この雑事で以前に、ハムやベーコンやソーセージ等に添加された亜硝酸ナトリウム(亜硝酸NA、発色剤)が胃の中で肉や魚に含まれるアミン類に作用して発癌性のあるニトロソアミンに変化するという話をした。勿論、今でも亜硝酸NAが添加された食品は買わないが、このことから胃癌に対する意識も高くなった。

今年、私は68歳、母が胃癌で亡くなった年齢も68歳だった。そこで今年の癌検診で、胃カメラ検査(内視鏡検査)を受けることに決めた。

液体のバリウムを飲まされて様々な角度で胃のレントゲン撮影を行うバリウム検査は過去に何度も受けた経験があるが、胃カメラ検査の経験はなかった。

コレステロールや中性脂肪を抑える薬の処方箋をもらいに行く医院では、バリウム検査も胃カメラ検査もやっていないので、胃カメラ検査を実施している他の医院をネットで探して電話で連絡すると、4月下旬の時点で予約がとれたのが9/24の午前中だった。

9/24当日は朝7時半頃に起床したが、前夜は普段より早めに就寝したとはいえ5時間未満しか睡眠時間を取れなかった。水だけ飲んで9時半頃に医院に向かい、問診票を提出、同意書にもサインして、順番待ち。

事前に麻酔の有無を確認されたが、大半の人が麻酔をするという話なので、承諾。

私の順番になると移動し、採血、喉への麻酔液の吹付、専用の器具をくわえて左を下にして台の上に横になり、全身麻酔が始まった。

気がつくと既に元の場所に移動していた。全身麻酔は通常の睡眠とは異なる方法で眠るようで睡眠不足だから起きにくいということはなかった。ただ頭がふらつくのでじっとしていた。勿論、全身麻酔も初体験。

その後、検査直後の説明を受けた。以前にバリウム検査で見つかったポリープが再確認され、びらん部分と褪色部分も見つかったのでそれぞれ生体サンプルを確保、検査にまわすらしい。検査結果は3週間後に判明するという。

3週間後の10/15午後に再び医院に行き、検査結果の説明を受けた。

サンプルを採取した2か所については悪性ではなく大事にはならなかった。ピロリ菌の抗体検査も陰性で薬が処方されることもなかった。胃粘膜の炎症(びらん部分)自体については深刻でも広範囲でもなく心配する必要がないとのこと。

生きている以上、多少のストレスは仕方ないが、68歳という自分の年齢を考えても、アルコールや香辛料等の刺激が強い食材は控えめにした方がいいだろう。なお胃痛や胸やけ等の自覚症状は特にない。

さて今回の経験から、あることを感じた。

例えば癌の手術中に運悪く死亡する場合を考えよう。全身麻酔を受けるとすぐ意識がなくなり夢さえ見ない。痛みも感じないし死亡したことすらわからない。永遠に意識が戻らないだけだ。

全身麻酔による手術中の死亡という限られた状況だけかもしれないが、案外、死は簡単であっけないものかもしれない。

これに関連してあるドラマのセリフを思い出した。海外ドラマOutlanderの一場面、18世紀、米国の独立戦争の前哨戦となった戦いで、登場人物の一人マータフが胸に銃弾を受けて死ぬ間際、ジェイミーに「ただの死だ」と告げる。

Outlanderはスコットランドから始まりフランス、カリブ海、米国と舞台を移した(シーズン7まで)、SFと歴史と医療の要素を含む大人向けの恋愛ドラマ。主役はクレアとジェイミー。主題歌はSkye Boat Song、Skyeとはスコットランドのスカイ島のこと。Sony Pictures Entertainment配給。

このドラマ上の詳細は省略するが、ただの死という言葉に込められた意味は、人は考え悩み努力するがそれは生きている間だけ、死ねばすべてが終わり解放される、死は本人にとって人生の終わりを意味するだけで、それ以上でもそれ以下でもない、と私は勝手に解釈している。

死は簡単であっけなく終わりを意味するだけ、今回、私はそう感じたのだった。


場の量子論の6回目は、"1.1調和振動子の物理"の練習問題の続きです。

第1章 場の理論事始め

1.1調和振動子の物理

練習問題

1.4 基底状態(真空)の波動関数をφ0(x)≡<x|0>と書く、これを、真空の定義(1.19)からもとめよ。

解答 (私の説明)

(1.19) a|0>=0 式に左から<x|をかける(作用させる)と<x|a|0>=0となる。この計算を具体的にやってみよう。

まず(1.5)式を持ち出すと、

(1.5) a≡√(mω/2h~)(Q + iP/mω)

上式で量子力学の定義を思い出すと、Qは波動関数の位置を求める演算子で、Pは波動関数の共役運動量を求める演算子だった。

位置xの状態ベクトル|x>に演算子Qを作用させると、位置の値xが得られて、

Q|x>=x|x>

となり、位置xの状態ベクトル|x>に演算子Pを作用、共役運動量が得られるのだが、共役運動量は再び演算子の形で量子力学では-ih~d/dxとなって、

P|x>=-ih~d/dx|x>

となる。

すると、

<x|a|0>
 =<x|√(mω/2h~)(Q + iP/mω)|0>
 =<x|√(mω/2h~)(x + i(-ih~d/dx)/mω)|0>
 =<x|√(mω/2h~)(x+h~/mωd/dx)|0>

