続・『聞こえる』― 30年以上経った今も歌い継がれるNコン課題曲が生まれた背景とその主人公は❓
平成3年度 高等学校の部課題曲
聞こえる
作詞:岩間芳樹、作曲:新実徳英
名課題曲「聞こえる」
現在でもコンクールや演奏会でよく歌われる歴代のNコンの課題曲といえば、「聞こえる」を挙げる人も少なくないはず。
今回はその「聞こえる」が生まれた背景と、その主人公像をどう解釈すればいいのか。
作詞の岩間芳樹さんによる解説を要約して紹介します。
▲ 平成3年度高等学校の部・府中西高校(銀賞)
POINT合唱曲「聞こえる」の意味・解釈は❓
岩間さんが手がけたNコン課題曲とそのテーマは❓
「海はなかった」(S50高)
「公害に荒れる海」を表現した。
「冬・風蓮湖」(S54高)
「ティーンエイジャーが持つ劣等感」を表現した。
「聞こえる 」(H3高)
「社会や地球全体から発せられるさまざまな情報とそれに向かい合った高校生」を表現した。
この詩の主人公像は❓
今日の情報社会
➡ 世界の出来事が刻々と入ってきて、それぞれに感想を持ったり、論じたりする。
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主人公は、テレビが情報源で、それを見ているだけの立場。
この詩に描かれた時代背景は❓
- 天安門事件で、戦車の前に立ちはだかる一人の青年。
- ルーマニアでは、民衆が権力を倒して涙している。
- 民族統一にわくベルリンの群集をバックに、第九の「歓喜の歌」が聞こえている。
- アマゾン流域の森林伐採が、地球を酸欠に向かわせている。
- アフリカでは子供が飢餓に泣いている。
- 海に流れ出した原油が鳥の翼を奪っている。
- 戦火に追われた難民達が救いの手を求めている。
時代背景の中で、主人公が置かれた立場は❓
こういった出来事が主人公に迫って、何かを訴えている。
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誰しもがそうであるように、テレビの前では何もできず、ひざを抱えているに過ぎない。
➡意味は理解できて、意見はあっても、黙って見守っているだけの立場である。
その立場に置かれた主人公はどんな状態なのか❓
- 主人公はたぶん、そんなことに関心を持っているわけにはいかない、という心理的ブレーキがかかっている(そんな暇があるなら勉強、勉強…)。
- 食卓で話題になっても、「早く勉強をしなさい」とテレビを切られるかもしれない。
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そんな状態にある自分が、馬鹿げているように見えてイライラする。
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では何ができるのか❓
➡ 何もできない、というジレンマ。
詩の最終部の意味は❓
=主人公の考えていること
- 社会や世界で起こっていることに関心を持つことは正しい。
- 自分にできることがあれば、やりたいと思うことも正しい。
- 突きつけられている問題に対して、気持ちはいつも柔軟でいたいのに、どうしても抑圧ばかりが、自分を押さえ込んでいる。
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生きること、感ずること、考えることに積極的でありたい。
と主人公は考え始めている。
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自分を抑圧するものに、不満を持っているだけではダメなんだ。
と…。
参考文献
「教育音楽」中・高版 1991年(音楽之友社)
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