AKB48“モウソウ馬鹿” -10ページ目

AKB48“モウソウ馬鹿”

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優子は脂ぎったジジイを想像していたのだが、マユの父親は青年と言ってもよいほど若々しく、スマートな紳士だった

「はじめまして あなたが大島優子さんですか マユから噂は聞いております と言いましても、私はあなた方の世界についてはまったく知りません 裏社会についての知識なら少しくらいありますが、ヤンキーなんて漫画でしかみたことないですから(笑) ですから、マユから相談を受けたときは、意味がよくわかりませんでした お金を出せば、あなたはマユを助けてくださるんですよね しかし、金額がわからない 高校生のあなたが、いったいどれくらいの金額を必要とされているのか想像もつかないのです ですから、五十万をマユに渡しました しかし、これでは足りないんですよね」
父親は、決して威圧的ではなく、穏やか表情で優子を見つめている

「はい、全然足りません 私は、命をかけてお嬢さんを助けるつもりです 五十万では、命を差し出すことはできません」
優子の鋭い視線が父親を貫く

「そうですか…」
暫くの沈黙のあと、マユの父親は意を決したように話し始めた
「マユの母親は、私の妻ではありません 私はマユを認知すらしてやることができなかった 私たちは愛し合っていましたが、結局私は親の命令で、ある政治家の娘と結婚しました お恥ずかしながら、既に彼女のお腹にはマユがいたんです しかし、親に逆らうことはできなかった 生まれたときから裕福な家庭で育ってきた私には、すべてを棄ててマユの父親になることはできなかったのです 情けない男ですよね 自分のことしか考えられないみっともない男です」
マユの父親は、卑屈な微笑みを浮かべた
「堕胎して欲しいと頼みましたが、彼女はマユを産みました 独りで育てると姿を消したのですが、私は彼女たちを探しました 私は家業とともに義父の秘書もつとめ、政界にも首を突っ込むようになりました 家業は様々な利権によってさらに成長し、金も地位も名誉も、欲しいものは何でも手に入るようになりました ただ一つだけ、男としてのプライド以外のものは 言い訳がましいようですが、私は妻以外の女とは付き合いがありません 結婚当初は愛してはいませんでしたが、長年連れ添うと情もわきます しかし、何よりも、私はマユの母親を愛しているのです そして、マユのことも 私はマユたちを棄てたとき、男としてのプライドを棄てました 今の私は、妻からみれば夫ですが、男ではない だから、妻以外の女にも興味がないのです 罰が当たったのでしょうか、妻は子供を産めない体でした しかし、私はマユを引き取るつもりはありません 妻とふたりで余生を過ごすつもりです
また、マユたちも、私の世話になるつもりなんて毛頭ありません 憎まれて当然なんですが、彼女もマユも強いんですよ 私みたいな情けない男を、これっぽっちも必要とはしていません ところが、そんなマユが、初めて私に頭を下げたんです 実は、マユは、勉強も運動もそこそこできる優秀な娘でした ですから、この学校に入ると知って驚き、理由を調べさせたんです どうやら、マユは、父親がいないということが原因で虐められてたらしい マユは、幼少の頃から空手を習っており、かなりの腕前です 暴力には屈しません しかし、陰湿な虐めに嫌気がさし、ならば不良の集まるこの高校で、新しい何かを見つけたいと考えたみたいなんです 私は、マユに、毎月お小遣いを渡すようになりました 母親に苦労かけて欲しくなかったというのもありますが、戦争には金が必要ですから 貯金してもいいし、何に使ってもいいと、無理矢理渡したんです だから、マユは頭を下げたことはなかった
しかし、今度ばかりは自分独りの力ではどうにもならないと…」



優子は、目を瞑って黙って聞いていた ひとは皆、生まれながらに不平等だ マユにも、この男にもまったく同情するつもりもないし、甘ったれているとさへ思った
「あなたは、いったい私に何をおっしゃりたいのですか あなた方親子の人生については、私の知ったことじゃない マユとふたりで相談してください」


