夢を見たの。ずっと未来の夢。わたしたちは大人になってた。だけどわたしたちはみんなまだ仲良しみたいで、定期的に会って飲んだりとかしてたみたい。
つるんでた仲間の中でいちばんオシャレだったマリは、ファッションライターをやってるって言ってた。マリの記事は若い子たちに人気なんだって……
目が覚めて、ぼんやりしたまま学校へ行った。教室でマリの笑顔をみて、マリにそのことを言おうかどうか迷った。実現して欲しい夢は人に喋っちゃいけないから。でも、わたしの夢だし、マリがそれを聞いて頑張れるならって思って、話した。
マリは大喜びしていた。
普段からオシャレに気を遣っている彼女だし、自立した大人の女性に憧れるタイプだったから、やりたいことを仕事にして自立しているという未来は目標そのものであったようで。
翌日、夢の続きを見た。
未来の世界、わたしは24歳で、ハナとふたりでお茶していた。なんとなく自然な会話の流れで、マリってすごいよね~ファッションライターだっけ~、みたいな話をふったら、
『マリまたそんな嘘ついてんだ。』
きけばファッションライターをやってるというのも嘘、親のスネかじって服飾の大学を留年し続けているらしい。授業をサボり、アロマとかハーブとかそれ系の資格の勉強を始めては放り出す、他の時間はネットを見てるか寝ているかだと。服すらあんまり買いに行かなくなったと。マリは、わたしの前で見栄を張りたくてそんなことを言ったのか……夢が終わる直前、部屋でスマホゲーをしてるマリの、猫背で丸くなった後ろ姿がちらりと見えた。
目が覚めてから、マリにそのことを伝えようか悩んだ。あんな夢見たあとじゃ、マリを見る目がなんとなく変わってしまっているのを感じる……
いや、あんなのたかが夢なんだから。わたしがいま仲良くしてるマリはそんな、見栄のために嘘をつく子じゃない……と思う。
あんな夢で未来の姿を決めつけられてたまるもんか。
そうだ、実現して欲しい夢は人に話したらいけないのであれば、実現してほしくない夢は人に話したっていいんだ。
でもマリに直接、未来は見栄っ張りの堕落女性だなんて言えるわけない。そんなこと言ったら絶対悲しむか怒るかわたしのことを嫌いになるんじゃないだろうか。だれだって不幸な未来を人から押しつけられるのは嫌だよね。
そこであなたに聞いてもらいたいと思い筆をとったのです。
たくさんの人に見てもらえばもらえるほど、夢がバラバラに砕けて散らばって、マリの未来を変えられると思うんです。
わたしの見た夢を砕いてください。