ここで|0>は真空を表す状態ベクトルだから、|0>に位置xと共役運動量d/dxを測定する演算子を作用させると、両方ともゼロになる。つまり、

<x|√(mω/2h~)(x+h~/mωd/dx)|0>=0

で、この両辺を√(mω/2h~)で割り、(x+h~/mωd/dx)を<x|の左側に移動すると、

(x+h~/mωd/dx)<x|0>=0

となる。

この問題の記述に従って、<x|0>=φ0(x)と書き換えると

(x+h~/mωd/dx)φ0(x)=0

が得られ、これはφ0(x)に関する微分方程式になっている。

この微分方程式を解こう。まずxφ0(x)を左辺に移項して、

(h~/mω)dφ0(x)/dx=-xφ0(x)

両辺にmωdx/h~φ0(x)をかけて積分する形にすると、

∫dφ0(x)/φ0(x)=-(mω/h~)∫xdx+c

となり積分を実行すると、

logφ0(x)=-(mω/2h~)x^2+c

から、

φ0(x)=Ce^-(mω/2h~)x^2

となる。cとCはどちらも積分定数でC=e^c。

定数cは波動関数φ0(x)の規格化条件である∫|φ0(x)|^2dx=1から求まる。

∫|φ0(x)|^2dx=C^2∫e^-(mω/h~)x^2dx

ここでガウス積分の公式∫dxe^-ax^2=√(π/a) 積分範囲は∞~-∞を使うと、

C^2∫e^-(mω/h~)x^2dx=C^2√(πh~/mω)=1

これから、C=(mω/πh~)^1/4

∴φ0(x)=(mω/πh~)^1/4^e^-(mω/2h~)x^2

となった。

この本の問題1.4の解答の式を列挙すると以下となる。

(8) <x|Q=x, <x|P=-ih~d/dx<x|
(9) (x+h~/mωd/dx)φ0(x)=0
(10) φ0(x)=(mω/πh~)^1/4^e^-(mω/2h~)x^2
(11) ∫dxe^-ax^2=√(π/a)


ついでにガウス積分の公式∫dxe^-ax^2=√(π/a)を導出しておく。

∫∫e^-a(x^2+y^2)dxdyを計算する。

x=rcosθ,y=rsinθと変数変換すると、∞<=x,y<=-∞の積分範囲が、
0<=r<=∞,0<=θ<=2πとなる。
|∂x/∂r   ∂y/r|=|  cosθ  sinθ|=rより、dxdy=rdrdθ
|∂x/∂θ ∂y/θ| |-rsinθ rcosθ|
∫∫e^-a(x^2+y^2)dxdy
 =∫∫rdrdθe^-ar^2
 =∫dθ∫rdre^-ar^2
 =2π[-e^-ar^2/a2]^∞_0
 =π/a
∫dxe^-ax^2=√(∫∫e^-a(x^2+y^2)dxdy)だから、

∴∫dxe^-ax^2=√(π/a)


1.5 フェルミ振動子の交換関係(1.25)は、

      {Q,P}=0, {Q,Q}=h~/mω, {P,P}=mωh~

    と書けることを示せ。

解答 (私の説明)

フェルミ振動子の交換関係(1.25)式を書くと、

(1.25) {a,a^}=1, {a,a}={a^+,a^+}=0

であり、再び(1.5)式を持ち出すと、

(1.5) a≡√(mω/2h~)(Q + iP/mω)

これより、

a^2=mω/2h~(Q^2 - P^2/m^2ω^2 + i(QP + PQ)/mω)

フェルミ交換関係{a,a}=aa+aa=0よりa^2=0だから、a^2の実部と虚部がゼロとなり、

実部:Q^2 - P^2/m^2ω^2=0
虚部:(QP + PQ)/mω=0

つまり、Q^2=P^2/m^2ω^2, QP+PQ={Q,P}=0

次に(1.5)の複素共役をとると、a^+=√(mω/2h~)(Q - iP/mω)

これより、

a^+a=mω/2h~(Q^2 + P^2/m^2ω^2 + i(QP - PQ)/mω)

aa^+=mω/2h~(Q^2 + P^2/m^2ω^2 - i(QP - PQ)/mω)

フェルミ交換関係{a,a^+}=1を使うため、上の2式を使って{a,a^+}を計算すると、

{a,a^+}
=aa^+ + a^+a
=mω/2h~(Q^2 + P^2/m^2ω^2 + i(QP - PQ)/mω)
 +mω/2h~(Q^2 + P^2/m^2ω^2 - i(QP - PQ)/mω)
=mω/h~(Q^2+P^2/m^2ω^2)
=1

よりQ^2+P^2/m^2ω^2=h~/mωで、{a,a}=0から導いたQ^2=P^2/m^2ω^2とあわせて、

(12) Q^2 = P^2/m^2ω^2 = h~/2mω

となる。この式を少し変形すると、Q^2={Q,Q}/2=h~/2mω, P^2={P,P}/2=mωh~/2

以上から、フェルミ振動子の交換関係(1.25)が、

{Q,P}=0, {Q,Q}=h~/mω, {P,P}=mωh~

と書けることが示された。

この本の問題1.5の解答の式は、以下の一つです。

(12) Q^2 = P^2/m^2ω^2 = h~/2mω


さて、この本の練習問題にはもう一問あるが、巻末の練習問題の解答を見ると、その内容は複雑で、私も説明もかなり長くなりそうなので、今回は短めですが、これで終わり、もう一問の解答説明は次回にまわします。


注意: (1.19)のように番号が付いている数式と練習問題の文章は以下の書籍からの引用。

演習 場の量子論 基礎から学びたい人のために 柏太郎著 サイエンス社 新装版第3刷

それ以外の数式と説明は私が作成したものなので、ミスや間違いが含まれる可能性があります。