私はパンツ | ぴいなつの頭ん中

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殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる

私はパンツ

わたし、ゆいちゃんのぱんつ。
うまれてからまだ、3か月くらい。
ゆいちゃんはとってもきれい好きで、かんごふさんなの。

まい日まい日、わたしたちはゆいちゃんのあまくてやわらかいところをふんわりつつんでるの。

ゆいちゃんはやさしくて、わたしたちがよごれないように、一日のおわりに、きれいに手あらいして、きゅってしぼってくれる。そうして一しゅうかんのおわりに、まとめて、いいにおいのせんざいでせんたくしてもらうの。

ゆいちゃんはさいきん、いつもつかれてる。おしごと、いそがしいんだって。

おふろに入る前に、おくすりをのむところをよく見るようになった。

ゆいちゃんはときどき、小さいこえで泣いてる。もうわたしが、泣くってかん字もかけるようになったくらい、ゆいちゃんは泣いてる。

もうげんかいだよって、わたしのことをあらいながら、一人でぐちいってた。せんめん所の、はいすいこうに、わたしをあらったせっけん水と、ゆいちゃんのなみだが、ながれていく。

わたしがいっぱいなやみごと聞いてあげたい。ゆいちゃんのこと、大好きだから。ゆいちゃんがなやんでるのに、だれにも言えないでむずむずしてるの、わたしがたぶん、一ばんしってるもん。

でもできない。わたしはぱんつだから。わたしがぱんつだから、ゆいちゃんは、ぱんつが色々かんがえてるっていうのしらないから、わたしにはなしかけてはくれない。

それに、ぱんつからにんげんに、はなしかけてはいけないってルールがあるの。ぱんつはぱんつのままでいないと、かんがえてることをないしょにしておかないと、あんしんしてぱんつはけないでしょ。

ゆいちゃんはある日、いつもとちがう、見たこともないよごれがついてしまったわたしを見て、さらにいっぱい泣いた。わたしのぜんしんが いたくなるくらい、ごしごしと、きつくあらった。なみだのしおのあじがついて、いたさがしみた。

わたしのいたみもひどかったけど、ゆいちゃんはもっと、いたかったんだ。ぱんつは、ぬのからうまれて、かわいいおしりを つつむだけがおしごとだけど、ゆいちゃんはにんげんだから、やらなきゃいけないことがいっぱいある。

ぱんつは、つらくなったらまどからにげてしまえばいいけど、にんげんは、まどからにげたらしんでしまう。しゃかいてき、であることを、いきているかぎり、もとめられる。おしごとをして、お金をもらって、お金をつかって、かいものをして、たべたり、あいしたりとかして、またはたらく。

ゆいちゃんのいたみは、どれほどだったか。
そうおもったら、このじぶんのいたみにも、たえられた。

けれど、ゆいちゃんをたすけたいとおもった。やさしいゆいちゃん。がんばりやさんの、ゆいちゃん。

わたしは、ぱんつのルールをやぶった。

「びょういんに、いったほうがいいよ」

ゆいちゃんはびっくりしていた。
そりゃ、そうだよね。

ゆいちゃんは、わたしの言ったとおり、びょういんにいった。女の子の、びょういん。ストレスで、よくないものが体からでてきちゃったんだって。

いっしゅうかんでなおります、って言われておくすりをもらって、とてもあんしんした かおをしてた。

おうちへかえって、わたしをあらうとき、小さいこえで、ゆいちゃんが「ありがとう」って言ってくれた。

わたしはゆいちゃんとずっといっしょにいられたらいいなとおもった。やぶけてだめになって、すてられる日まで、ずっと。


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