AKB48“モウソウ馬鹿” -26ページ目

AKB48“モウソウ馬鹿”

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 “復讐”


姉がマエダの犠牲になって死んだと聞かされたとき、ミナミは何の感情も抱かなかった マエダと行動をともにするということは、それだけで多くの危険を伴うということを知っていたから もしかしたら、自分も死んでいたかもしれない そう思うと、姉は自分の身代わりになって死んだのかもしれないというような心持ちにさへなった そんなミナミが、マエダに対して怒りを覚えたのは、姉をリンチした奴らを野放しにしていると知ったからである 名古屋に拠点を置くSKEというグループの奴らが犯人らしいのだが、姉のそれまでの素行から判断して不起訴処分となったのだった 遺品の日記にはマエダとの楽しい出来事がたくさん記述されていた かなり仲が良かったみたいである それなのにマエダは、姉の復讐をするそぶりさへ見せない くそっ、腰抜け野郎… ミナミは誰も信じることができなくなってしまった マエダほどのヤンキーでも、己の身が可愛いのだろうか もしかしたら、自分を陥れ
たのもマエダかもしれない だから、急にチームAから姿を消したのではないだろうか…


「遠いところを申し訳ないです マジジョに勝つには、紗智穂昂さんの力が是非とも必要なんです チュリさんはご存知かどうか知りませんが、名古屋で暴れていたマエダアツコがマジジョにいるみたいなんですよ」
ミナミは苦々しい表情でチュリらに訴えた

「マジだがや…」
驚き過ぎて名古屋弁が飛び出してしまったチュリ
「マ、マエダならよく知ってます わたしたちがSKEにいた頃、何度も戦いました」

「めちゃくちゃ強いんです 実は、私とマエダはジュニアの頃、同じチームにいましたから、奴がいかに凶暴かもよく知ってます だからこそ、勇猛なSKE出身のチュリさんたちにお力をお借りしたいと またマジジョには、名古屋出身のゲキカラとセンターもいます こいつらの退治も是非皆さんにお願いしたいと考えてます 名古屋のゴミは名古屋市民の手で掃除願いたい(笑)」

高笑いをするミナミの顔を眺めながら、あの“みなみ”を思い出すチュリ 本当によく似てるだがや… みなみが死んだと聞いたとき、チュリは震えが止まらなかった OBがやったこととはいえ、マエダが黙ってはいまい SKEに復讐にやってくるに違いないと考えたからだ 下手したら、殺されるかもしれない… マエダがチンピラ数人を半殺しにしたと聞いて、不眠症になった 金属バットを抱いて寝た夜もあった だから、マエダが逮捕されたことを知って、お母ちゃんに赤飯を炊いてもらった 喜び過ぎて嘔吐したくらいだから、いかに恐れていたか想像に難くない






「具合はどうだ」
学ラン、ゲキカラ、おたべが見舞いにやってきた

「別にどおってことねえや 尺さんは不死身だぜ」
意識が回復したところなので面会謝絶ではあったが、無理を言って、少しだけという約束で会わせてもらった

「頼もしいな(笑) それにしても、てめえがあんなに強かったとは知らなかったぜ」
学ランが愛しそうに尺の頬を撫でた 実はちょっと怪しいふたりなのである

「実は…」
尺が朧気な記憶をたどりながら話し始めた




「マエダが動き出したんやろか」
オタベと学ランが手をつないでいる

「いったい、あいつはマジジョに何しに来たんだろう ヤンキーの集まる学校に来て、勉強ばかりしてやがる」
何でこいつらは手なんかつないでるんだ ふたりの背中を不思議そうに眺めながらゲキカラが言った

「もう触らんといて」
オタベと学ランがじゃれている

本当にこいつが副部長でいいのだろうか…などと考えながら、ゲキカラは尺の話を思い返していた

「マエダさんはチームAのセンターだったんだ わたしからすれば雲の上のひと あんまり付き合いなかったし、それにどちらかというと寡黙なひとだったから 喧嘩はむちゃくちゃ強かったなあ だから、目の前に現れたときに思わず“助けて”みたいな チームAの頃のマエダさんなら、間髪入れず飛びかかってたと思うんだけど、あの時は躊躇してたなぁ 呆然としていた それで、何度も助けてって言ったわけ するといきなり“みなみぃぃ”って叫んで暴れ出した そりゃもう強いのなんのって ありゃ怪物だね わたしが気を失うまでに十数人は倒してたと思うよ」
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“おんな心におんなが惚れる”


