ようやく新しいスタートラインに立てる事が決まったので、ずっと書けていなかったこの日のことを残しておきます。
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2013年7月6日(sat)
朝、全然実感がない。
今日で終わりなのに、いつもの休日と同じ感覚。
準備をして、家事を手伝ったりして、何となく出発。
しかし暑い。
来てくれる人達に申し訳ない。
居酒屋で冷たいビールでも飲みたいだろうに。
電車の中で、セットリストを確認する。
生声・生ギターで2曲、生声で朗読1つ、そしてマイクとスピーカーを使って5曲。
だけど、生で本当にいけるのか、マイクとスピーカーはあの雰囲気に違和感がないか。
全然分からない。
会場で決める事にする。
何より、どんな気持ちでライブを始める事になるのか、それが全く分からない。
さっぱり分からない。
明大前に予定より30分早く着き、コンビニを探して徘徊。
暑さにやられる。
何とか水を買って会場に向かったら、すぐ目の前にコンビニがあったので、今日はどうもダメな予感。
(的中しなかったけどね)
到着したらバカでかい音楽が中から聞こえるので、何かやってるのかと思い入口で待機。
何だか凄い曲だな。
萎縮してしまうよ。
と思ったらリハーサルをやっていたようで、早川さんに声をかけられて中へ。
早川さんは、会場であるキッドアイラックアートホールを切り盛りしている人で、さらに、かなちゃんの旦那さんでもある。
まだじっくりお話した事はないが、かなちゃんが選ぶ人だ。
どう考えても熱い人に決まってる。
そして、先程の曲は、かなちゃんが本番で使う曲との事。
あんな曲使うのか。
いや、あんなバカでかい音出すのか。
ますますビビる。
かなちゃんが少し遅れていたので、
先につなぎ用の音を流してもらう。
今日の午前中、部屋で録音したものだ。
曲というよりは、ひたすらループし続ける効果音のようなもの。
以前作ったものだが、今日しっくり来る気がして持ってきた。
しっくり来なかったらどうしよう。
早川さんに何度も音量を調整してもらい、ひとまず決まった。
しかし、到着したかなちゃんが挨拶もそこそこに
「早川さん!曲変えてもいい?今日降りてきちゃった!」
との一言。
これがかなちゃんなのだ。
持ってきた曲と上手くつながってくれるようポーカーフェイスで祈っていたところ、
結果的に曲は変えない事になり、ほっとしたような少し残念なような。
かなちゃんがリハーサルを始める。
ステージをぐるぐる歩き続ける。
ステージの広さを体に覚えこませているんだろう、と勝手に解釈。
自分が主催するイベントなら平気で茶々を入れるのだが、これはかなちゃんのイベント。
ただただ、空気を読んでおとなしくしている。
それほど時間をかけずに、かなちゃんのリハーサルは終了。
これで本番って、やっぱりこの子の度胸半端じゃない。
続いて、壁や床に紙を貼る。
かなちゃんがペイントするための紙だ。
触らせてもらうと、コピー用紙の2倍くらいの厚み。
これだけの量を毎回用意するのは、大変だろう。
俺は毎回500円の乾電池を買うくらいだが、同じくらいの金額だろうか。
感覚的に、(もしかしたら彼女の中の理論に基づいて)貼る位置を決めていく。
改めて、こういうものは正解のないものなんだと実感。
本人が「これだ!」と思えば、それでいいのだ。
むしろ、そうでなきゃ意味がない。
ド素人が手伝うなんて失礼な話だ、とギターをつま弾いていたところ、早川さんに
「マスキーさん、暇だったら手伝って」
と言われ、やっぱりそうだよなと思い手伝う。いや、手伝わせて頂く。
俺の貼り方ひとつでトラブルが起きたら大変。
いちいちかなちゃんに確認しつつ、ガムテープを貼っていく。
かなちゃんと、そして早川さんのこだわりにより、紙はあの独特な形に貼られた。
そして、次は照明のセッティング。
ライブハウスでは見た事がなかったが、なんとここでは照明を公演毎に付け替えるとの事。
スパイダーマンのように早川さん、そしてスタッフのおかぴーさんが天井近くを動き回り、照明がセッティングされていく。
邪魔になってはいけないと、楽屋で待機。
かなちゃんと、カメラマンのお二人と談笑。
お二人のカメラトークに感心。
こだわってる人って、面白い。
かなちゃんとは、本題に触れることなく公演とそんなに関係ない話をした。
彼女のイベントなんだし、彼女が本題に触れるなら俺も触れるし、そこは彼女に任せていた。
本題に関係ある話と言えば、
「ここでやれるの、贅沢だな」
と俺が言い、
「うん」
とかなちゃんが言った事くらい。
