営業第一課・美咲のデスク

 

あゆみ:「ちょっと美咲! 大変よ、隣の営業二課の課長が『一課に計算の神様がいるって聞いたんだけど』って、さっきからこっちを覗いてるわよ。」

 

私(美咲):「(手書きの表を片付けながら)えっ、計算の神様って……ただの算数だよ、あゆみ。」

 

田中先輩:「いや、お前のあの『表(マトリックス)』、噂が広まるのが早すぎだ。ほら、営業三課の山田まで来やがった。」

 

山田(三課):「美咲さん! 頼む、この伝票の束を見てくれ! 手数料と、有価証券取引税と、4月からの消費税……もう何がなんだか。電卓の叩きすぎで指が腱鞘炎になりそうなんだ!」

 

私(美咲):「(苦笑いして)山田さん、落ち着いてください。基本は同じですよ。まず課税対象をグルーピングして……」

 

木下部長:「(誇らしげに)っはっはっは! 山田君、美咲君は我が一課の宝だぞ。タダで教えるわけにはいかんが……まあ、同じ会社の仲間だ。美咲君、彼らにもその『魔法の計算シート』を授けてやってくれないか?」

 

私(美咲):「魔法って……。わかりました。じゃあ、皆さんが明日から使えるように、もっと見やすい『清算事務効率化フォーマット』を今から手書きで作りますね。」

 

あゆみ:「フォーマット……? また美咲が聞いたことないカタカナ使ってるわ。でも、それがあれば私たちも早く帰れるようになるのね!」

 

佐藤先輩:「なあ、美咲。お前、本当はどこでそんな教育受けてきたんだ?」

 

私(美咲):「(ドキッとして)……ただのひらめきですよ。でも先輩、これからもっと複雑になるかもしれませんよ。いつか税率が5%や8%、10%になる日が来るかもしれませんし。」

 

一同:「「「10パーセント!!!」」」

 

木下部長:「はっはっは! 美咲君、それは冗談がすぎるぞ。3%でこれだけの騒ぎだ。10%なんてことになったら、日本中ひっくり返ってしまうわ!」

 

私(美咲):「(遠い目で)……そうですよね。でも、備えあれば憂いなし、です。」


美咲が白い上質紙に定規で丁寧に引いた「手書きの表計算シート」は、翌朝、コピー機が熱を持つほど大量に複製され、全社に配られることになりました。1989年の兜町で、美咲は「事務の救世主」として重宝がられる存在になっていくのでした。