オートカクテル耽美レビューその4 | ぴいなつの頭ん中

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殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる

お待たせしました。感じ入ったぜ。パート4。これでラスト。さいごに総評。



夏至祭…水銀
えっ、このひと、知ってる…って妄想がはたらいて、ぞわっ、と鳥肌がたった。この彼、わたし知ってる気がする。きっと昔、一緒になろうねと、祈りあった気がする。フランス。死なないと一緒になれなかった私たちが、頭のどこかにいた気がする。重みを感じ絶頂に至る語り手にはたしかに血が通っていると思わせるけれど、生きてるのかはわからない。美しさのきわみに溺れるとき、生きてるか死んでるかなんて関係ないって言い切れる。
午睡…水銀
放課後の図書室で仲良くしていた秀才の美少女、との、再会、こんなに美しい乗車風景があったでしょうか。電車に乗るたびに、期待してしまう。この汽車はほんとうは、どこに向かっているのだろうか。お昼寝の夢は容赦ないよね、いつだって。

秘密…水銀
花の香りの珈琲を飲みながら読みました。こんなやさしいお兄様が欲しい。ふたりで水蜜桃食べたい。ふたりのひみつは、なんだか危険な響きして、ちょっとどきどきしてしまう。花と果物は欠かさない環境は引き継がれ、美しさは引き継がれ、守られる。優しい瞳。きっとこの兄妹のご両親も、ふたりが熟させていた果実のことを知っていたかもしれません。

君ベア…eb
登場人物に関するびっくりが読み進めるうちにわかっていって、これから読む人のために私はそれを伏せておこうと思う。同時に、一回読んだだけじゃわからないことがこの短い小説の中にはたくさんあって。最後は誰の悲鳴だったんだろう。雪歩とその家族、いったい、何者。雪歩には、なにがあったの。先生には。語り手には。熊の中でねむるときに見る夢は。血だまりのなかでどんなことを思うのだろう。

ウォッカ抄…泉由良
真夜中から明け方の映像がぼんやりと浮かぶ。
夢のころしあいを消毒するウォッカ。どんなに体が傷ついても夢を見る。夢を見れる。夜は続くし眠りはない、朝は夢に出るかと問いかける、傷だらけの彼女。
涙をがまんできなくさせるスクリュードライバー、彼女が白鳥座で見たのは映画から夢か。
羽根を持つ彼女が朝を夢見る。葬送のための神酒としてのウォッカ。
平行棒をあるくヴォトカは詩を読む泉由良を想起させる。新体操のりぼんみたいなひらがなのはるもにいが織られる。二進数の海。青いひかり。ウォッカとモニタとキーボードがあればどんな夢だって見れたでしょう、朝はやっぱり誰のもとにも来ないのだ。
朝はやっぱり誰のもとにも来ないのだ。
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ここでオートカクテル耽美は終わっている。生(セイ)の美しさと死ぬ間際の美しさ。静の美しさと動の美しさ。パッと目に入ったものの美しさから始まり、だんだん深みを増す美しさ。バラバラのみんながバラバラに書いたものなのに、整合性と関係を感じるのは、みなもとはなえさんも言ってたが、みんなが耽美について真剣に考えて丁寧に編んだからなのだろう。美しさはいつも、クリスタルのように輝きを放射するけれど、輝きの根本はひとつの光源から出来ているのだ。
太陽。
朝はこないけどどこかで太陽は輝いている。だから君はとても美しいんだよ。君の目やこころが知覚するものはとても美しいんだよ。