「そんなつもりじゃなかった 気を悪くされたんなら、謝ります 私はただ、マユがいい加減な気持ちじゃないってことをわかってもらいたかったんです あの子はマジなんですよ」
父親は、優子に土下座した


「マジ… マジって言葉を簡単に使って欲しくないですねぇ」
優子の顔がいっそう険しくなった
「わかりました マユがマジでてっぺん目指してるなら、そのマジをとくと拝見させて頂きます お金はいりません それから、お父さん、娘にとって、男としての自信がない父親は、魅力ないと思いますよ もう時効でしょう マユも夢を見つけたんだ あなたも男としてのプライドとやらを復活させたらいいんじゃないでしょうか」
そう言うと、優子はウインクした


「あなたはいい目をしている きっとマユは、あなたに惚れたんでしょうね 他人を道具として使うことはあっても、決して頼ることはない子なんです もし、よかったら、私の秘書兼ボディーガードになってもらえませんか」
父親は、もう一度深々と頭を下げて、優子の前から姿を消した
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なんばのさやみるがマジ女に入ったという情報は、すぐに日本中を駆け巡った いよいよてっぺん獲りの戦いが始まるのか しかし、吹奏楽部改めラッパッパの実力は半端ない シノダマリコに、覚醒したマツイレナ、それにオオシマユウコ、マエダアツコ、タカハシミナミらが名を列ねている おそらく、全国のヤンキーを集めたところで、マジ女を落とすことは不可能だろう まあ、そんな馬鹿な考えを興すものはいないだろうが、この女を除いては…

「ゆりあ、勝負は時の運 マジ女になんばの連中がいるのは、飛んで火に入る夏の虫 一網打尽にやっちゃおう」
ナカニシユカは、栄の次世代四天王、キザキユリア、キモトカノン、ムカイダマナツ、イシダアンナにはっぱをかけた その後ろには、アズマリオンとキタガワリョウハも控えている アズマとキタガワは、マジ女グループの一年生が競う大会で、ワンツーフィニッシュをはたした優等生である マジ女に、なんばの同世代であるヤグラフウコ、ヤブシタシュウ、シブヤナギサらがいると聞いて、ヤル気満々であった 四天王はマツイジュリナを倒すことしか考えていない ラッパッパを落とすことは無理かもしれないが、裏切り者のジュリナだけはのさばらせておくわけにはいかなかった もし、ジュリナが栄で頑張ってくれていたら、今頃は栄がマジ女グループの頂点に立っていたに違いないのだから







博多の番長サシハラリノ、副番オオタアイカは、コダマハルカ、ミヤワキサクラ、マツオカナツミ、タシマメル、トモナガミオを伴って、新幹線に乗り込んだ 名古屋で栄の軍隊と合流し、マジ女に攻め込む手筈になっている トモナガは、レナに会えるのが嬉しくて、そわそわしていた タシマは、常に何かを食べながら独りしゃべっている リーダー格のミヤワキは、窓の外をぼんやり眺めていた 風林火山とは彼女のためにあるような言葉であり、静かなる闘志を煮えたぎらしているのだろう








優子は、一年生の番格であるコジママコ、オカダナナ、ニシノミキ、なんばのヤグラ、ヤブシタ、シブヤを呼んだ ミネギシミナミの話によると、彼女たちは、サカエのアズマ、キタガワ、博多のタシマ、トモナガと学年のてっぺんを争うライバルだという 優子は、むこうの世界のラッパッパで、次の世代を育成しなかったことを悔いていた マエダにすべてを託したが、独りでできることは限られているのだ

「たいまんは単なる暴力じゃねえ マジとマジとのぶつかり合いだ 卑怯な手を使うことなく、魂をぶつけろ そこから生まれる友情は、てめえらの一生の宝物になるにちげえねえ」