でも、俺にとっては贅沢でも、かなちゃんはこういう所でやって当たり前の存在かもしれない。
失礼な事を言ってしまった。
照明のセッティングが終わり、リハーサル。
生音でやってみるが、最後尾まで音が届いているのか、自分では全く分からない。
客席で聞いてもらって大丈夫そうなので、やる事にする。
ただ、空調の音が気になる。
止めると暑さでお客さんが大変な事になるので、これだけは止められない。
Simple Voiceでもそうだった。
本当に静かな演奏や演技の時、空調の音はどうすべきなんだろうね。
今思うと、一度でいいから止めてやってみたかった。
朗読は、とりあえず立って普通に読み、何か違うなとは思いつつ、先に進む。
(答えは本番で分かった)
マイク・スピーカーを使った演奏は、これまた客席にどう聞こえてるのか分からないが、今までだってそうだったし、早川さんを全面的に信頼してお任せする。
ステージ側は、気持ち良い音が鳴っていた。
そして、開場直前。
一部、紙の貼り直しをしていた所で、事件は起きた。
かなちゃんが、脚立から落下したのだ。
幸いにも、足の裏でしっかり着地したので大怪我はしなかったが、かなりの衝撃だった様子。
彼女は大丈夫と言うが、本人でないので痛みの程度が全く分からず、ただただ心配。
数分経って腫れてきたようで、早川さんと二人で色々話していたが、彼女がやるならやる、辞めるなら辞めるでどちらになっても構わないと思いながら楽屋で待つ。
楽屋にかなちゃんが戻ってきた。
「怪我はなかった事にしよう」
と言った。それで、すっきりした。
なぜか、二人で瞑想。
しばらくして、本番前の演者が楽屋で集中してるのに俺は何をやってるんだと気付き、出ることにする。
人のイベントにずっと出てないと、こういう事をやってしまうのね。
握手をして、俺は指定の位置へ。
客席の上のスペースでステージを見下ろす。
そして、かなちゃんがステージに入ってきた。
壁に向かって走り、壁に強く手をついた。
それを何度も繰り返した。
今日はいつになく、動きが激しい。
そして直線的だ。
不格好なほどに。
ペイントは、ひたすら黒を使う。
何度絵の具をつけに行っても、黒。
そして、ここでも直線。
少し、荒い。
動きも大きい。
ふと思い出す。
See the Seaのライブで、黒が物凄くあったかい色に見えた時の事を。
それまで、黒は特別思い入れのある色ではなかったし、どちらかと言うと良いイメージは持っていなかった。
しかし、その日はあったかい色に見えたのだ。
それ以降、同じ感覚を味わった事はないので、あの時は余程感受性が開いていたんだろう。
かなちゃんは、もしかしてあの事を覚えていて黒を使っているのだろうか。
でも、彼女は彼女で、自分の表現をしなくてはいけない。
俺の事は意識しているかもしれないけど、どこまでそれが表現に出ているかは、分からなかった。
そう思えばそうだし、思わなければ違うし、そんな感じ。
そして、今まで何度、彼女に背中を押されてきたかを思い出していた。
言葉ではなく、彼女のパフォーマンスを見て、「俺にしか出来ない事をやろう」と何度思わされた事か。
そういう、いかにも泣いてしまいそうな状況に陥りながら、なぜか涙は出なかった。
ワクワクしていた。
彼女と一緒にやってみたいと、心の奥深くで思っていた事を、この時知る。
大音量の音楽とともに、彼女のパフォーマンスは終わった。
パフォーマンスを終えて、彼女は俺がいる場所へ来た。
しばらく、二人でステージを見ていた。
早川さんが創り上げる、美しいステージ。
数分、時間を忘れた。
そして、彼女の肩を叩いて、俺はステージに向かった。
ステージに、俺の居場所はなかった。
明らかに自分ではない人が作った空間。
普段なら、見回して「へぇ~」とか言ってていいのだが、今日はその立場ではない。
全体を見回し、これはまいったと思った。
チューニングをし、水を飲み、そして、なぜか俺はタオルで顔を覆った。
お客さんの何人かには、追い詰められてやった仕草に見えたようだが、実はその通りである。
ただ、それだけでは無い。
「今日、全部出そう」
その気持ちを固めるためだった。
こういう事は普通、楽屋でやるんだろうけど、ステージに上がってみなきゃ何も分からないんだから、ステージでやる方がむしろ普通だ。
(開き直ってる訳ではない)
気持ちが固まったところで、緊張は良いものに変わった。
大丈夫。いける。
1.働いて 考えて
2.私が髪を切ってあげる
こうやって生音でずっとやってれば、もっともっといい歌が歌えてたかもな、と思った。
マイクを使うよりもはるかに神経を使う。
自分の本当の声を聴きながら、大切に、丁寧に、歌った。
