あるときそのノートのことがきゅうにものすごく嫌になって、楽しかった映画や行楽地の半券で女子高生のプリ帳みたいにみっちりと埋めた。
愚痴や呪いの文字はノリでシワシワにされたあと半券を隙間なく貼られ、息ができなくなって効力を失った。表面からも半券に隠れて見えなくなり、そのノートはデスノートから楽しい半券帳になった。
そのうち愚痴を隠す目的から半券をコレクションする目的に主旨が変わってきて(その頃にはもう愚痴のページは尽きていた)、かれこれ2冊目が終わる頃になっている。
映画の半券は、映画の内容が面白かったかどうかに関係なく幸せな思い出を帯びている。いつどんな映画を見たかの記録にもなるし、振り返って見てはにやけたりなどする。昔のアップリンク渋谷には半券がなかったから、アップリンクで映画を見たら、レシートに観た映画のタイトルを書いて貼っていた。
遊園地や動物園や博物館、美術館の半券もまた、幸せな気分を思い起こさせてくれる。同じところでも行くたびに違う絵柄の半券がまれにあったりして。可愛らしい絵のついた大きめのチケットをもらえるとうれしくなったりして。
コピー本や観光地図とかもたまに挟んだりしていて、ノートはボロボロな上パンパンに膨らんでいるのだけど、壊れないように紐解くその時間は自分を呪いから救ってくれるような気がしている。