集中治療室のベッドの上に横たわるみなみ 顔からは血の気が失せ、まるでマネキンのようだ 突然、みなみが起き上がった
「敦子、来てくれたの でも、もう遅いよ わたし、死ぬから 敦子の身代わりになって死ぬから 痛かったよ バットで殴られたんだよ 何十回も蹴られて、内臓破裂したんだよ 痛いよ 苦しいよ 人殺し 敦子の人殺し…」
「ごめんなさい、ごめんなさい、みなみ許して」
「人殺し、人殺し、敦子の人殺し…」
「ごめんなさい、ごめんなさい、みなみ許して」
目が覚めると、自宅のベッドの上に、制服を着たまま横たわっていた ヲタに責められ、逃げ出したのまでは憶えている
「みなみ…」
マエダは溢れる涙を拭うことなく、名前を呼び続けた
みなみとふたりなら誰にも負ける気はしなかった お互い複雑な生い立ちだったために、将来などどうでもよかったのだ 毎日、喧嘩に明け暮れた 関西にまで喧嘩をしに遠征したこともあった 自分を傷つけたかった 強い奴と戦いたかった 戦っているときだけ、生きていることを実感できた
そんなある日、みなみが介護の仕事がしたいといい出した 彼女は、幼い頃に両親を事故でなくし、孤児院で育てられたのだが、世話になった施設の人が倒れ、介護されるのを見て感銘を受けたのだという そして、マエダにもいっしょに介護の仕事をしようと誘った マエダは勉強などしたことなかったのだが、みなみといっしょにいたいがために勉強した みなみは、そんなマエダを見て喜んだ
「本当は勉強が好きだったんだね 敦子はわたしと違って、お父さんもお母さんもいるじゃん 親孝行してやりなよ」
そんなある日、マエダがトラブったヤンキーが仲間を大勢伴って学校にやってきた 当然、みなみが呼び出され、マエダを連れてくるように言われた ミナミは断った マエダは真面目になるんだから、落とし前は自分がつけると申し出た マエダの身代わりになってリンチされたミナミは、帰らぬひととなってしまった マエダが病院に到着したとき、みなみの意識はまだ辛うじてあった みなみはマエダの手を握りしめ「馬路須加女学園に生き別れた双子の妹がいるから真面目になるように面倒みて欲しい」と言い残して息を引き取ったのだった
ユウコは、マエダを見て驚いた 入院していた病院で働いていた若い看護師、いや看護師だと思っていた 何かにとり憑かれたように真剣な眼差しで働く少女に心奪われた
「妖気… ゲキカラは妖気と言ったな あのとき感じた異様な雰囲気は妖気だったのか…」
オタベと戦ったときのマエダには妖気は備わってなかったという やはり友達の死がこいつに妖気を与えているのか 確かに殺気は感じられないなあ 儚げな、桜の花びらのような女…
「こいつはやっかいなことになりそうだぜ」