追出夜叉女子高校総統たこやき(ユカ)は焦る気持ちを抑えるのに必死だった 抗争に首を突っ込むということは、仲間を危険にさらすことになる しかし、悩むたこやきの背中を押したのがさや姉だった
「行動せずに後悔するくらいやったら、行動して苦しんだ方がましとちゃいますか」
父親の転勤で東京に移り住んだユカだったが、なかなか馴染めず、中学では虐められた 死んでしまいたいと夜の街を彷徨っていると、公園でバスケットボールをしている女の子たちに遭遇した ユカは運動能力抜群で、特にバスケには自信があった
「なんだ、てめえ いっしょに遊びてえのか」
ユウコが声をかけてくれた

「いえ…」
不良っぽい集団に恐怖を感じ、泣きそうになった

「ユウコ、てめえの面がこええから、彼女、びびってるじゃねえか」
チョウコクがたこやきの手をひいた

「可愛いじゃん 俺と付き合わねえか」
ウインクする学ランにときめいたのを今でも憶えている

こうしてたこやきはチームKに入ることになった 自慢の体力にものをいわし、めきめき頭角を現すユカを、ユウコは妹のように可愛がってくれた 大阪にいるときから何故か虐められることが多かったユカは、ユウコたちに出会って初めて友情というものを知った そのユウコがいる馬路須加女学園が、矢場久根女子商に苦戦しているという 助けにいきたい…

悩むたこやきをサヤカは見てられなかった 大阪を占めるまでに強くなれたのはたこやきのリーダーシップに依るところが大きい 勉強もできない、運動もイマイチ 学校に行く意義なんてあるんだろうか… そんなサヤカに団体行動の楽しさを教えてくれたのがたこやきだった
「うちがいたチームKはなあ、何をするんでも皆いっしょなんや 独りではできんことでも、皆で力を合わせたらできる 信頼関係や、こいつらと一緒やったらなんでもできる、そう信じるんや」







「敦子、久しぶりだな」
サドとトリゴヤがマエダの教室にやってきた 憧れの先輩の来訪に、生徒たちは騒然となった

「マリコとハルナ?」
マエダはきょとんとした目をしている

「そんな不思議そうな顔をするなよ わたしたちはこないだマジジョを卒業したばかりだ ここでは、わたしはサド、ハルナはトリゴヤって呼ばれてた」

「そうなんだ あなたたちがラッパッパの… じゃあ、トモやミナミも?」

「トモはラッパッパでいっしょだった ここではシブヤって呼ばれてたが、去年やめちまった ミナミはサツにパクられたんだ で、中学でダブって、うちに来たのは来たんだが、知らねえ間に消えちまった」

「そっかぁ… 会いたいなあ」

「トモに会いたいならヤバクネに行けば会えるみたいよ マリコに聞いたんだけどぉ、マジジョを裏切ってヤバクネの頭になっちゃったんだって」
大学に進学したトリゴヤは、全身マーキュリーデュオでコーディネートし、どこから見ても普通のギャルだ

「ヤバクネ? へえ、そうなんだぁ トモは飽き性だったからね(笑)」

「笑い事じゃねえぜ、敦子 うちは今、ヤバクネに戦争をしかけられてる ユウコさんは、トモに裏切られて参っちゃってるし、このままじゃぁやられちまうかもしれねえ」
サドは看護師を目指して勉強中だ

「トモはわたしのことが嫌いだったのよ だから、マリコにも反抗的な態度ばかりとって マリコは、ユウコさんが入院している間、マジジョを仕切らなきゃならなかったんで、トモの勝手を許すことができなかったんだ それで、喧嘩になっちゃって…」
トリゴヤが泣き出した

「あははは、鬼の目に涙だね」
マエダはトリゴヤを不思議そうな顔で見ている

「敦子、てめえ変わったな チームAのときはいつも尖ってて、触るものを皆、傷つけるって感じだったが」

「そうかなあ(笑) お年寄りや障害者の方は敏感なんで、普段からなるべく穏やかな雰囲気で接するように心がけてるから」

「何で敦子が、年寄りや障害者と接するんだ」

「実は、介護士になるために勉強してる」
マエダは、サドに向かって微笑んだ その笑顔に、チームAのセンターの面影はまったく見当たらない サドは思った こいつは一度死んだな…





「センターよ、俺はもう引退しようかと思ってる どうだ、ラッパッパを仕切っちゃもらえねえか チョウコクもてめえのことを高く評価してる 学ランじゃ、マジジョ全体をまとめるのは無理だと思うんだ 奴は軽いからなあ(笑)」
ユウコは、センターを探して屋上にやってきた 案の定、センターは昼寝していた 初夏の明るい太陽と爽やかな風が心地いい

