、みなみの意識はまだ辛うじてあった みなみはマエダの手を握りしめ「馬路須加女学園に生き別れた双子の妹がいるから真面目になるように面倒みて欲しい」と言い残して息を引き取ったのだった





ユウコは、マエダを見て驚いた 入院していた病院で働いていた若い看護師、いや看護師だと思っていた 何かにとり憑かれたように真剣な眼差しで働く少女に心奪われた
「妖気… ゲキカラは妖気と言ったな あのとき感じた異様な雰囲気は妖気だったのか…」
オタベと戦ったときのマエダには妖気は備わってなかったという やはり友達の死がこいつに妖気を与えているのか 確かに殺気は感じられないなあ 儚げな、桜の花びらのような女…
「こいつはやっかいなことになりそうだぜ」
 
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“それぞれの理由”


「レナの野郎…」
センターが電信柱に左ストレートをはなった さすがに折れることはない 去年マジジョを卒業した格闘家のチョウコクにもらったグローブを常にはめているため、拳を痛めることはないのでご心配なく

「それにしてもお前とゲキカラが幼なじみとは 名古屋っていうのは恐ろしいところだな」
ネズミが口から吐き出したチューインガムを指で弄んでいる

「まだいるぞ 矢場久根に転校していったダンスが中学の同級生 それから、一年の花音ってのも名古屋だ 名古屋のヤンキーは小学生のときから栄って繁華街で修業を積むんだ 渋谷のギャルサーみたいなのがあって、それをSKEという わたしはつるむのが苦手だったから入ってなかったし、ゲキカラは入れてもらえなかった(笑)が、ダンスや花音はSKEで暴れてたぜ 花音なんて赤ちゃんのときから悪で有名だった 刃物を持たせると、何でも切りやがる」
センターは懐かしそうに微笑んだ 笑うと、かなりチャーミングだった

「そうなんだ… で、どうしてマジジョに来たんだ 名古屋で進学すりゃいいのに」

センターの顔から笑顔が消え、遠くを見る目になった
「ネズミ、わたしのことは詮索するな ひとにはそれぞれ理由ってものがある」

「わ、わかった 気を悪くしたんなら謝る それにしても、マエダって奴には驚かされたな 狂っちまったのかと思ったぜ」

「マエダにも理由があるんだろ 奴はダチを殺したって噂だ もちろん、直接手をくだしたわけじゃねぇ 詳しいことは知らねえが、奴の身代わりになって、みなみっていうダチが死んだらしいんだ…」






シブヤは壁に掛けたピンクのスカジャンをぼんやりと眺めていた ラッパッパ四天王で揃えたものだ
「わたしはラッパッパのおまめじゃねえ」
そう呟くと、シブヤはスカジャンを床に叩きつけた
「ダンス、てめえにやるよ それ着て、ラッパッパにかちこみかけろ」

シブヤの傍らでパラパラを踊っていたダンスは、嬉しそうにスカジャンを羽織った
「似合いますかねえ ありがとうございます でも、ラッパッパにかちこみは勘弁してください だって、レナがいるじゃないですか」
土下座するダンス

「てめえ、誰に口きいてんだ 殺されてぇのか」
ダンスの頭を踏みつけるシブヤ

シブヤが何故、マジジョを辞めたのか知る者はいない 噂によると、ラッパッパ副部長だったサドとうまくいってなかったという ユウコが入院してすぐに、シブヤはマジジョから姿を消した もちろん休学届けが提出されるはずもなく、退学扱いになったのだ


「ユウコさん、お久しぶりです お体の具合はいかがですか」
スカジャンを脱いだシブヤがラッパッパに現れたのは新学期を迎えて間もなくの頃だった

「シブヤじゃねえか てめえ、マジジョを裏切ったのか」

「すいません ユウコさんがいない学校に残っても仕方なかったんで サドがでかい面するんで、居心地が悪くなっちゃいました トリゴヤの野郎もサド、サドってうるさいんで」

