第13話 牡蠣拾い 後編
5月も終わっていないのに、三保海岸へ到着するや、タクボンとマツダは、さっさと脱いで、海に入っていった。
このいさぎよさは、見習いたい。
腰まで海に浸かった状態で、浜辺からは、10メートル位の距離かな。
タクボンは、海の中で何かやっている。
マツダは、こちらをチラチラ見ながら、パンツを上げたり下げたりしている。
内海には、観光客らしい数名と俺達三人しかいない。
5月の海は冷たく、俺には入水など、考えられなかった。
パンツのアゲサゲを繰り返すしつこいマツダを横目に、タクボンは、海で何か拾い続けているようだ。
こんなところに牡蠣がいるのか?
浜辺に座りながら、こいつらを見ていると、不思議な気分になる。
チェンチョンも、外に連れてくればよかったな。
家とテレビとパソコンさえあれば、普通に生きていける俺やチェンチョンから見たら、自由奔放なこいつらは、違う世界の住人だ。
タクボンが、両手に牡蠣を山ほど持って、浜辺にあがってきた。
「コレ、牡蠣じゃん。本当に採れるんだな。」
「ああ、いっぱい海に落ちているね。」
「カッコいいな、タクボンは、何でも出来るんだな。」
烏龍茶のペットボトルを渡すと、タクボンは、ハッキリと言った。
「俺からしたら、真面目に生活するお前や、あそこでロボットダンスしているマツダの方が凄いし、カッコいいよ。」
やっぱり、ひきこもりのチェンチョンも、連れてくればよかった。
「まだまだ採れるから、今日はみんなで牡蠣パーティーをしよう!」
「…いいけどさ、チェンチョンも誘っていいかな?」
「もちろんさ。」
腰までの海にいる偽江口洋介は、こちらから見えるように、下手くそで単調なロボットダンスを踊り続けている。
「タクボン、あいつは、牡蠣を拾ってるの?」
「いや、拾う気は、ないと思うな」
タクボンは、貝殻を一つ拾うと、マツダに向けて、ビューっと投げつけた。
貝殻に命中したマツダは、「いてぇ」と叫んで海に倒れた途端に直ぐ起き上がり、「牡蠣だー!」と叫んだ。
空に突き上げたその右手は、タクボンが採ってきた牡蠣よりも、明らかにでかい牡蠣だった。
久しぶりに、笑いが止まらない。
大声で笑った。
タクボンの横では、見覚えのない金髪の美少年が、腹を抱えて笑っている。