「自分は群れるのが苦手なんです だから、部長とか絶対に無理です」

「俺も昔はよお、ここに来て日向ぼっこしたもんだ ここから見る景色が好きでなぁ 何も邪魔するものがねぇ 1年のとき、サドとたいまんしてよぉ それが縁でずっといっしよ あいつとふたりでよくここに来てよ、この景色見ながらてっぺんとる話したもんだぜ 俺だって、群れるのなんて好きじゃねえ そりゃ独りの方が楽なときの方が多いだろ しかしよぉ、それじゃいつまでたっても、てっぺんは取れないんじゃないか ならば、ヤンキーやってる意味がねえだろ 信頼し合える仲間がいてよぉ、それを束ねたその下にマジジョの生徒たちがいる 俺たちはさぁ、悪さするためにヤンキーやってるわけじゃねえだろ あっ、すまんすまん、年とるとよぉ、説教臭くなっちゃっていけねえや まあ、すぐにとは言わねえ、考えといてくれ それから、ネズミのことだが…」

「あいつの悪口はやめてくださいよ ユウコさんと言えども…」

「勘違いするな 俺はネズミのことが嫌いじゃねぇ しかし、今のままじゃあ上には立てねえよ 横綱相撲って言葉があるだろ 上に立つやつってのは、馬鹿に見えるくらい真っ直ぐでねえとな ラッパッパへの階段は王道なんだぜ(笑)」

「わかりました…」

「そうか(笑)」

「あっ、ユウコさん、自分はユウコさんを尊敬してます ユウコさんを差し置いて、自分が部長なんてあり得ないです 力にはならせてもらいます それから、ネズミを可愛がってやってください あいつも、もう少し早くユウコさんに出会っていれば…」

「よっ、止せよ、照れるじゃねえか じゃあな…」 センターはユウコの背中に向かってお辞儀した 生まれて初めて頭を下げたのだった
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“無理を通せば道理引っ込む”


チームホルモンが病院送りになり、歌舞伎シスターズまでもがシブヤにやられてしまった 動かないラッパッパにマジジョの生徒たちの不満はつのり、公然と批判するものまでもが現れる始末 ユウコは、四天王のひとりだったシブヤの裏切りに悩み、憔悴しきっていた そんなユウコの姿をみて、尺は何もできない自分が歯痒くて仕方なかった

「自分が行きます」
ゲキカラが部室を飛び出そうとした

「待て」
学ランが羽交い締めにする
「放せ このままヤバクネに好き勝手やられてたまるか ラッパッパを舐めるんじゃねえ」

「てめえが独りでいってもどうなるもんでもねえ おかしいと思わねえか シブヤが加わっただけで、ヤバクネがこんなに強くなるはずねえだろ 何か裏があるにちげえねえ」


なるほど… 学ランの言うことも一理ある 確かに、シブヤがひとり加わっただけで、こんなに統制のとれた組織に生まれ変わるとは思えない やはり、優秀な指揮官が後ろに控えていると考えた方がよさそうだ ゲキカラや学ランが動いては目立ち過ぎる 自分ならヤバクネにそんなに顔が知られていないに違いない シブヤに会いにいこう 尺は矢場久根女子商業の門をくぐった 予想通り、怪しまれることもなくハブの溜り場に近づくことができた

「おい、シブヤさんはどこにおられる 報告したいことがあるんだ」
一応、ヤバメの制服を着て、おかっぱ頭のズラで変装した

「見かけねえ面だなあ 名前は?

「ミナミだ 急いでるんだ、早くシブヤさんに会わせろ」

「わかった、シブヤさんに確認してくる」

ミナミという名を聞いて、シブヤは果たして会ってくれるのだろうか 尺は、あまりにも無策な自分に腹が立ってきた

「入れ、会うそうだ」

「えっ、す、すまん」

扉を開けるとシブヤとミナミが待っていた

「ミ、ミナミさん…」

「久しぶりだな、みぃちゃん」
ミナミは尺を手招きした 尺はチームA時代、ミナミに可愛がってもらっていた

「いい度胸してるじゃねえか てめえ、独りで来たのか」
シブヤが笑っている こうしているとチームA時代に戻ったようだ

「シブヤさん、いやミナミさん、どうしてマジジョを攻撃するんですか」

「どうしてだろうな…」
ミナミは目を瞑って黙ってしまった

シブヤが尺の肩を抱いた いつものいい匂いが鼻をくすぐる
「てめえ、ラッパッパにいて楽しいか わたしは退屈だった だから暴れたんだ それをサドの野郎… なんであいつらに偉そうに言われなきゃならねえんだ 馬鹿にしやがって」

