第8話 ピンクモヒカン 全編
ゾクっとするエンジン音と共に、ショベルヘッドに跨ったゴリラが、やってきてしまった。
小柄だが隆起する筋肉とキズだらけで毛ダラケの原始的な顔。
ボサボサの長い髪の毛は、もみあげを通して顎髭につながる。アウストラロピテクスだ。
ゴリラに続いてラーメンマン兄弟が、ゆっくりとお揃いのZ1で海岸に入ってきた。
編み込んだ長い髪の束が背中で揺れる。
あとからあとから、なんてー厄日だ。
「タクヤぁ、カッコイイとこ見せて、お前も死ねよぉ」とゴリラが、唾だらけでまくしたてる。
お前も、も。も?
チェンチョンの事故、パーティーでの事件が脳裏に甦るが、わからなかった。
鈍い俺は、まだわからなかったんだ。
崖からドレッドと姿をあらわし復活したモヒカンが、また吠える。
「お前も、死ねよ。」ピンクモヒカンは濡れていた。
「簡単に言うんじゃねぇ!」血だらけのマツダが、
ピンクモヒカンに、フェイントを入れた後、回し蹴りを叩き込む。
「寝てろ、このハゲ」
すかさず、ロン毛をなびかせて、単車に跨ったままのラーメンマン兄弟に向けて振り向くと、
奴らの懐には刃物が光る。
止まるマツダ。
だから、こいつらは嫌なんだ。
ゾンビのモヒカン。
時代錯誤のラーメンマン。しかも兄弟。
わかりやすい悪人顔のドレッドと、ラスボスのチビ筋肉ゴリラ。
圧倒的な暴力で、田舎街を制覇するチーマーのこいつらに俺達みたいなスター性はなく、
喧嘩になると、ゾロゾロと集まってくるこいつらは、自らを娯騎武臨ゴキブリと呼んでいた。
俺同様にセンスがない。
「タクヤぁぁ、お前泣かしてからぁ、殺してやるよぉぉ」嬉しそうにニヤリと笑うあいつの顔は忘れない。
日本は、物騒な国になっちまった。
マツダのサベージは、キーがささったままだが、
普段からセルのエンジンがアホみたいにかからねぇし、遅いし。
ニゲラレネェ。
平日の昼間、道路塞いで乱闘しているのに、警察官は何をしているんだろう。
なんて思いを振り切り相棒に伝えた「こうなったら、カッコイイとこ見せちゃうか」と、
マツダに声をかけると、かけっぱなしだったティアドロップ型のサングラスをしまいながら、
「これはマズいナリね」と、コロ助になっている。
パールの時もそうだったが、コロ助状態のこいつは、本当に弱い。
動けない状態の中、ゴリラがバタフライナイフを取り出した。