コジマとヤブシタの目が合った 両者とも目を逸らすことなく睨み合っている

ヤブシタがコジマの胸ぐらをつかんだ
「うちは負けへんで サヤカさん、ミルキーさんの次はうちの時代や」

微笑むコジマ
「口だけじゃなけりゃいいけどね…」


ヤグラ、シブヤとオカダ、ニシノも、今にも殴り合いを始めそうなくらいにいきりたっている





こいつらを、マエダ、ミナミの意志を引き継がせるにはどうすりゃいいんだ ラッパッパ同様、この学校の吹奏楽部と後輩達との関係は希薄なのだろう いきなり、先輩に従えと言っても聞く耳は持つまい 二年のマツイジュリナは、シノダの妹分らしい また、イタノトモミはシマザキハルカを可愛がってるようだが、イタノはラッパッパに背を向けやがった こうなりゃワタナベマユを使うしかないか 金の話をしたら、なしのつぶてだ たいしたことねえ野郎なんだろうか…


しかし、この夜、マユは父親を伴って、優子のもとを訪れたのだった これによって、優子、マエダ、ミナミの夢は、俄然現実味を帯びることとなるのだった
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そして、その事故は起こった

マエダがボランティアで介護していた認知症の老婆が電車にひかれて死んだ 彼女の息子は、自分で母親の面倒をみたいと在宅介護を行っていたが、ちょっと目をはなしたすきに徘徊し、事故にあったのだ しかし、この事故はこれで終わらなかった 鉄道側は、事故による損害賠償を求めて提訴し、判決は「しかるべき介護を怠った」として、被告側に賠償を命じたのだ マエダは、この息子がいかに頑張っていたかを知っていた 介護のために会社を辞め、苦しい経済状況の中で必死に母親の介護をしていた 介護保険というが、サービスを使えば金はいる 貯金も底をつき、生活苦の中で頑張っていた彼に何の罪があるというのか マエダは荒れた この国は腐っている…


優子は、マエダの話を、目を瞑って聞いている すると、母親を背負う疲れ果てた男の姿が浮かんできた しかし、背中の老婆は幸せそうだ 息子の背中ですやすや寝息を立てている 優子の頬を一筋の涙がつたう 目を開けることはできない 人前で涙を見せることは、優子の美学に反するのだ 優子は、頭の中を怒りでいっぱいにした マエダよ、てめえの怒り、受け止めさせてもらうぜ


タカハシミナミも介護の苦しさは人一倍理解している 独りじゃ、どうすることもできない だからこそ、社会が一丸となって、助け合わなけりゃならないんだ 彼に賠償能力がならないのは周知のこと ただ、己に非のないことを証明するためだけに、奴らは裁判を起こしやがった 勝てば、悪いのは“ちゃんと介護しなかった”息子ってことになる
「 糞野郎! てめえら、介護してみろよ!ちゃんと介護するって何なんだよ!」
いきなり叫び出したミナミの方を、教室中の生徒が注目した ミナミは再び叫んだ
「てめえら、マジに生きろ 文句ある奴は前に出ろ」

優子、マエダ、ミナミを相手に喧嘩を売る者などあるはずもなく、皆は目を逸らした 教室が静まり返ったその時、ドアが開いた
「アツコ、なんばから援軍が来てくれたで」
ヨコヤマユイが、豹柄のジャケットを羽織ったヤンキーたちを引きつれて入ってきた
「これがうちの相棒、なんば女子商のヤマモトサヤカや そして、こっちがミナミでは泣く子も黙るワタナベミユキ で、こっちがヤマダナナで、なんばの三羽烏やで あとは、うちも知らんねんけど、精鋭揃いや」

なんばのヤンキーたちが、黙礼する 優子は、ヤマモトの眼光の鋭さにはっとさせられた こいつもマジや マジでてっぺん狙ってる だから、敵に塩を送るんや 自分の責任を回避するために、母親への苦悩の忠義を踏み躙った大人たちより、こいつらの方が余程清々しいぜ 人の上に立つ者は、情けを知ってなくちゃならねえ 誠実でなけりゃならねぇ