「それで、今日は何しに来た 喧嘩売りに来たのか」

「ユウコさんとたいまんするなんて(笑) わたしももう1年、女子高生やることにしました 今は、ヤバメの頭やらしてもらってます 一応、挨拶させてもらいにきました」

ユウコが立ち上がった
「いい度胸してんじゃねえか てめえ、生きて帰れると思ってんのか」

「生きて帰れるか帰れねえか試してみますか」
シブヤの後ろに、ダンス、山椒姉妹(らぶたん、みゃお)が現れた
「こいつらもヤバメにもらいますんで」

さすがのユウコも、病み上がりの身で4人相手はきつかったのだろうか ソファにどっしりと腰掛けなおすと、黙って目を瞑った

「失礼します」
4人はユウコに向かってお辞儀をした


シブヤとの関係がぎくしゃくしているとサドから報告は受けていた 無名のヤンキー相手に暴走するシブヤをたしなめたことがきっかけだったらしい サドは、ユウコにのみならず、マジジョの生徒全員から信頼されていた だから、ユウコのいないマジジョをまとめることができた センターやネズミでさへ、サドには逆らえなかったのだ シブヤは嫉妬していたのだろうか こんなことになるなら、たいまんはらせておけばよかった ラッパッパの中でも上下関係をはっきりさせておいた方が、組織としては統制がとれたに違いない




マエダが登校してきた すぐにチームホルモンが取り囲む

「てめえ、いったい何もんなんだ 歌舞伎シスターズばかりか、つの字連合までがてめえのことを知ってやがる 俺たちゃ、てめえのせいで、こんな目に合わされたのか ムクチはまだ入院中だ 何とか言えよ」
ヲタがマエダの胸ぐらをつかんだ

無抵抗のマエダ
「ごめん…」


扉の陰から様子を見ていたユウコ
「まさか、あれがマエダ…」
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“ゲキカラ登場”


「お前がマエダか? マジジョにセンターは2人も必要ないだろ 来いよ どっちがセンターかはっきりさせようぜ」
まったく抵抗しないムクチを蹴りあげた
「ダチがやられるのを見殺しにするんですか、マエダ先輩」
もう一度、ムクチを蹴りあげた


「た、助けてくれ、む、ムクチが殺される… グェッ…」
ムクチを庇うヲタを踏みつけるセンター


「マエダ先輩、またお友達が死ぬことになりますよ センターの蹴りは、普通じゃないっすから」
フードの少女が、チューインガムを膨らませた




“痛いよ 助けて、敦子 痛いよ”
マエダの体が小刻みに震えている
“痛いよ、助けて…”



「マエダ先輩、どうしたんですか 顔色悪いですよ」センターがヲタの胸ぐらを掴み、殴ろうとする


マエダが立ち上がった


と、その時
「怒ってる? 友達やられて怒ってる? あははははあはははは…」



鋭い眼光を放つロック歌手のようなファッションの女の子がマエダの前に立ちはだかった
「ジュリナはわたしがやる」


「邪魔するな、レナ」
センターがロック歌手に殴りかかった



“痛いよ、助けて、痛いよ、助けて…”
「みなみぃぃぃぃ」
マエダの叫び声に、全員の時間が止まった
「みなみぃぃぃみなみぃぃぃ…」



しばらく呆気にとられていたセンターだったが
「ネズミ、今日はここまでだ レナ、またな」
と、足早に立ち去っていった


「みなみぃぃぃみなみぃぃぃ」








「ゲキカラ、マエダはどうだった?」
窓際の大きなソファに深々と腰掛けた小さな女の子 彼女こそが、ラッパッパ部長大島優子である

「凄い妖気を放ってました」
直立不動で答えるゲキカラ

「妖気? お前に妖気を感じさせただと? そいつは化け物なのか(笑)」
立ち上がると、いきなり目の前の豹柄のサンドバッグにパンチをはなった 小さな体のどこにこれだけのパワーがあるというのか、凄まじい音をたててサンドバッグがふっ飛んだ



「ユウコさん、うちは何年か前にあの子と戦うたことがあります 確かに強かったけど、妖気なんか感じられやしまへんでしたが…」
オタベが何故、マジジョに転校してきたのかは誰も知らないらしい 普通の高校で勉強したところで、大して人生が変わるわけではないと嘯いている


「そうだ、確か“みなみ”って叫んでいたぞ」
ゲキカラの言葉に

「みなみはんはのうなりはったんや…」
オタベが呟いた…