「介護士さんって、凄いんだぜ 私より小さいおばさんがさあ、でぶっちょの患者さんをベッドから車椅子に移乗させるんだ」
1週間で退院することができたミナミは、アツコから優子を紹介された 別の世界からワープしてきたというアツコの説明に、最初は目を白黒させたミナミだったが、信じざるおえない 実際、ほとんど付き合いのなかったオオシマユウコに助けられたのだから ミナミは、優子に、介護士になる夢を話した 幼い頃に両親を亡くし、祖母に育てられたミナミであったが、その祖母が病に倒れ、介護を必要とする身になったのだそうだ ミナミは、必死になって祖母の面倒をみたが、体力にものをいわせたところでどうなるものでもなかった 途方に暮れ、生活に疲れ果てていたミナミを助けてやることができない無力感にマエダも苛まれ、その怒りを暴力で発散するようになった マジ女のセンター、マエダが荒れ狂っているとの噂は全国に広まり、腕に覚えのある猛者たちが集まってくるようになる そして、そのひとりがヨコヤマユイだった ユイは、なんばのツートップ、ヤマモトサヤカ、ワタナベミユキも手を焼く京都のヤンキーで、アツコにたいまんを申し込んできた これが、アツコにとっての最後のたいまんとなるのだが、勝ったアツコでさへ入院しなければならないほど激しいものだったという アツコは、生まれて初めて死を意識した いうことをきかない自分の体を、ミナミとミナミの祖母に重ね合わせたのだそうだ 結局、ひとは独りでは生きていけない アツコは、ユイが心配になり、見舞うことにした ユイは、アツコよりもさらに重篤な状態であったが、母親とおぼしき女性が付き添っていた マエダは詫びたが、彼女は微笑んでこう言った 「上には上がいるってことですもんねぇ」 実は、彼女も若かりし頃、名前の通ったヤンキーだったとのこと しかし、一念発起して看護士になり、女手ひとつでユイを育てたのだそうだ アツコは、厚かましいことを承知の上で、ミナミの祖母のことを相談したのだった
「アツコがユイのお母さんと出会ってなかったら、私は潰れてたかもしれない 介護って、体力だけじゃどうなるもんでもないんだ」
ミナミの目がマジになった こいつは、生まれてきた意味を見つけたに違いない
「ユイのお母さんのおかげで、お祖母ちゃんはちゃんとした介護を受けられるようになったんだよ そして、ユイもマジ女に転校してきたんだ」
アツコが微笑んだ 初めて見せる少女の顔に、優子はドキッとさせられた あっちの世界のマエダは、こんなに安らかな表情をみせたことがなかった ミナミ、ユイ、こいつには仲間がいる 優子は、少し寂しい気持ちになった もしかしたら、これが本来のマエダなのかもしれない しかし、もしミナミが死んでいたら、おそらくアツコの笑顔は失われていただろうし、今、こうして話をすることもなかった やはり、私は、ミナミを助ける、いや“もうひとりの”マエダに出会うためにこの世界にやってきたに違いない