会場の空気は、少し変わったが、まだ様子を見ている人がほとんどだった。
3.筑波山(朗読)
今思うと、これをやらなかったら今回のライブは失敗に終わっていたと思う。
最前列の方々が座布団に座っていたからか、少しでもお客さんの目線に近づきたかったからか、
思いつきで床に座ってやる事にした。
途中、「不思議な場所」に着く直前、やってしまったと思った。
不思議な場所での事を読む時、SimpleVoiceでは音を変えてもらっていたんだった。
早川さんにそれを伝えるのを忘れたため、これはどうしたものかと読みながら考えた。
そして、後ろに寝っ転がることを思いついた。
正解だった。
「草の上に寝転んで 僕らはしばらくそこにいた」
これで、かなちゃんが作った空間と、繋がったと思った。
点かもしれない。細い線かもしれない。だけど、繋がった。
寝転んで、かなちゃんが描いたものに全身で触れて、ようやく溶け込んだ。
そして、ここから電気を使った。
マイクとアンプ。
全開だ。
4.HAPPY END
集中力は、地道な練習に勝る。
そう思った。
練習しなくていいという意味ではなく、どれだけ地道な練習をしても、本番の集中力が伴わなければもったいない。
最後だと言う気持ちが、極限の集中力をくれた。
演奏が進むスピードが、速すぎず、遅すぎず、理想的だった。
自分のスピードだった。
何度となく、危うい精神状態で歌ってきたこの曲も、ようやく落ち着いて歌えた。
「こうはならないからね」と皮肉たっぷりに歌えた。
5.人はみんな宝石
2週間前くらいから、BEN HARPERをずっと聞いていた。
(うたさん、ありがとうございます!)
やっぱり俺はこの人の声が好きで、曲が好き。
By My Sideという曲を聴きながら、降りてきた言葉を歌にした。
その言葉には、今の心境や自分の背中を押そうとする気持ちが込められていた。
「人はみんな宝石 涙は光るダイヤモンド」
お客さんの心が、少しほどけた気がした。
6.カントリーソング
この曲はもう、お手の物。
失敗という言葉がこの曲にはまるでない。
真面目なセットリストだったので、この曲だけは存分に楽しんだ。
ブルースとロックンロールとカントリーと、前世の前世の前世が大昔に聞いていたであろう音楽。
楽しくないはずがない。
7.大いなる勘違い
今回のクライマックスにしようと思ってやったのだが、
何も憶えてない。
途中、かなちゃんが描いた絵に頭をつけた事だけ。それしか憶えてない。
でも、お客さんの心に残ったなら、それでいい。
8.長生きしたくなったよ
イントロを弾き始めた時に、思ったよりゆっくり弾いた事を覚えている。
決めた通りに弾くのではなく、自然と溢れてきた通りに始まったのかもしれない。
途中、誰かが手拍子を始める。
自分の頭で鳴っている手拍子とは、違うリズム。
これは困った。
でも、その手拍子に合わせてリズムを変える事にした。
これだけ我の強い人間が、最後でこういう事をしたってのは、中々に面白い。
そして、会場は揺れた。
涙で良く見えなかった訳じゃない。
確かに揺れた。
やっと、終われた。
かなちゃんが入ってきて、最後の挨拶。
やはり、かなちゃんがどう感じたのかが気になる。
お客さんもそうだろう。
俺は、「ジワジワと浸食してきた」らしい。
面白い表現だ。
彼女が作った空気を、壊すことは絶対したくなかった。
かと言って、それに包まれてやるだけでもダメだった。
混ざり合って別の形になる。
そういう事かな。
欲を言えば二人で同時にパフォーマンスをしたかったが、それはいつかのお楽しみにしよう。
SimpleVoiceでひとりでの挑戦を続けてきた訳だけど、全く違う「コラボ」という挑戦をかなちゃんのイベントでやって、それで終わるという予想もしなかった結末。
まあこれからはひとりの世界に閉じこもってる暇なんてなくなって、色んな人と関わって生きていくんだから、その第一歩だったんだろう。
最後に、かなちゃんについて。
彼女がやっている事は、誰にでも分かる事じゃないと思う。
だけど、友人が言ってた「相当度胸がないと出来ない」という言葉の通り、物凄いことをやっている。
派手さや分かりやすさや目新しさ。
そういうのに人は飛びつきやすいけど、彼女が大切にしてるのはそれではない。
もっと本質的な何か。
だから、彼女の周りにはそういう人達が集まるんだと思う。
彼女の今後の活動、いや行動に、少しでも多くの人が注目してくれたら嬉しい。
[k.a.n.a's blog]
http://blog.livedoor.jp/pieces_0f_me/はい。おしまい。
すっきりした。