希望の政策がらみで注目を集めた「企業の内部留保」。
2016年度も調査企業の内8割近くが増加したようです。
内部留保が増加しているということは、企業経営が安定して、景気が上向いているという指標のひとつ。
さて、このニュースで気になるのが、
また、「増加した」と回答した企業のうち約6割が内部留保の増加額が設備投資の増加額を上回った。さらに、内部留保の増加額が設備投資を上回った企業の間では「現預金を増やした」という企業が56・4%だった。負債圧縮(30・7%)や資産運用(4・5%)などを大きく上回った。
という部分。
現預金を増やした、ということは、企業マインドとして景気の失速を懸念しているということ。もしくは、先行きが不透明だから備えておこう、という不安の表れ、と取れるでしょう。
でも、それだけか?
今のご時世、調査対象となるような大企業ではそれほど大きな設備投資はなされないと考えます。
例えば、設備投資が大きいメーカーの場合。
今は生産を海外で行い、国内生産を縮小する傾向がありますから、必然的に工場設備への投資額は減る傾向にあるはずです。
又、IT関連で目新しい技術が開発されていないので、IT関連設備への投資も一段落しているでしょう。
必然的に、好景気であれば、設備投資増加額は内部留保の増加額を上回る結果となるはずです。
そして、好景気が続いている状況であれば、負債圧縮は既に進み、新たに無理をして負債圧縮をする必要はありません。
又、バブル景気で懲りた日本企業はそれほど大掛かりな投資運用を行っていません。
そうすると、現預金が増加するという結果になります。現預金には定期預金も含まれています。長期の定期預金等の場合、企業はリスクの少ない資産運用として資金を投入します。(日本ならではかもしれませんね。)
そういった資産運用は資産運用の増加ではなく、現預金の増加としてカウントされてしまいます。
つまり、このアンケート結果だけでは、「企業がお金の使い道がないから現預金が増えている」のか、「安全な資産運用としての定期預金等が増えている」のかがわかりません。
そこまで調べるには、現預金の増加の内訳を見る必要があります。それで初めて無駄にお金が溜まっているのかどうかが分かります。
ともすれば、「企業儲かっているじゃん。法人税あげろよ。」とか、「もっと給料にまわせ」という理屈の裏付けに使われかねないアンケート。
アンケートの内容をしっかり見ていくと、誘導するために行われたアンケートなのかどうかが分かったりします。