ちゅんちゅん | ぴいなつの頭ん中

ぴいなつの頭ん中

殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる

ちゅんちゅんはね

籠の中で寝てるの

だからまた遊ぼうね

また起きたときに遊ぼうね


ちゅんちゅん軽く目を開いた


どうして鳴かないの

ちゅんちゅんに声をかけました

ちゅんちゅんは黙っています

黙ってこっちを見ています

フン、と鼻を鳴らしました

フンもちょっぴり出しました


フンじゃだめなんだよ

もっと大きな声で

たくさん鳴いて

世界を憂いて

思想を話して

心を打ち明けて

思ったことを言って

社会について話して

想像の世界について話して

もっとこれからどうなるんだろってみんなが期待するような話をして

面白い話をして

面白くない話をして

もっとみんなが「なるほど」と思うような

みんなを泣かせちゃうようなそんな話をして

されて辛かったことの話をして

美しい声で話をして

思ったことを叫んで

もっと大きな声でたくさん鳴いて

もっとだれにも負けない声でたくさん鳴いて


ちゅんちゅんは何も言いません

ただこっちを見下ろしています


ごめんね

ちゅんちゅんは何も言えません

今は何も言えません

わたしができることがまだあるなら

話の聞き手になることだけ

たくさんの声に耳を傾けるだけ

ちゅんちゅんはここにいるけど

今は何も言えません


ちゅんちゅんはわたしの心の中で鳴く小さな鳥

かわいくてちいさくてたまに乱暴で

でもとてもいい子

ちゅんちゅんはもう何も言いません

どうしてか何も言わなくなってしまったのです

そこにいるのに

そばには鉄柵が張り巡らされ

ちゅんちゅんの体からは自由が失われています

どうしてか何も言わなくなってしまったのです


ちゅんちゅんを籠から出して手のひらで包むと

ちゅんちゅんはやさしく指にかみつきます

ちゅんちゅんの目が潤んでいます

ちゅんちゅんは鳴きたい、いつだって鳴きたい


でもだめなのです

ちゅんちゅんは鳴き方を忘れてしまったの

どういうときに鳴いてどういうときに笑ってどういうときに騒いでどういうときに愛していいか分からなくなってしまったの

ちゅんちゅんの目が潤んでいます

やさしくてまるくて、綺麗な目

ちゅんちゅんは鳴きたい

もうちゅんちゅんを縛るものは何もないのに

ちゅんちゅんは縛られた形のまま固まって

自分がまだ縛られているかのように きつそうに手の中でいびつな形をしています


ちゅんちゅんは鳴きたい、いつだって鳴きたい