「それならサドさんとけりつけたらいいじゃないですか」

「サドとトリゴヤを相手にして勝てるのかよ おまけにあいつらはセンターを可愛がっている 奴らは学校中の人気者 わたしはどちらかって言うと嫌われ者 喧嘩しても、わたしが悪者になるだけだろ」
シブヤが椅子を蹴飛ばした 驚いた親衛隊員が飛び込んできた

ミナミがソファーから立ち上がった
「何でもない 下がってろ なあ、みぃちゃん、世の中、理屈通りに動いちゃいねえ ほんの些細な出来事が世界戦争にだって進展することがあるんだ 要は、シブヤの気持ちをつなぎ止めることができなかったマジジョがダサいんじゃねえか だからぶっ潰す 帰ったらユウコに言っとけ てめえの時代は終わったってな」


尺は泣いていた どうしてこんなことになったんだ どこでボタンを掛け違えたっていうんだ…

「おい、待てよ てめえ、マジジョのもんだったんだなあ 舐めたまねしてくれたよなあ ただで帰れると思うなよ」
ハブの面々が尺を取り囲んだ

「上等だよ ラッパッパの尺さんが相手してやらぁ」

「ほお、ラッパッパねえ じゃあ、遠慮なくやらしてもらうぜ」



わたしはこんなに強かったんだ これだけの人数を相手に喧嘩ができるんだ ここで死ぬんだと思ったら、笑いが込み上げてきた しかし笑う力さへ残っていない いくら蹴られても痛みさへ感じなくなっていた わたしはまだ生きているのだろうか、それとも… 霞む視界の中にマエダの姿を見たような気がした

「マ、マエダ先輩…」

手を差し出す尺に、ハブの連中が容赦なく襲いかかる

「マエダ先輩、うっ」



マエダは立ち尽くしていた この子には見覚えがある 確かチームAの…
“敦子、痛いよ、敦子、助けて、敦子、痛いよ”

「マエダ先輩、助け…」

“敦子、助けて、痛いよ”

「みなみ、みなみ、みなみぃぃぃ…」

尺は薄れゆく意識の中で、センターが暴れるのを見た 





尺が一命をとりとめた 救急車が到着したときには、十数名のヤンキーが意識を失って倒れていたとのことだった 警察は、尺とヤバクネの生徒達の決闘だと判断し、捜査を打ち切った マジジョの生徒は尺の強さに驚くばかりだった 自ら瀕死の重症をおいながらも、大勢を倒した尺 ファンクラブができそうなくらいに、尺人気が沸騰した それと同時に、いよいよユウコが本腰を入れるだろうと、マジジョの生徒たちは盛り上がっていた ラッパッパの部員が病院送りにされたのだから ユウコが何に躊躇っているのかは定かではないが、これで指を加えて見ているようでは、ラッパッパの部長が聞いて呆れる





シブヤが荒れている
「いったい誰にやられたんだ マジジョが兵隊集めて攻めてきたのか」

「いえ、化け物みてえに強い女子高生独りにやられました」

「なんだと、独りであんだけの人数を倒したっていうのか」

「はい、ラッパッパの奴が確かマエダ先輩って言ってました」

「マエダ…」

「敦子か… シブヤ、こりゃ面白くなってきたぜ 姉貴の仇も討てるかもしれねえなぁ」






「カツオさん、ミナミさんから応援を頼まれました 取り敢えず、ピース、マサナ、サスケ、金を連れてヤバクネにむかいます」
チュリは身震いした いよいよSKEの力を全国に知らしめることができる マジジョとヤバクネの抗争は全国のヤンキーたちの注目を浴びている そこで自分たちが活躍すれば…

カツオは鼻糞を穿りながら興味なさそうに呟いた
「チュリよ、あんまり張り切り過ぎるなよ 俺たちには関係のねえ喧嘩だ ヤバクネが一方的にマジジョを襲ってるように見えて仕方ねえ ヤバクネが卑怯なら、手を退けよ 義のない喧嘩は虚しいだけだ」

チュリはカツオの戯言になど耳を傾けるつもりはなかった マジジョにスカウトされたレナとジュリナに一泡ふかしてやりたい その執念だけがチュリを突き動かしていた “ミナミ”なんて鬱陶しい名前の奴に本気で加担する気など毛頭ない チュリは敦子とみなみにさんざん煮え湯を飲まされていた